表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

マヨネーズ中出しギネス世界記録

たくみは、白い封筒を三度見した。


一度目は「え?」

二度目は「え???」

三度目は「……え???????」


中には、金縁の証明書。


そこにはこう書かれていた。


most super hero of japan mayonese nakadashi


「……いや何これ」


英語として怪しい。

意味も分からない。


だが――


“世界記録”の空気だけは、確かにあった。



「……確認するか」


たくみはスマホを握る。

検索。問い合わせ。番号発見。


プルルルル……


ガチャ。


“Helloォ〜〜〜〜〜!!!”


「うおっ!?」


異様にテンションの高い女性の声。


「あの、ギネスの確認で――」


“Yes yes yes!! congrachurashion!!”


「いやまだ確認してないです」


“You are number one!! mayonese nakadashi hero!!”


「いやだからその英語なんなんですか」


“I love you!!”


「早い早い早い」


“I want you… nakadashi me…”


「何言ってんだよ!?」


一瞬の沈黙。


“…OK, bye♡”


「いや待って待って待って待って」


ツー……ツー……


通話終了。



「……本物か?」


たくみは天井を見上げる。


疑念30%。

興奮70%。


結果――


「……まあ本物だろ」



その二日後。


知らない番号から着信。


「はい……?」


低く落ち着いた女性の声。


「内閣総理大臣の高市です」


「……え?」


沈黙。


「え?」


もう一度言う。


「え???」


「この度は、世界記録達成、おめでとうございます」


「え???????」


「日本の誇りです」


「いやちょっと待ってください、あの――」


「今回の記録、“マヨネーズ中出し”ということで」


「言い方!!!!」


「若者文化として大変興味深く――」


「フォーマルに言わないでください!!」


一瞬、向こうが咳払いする。


「……失礼しました」


「いえこちらこそ何が起きてるか分からなくて」


「つきましては」


声が少しだけ低くなる。


「ささやかですが、お祝いをお届けします」


「え、いや大丈夫ですそんな」


「日本のためです」


「規模がデカいんですよ」


「では」


プツッ。


「え、ちょっ――」


ツー……ツー……



「……え?」


たくみはスマホを見つめる。


現実感が、ない。


だが同時に、妙な納得感もあった。


「……総理が言うなら本物か……」



その日の夜。


ピンポーン。


玄関。


ドアを開ける。


黒服の男が三人。


無表情。


完全に無表情。


「……はい?」


無言で差し出されるアタッシュケース。


カチッ。


開く。


札束。


ぎっしり。


完全にぎっしり。


「……え?」


「おめでとうございます」


「いやあの」


「世界記録達成」


「いやあの」


「お祝いです」


「いやあの!!!!」


男は微動だにしない。


「……受領確認を」


「いや確認って何を」


「確認を」


「圧が強い」


たくみはとりあえず頷く。


「……はい」


男は満足げに一瞬だけ目を細めた。


たぶん。


気のせいかもしれない。


「では」


帰っていく黒服。


音もなく。


本当に音もなく。



「……本物だ」


たくみは確信した。


ここまで揃っていて、偽物なわけがない。


たぶん。



数日後。


たくみは鍵を受け取っていた。


ランボルギーニ アヴェンタドール


「エンジンかけますか?」


「……はい」


ブォォォォォン


「うわっ」


「すごいですよね」


「いやすごいですね」


「世界記録ですから」


「関係ある?」



夜。


一人。


車の中。


静か。


エンジンは止まっている。


やけに静かだ。


たくみは、ふと思い出す。


あの英語。

あの電話。

あの黒服。


「……あれ?」


何かが引っかかる。


ほんの少しだけ。


ほんの少しだけ、ズレている。



「……でも」


キーを回す。


エンジンが唸る。


現実はここにある。


車もある。金もあった。証明書もある。


「……いいか」


アクセルを踏む。



バックミラーに映る。


一瞬だけ。


黒いスーツの男。


後部座席に。


いる気がした。



「……は?」


振り返る。


誰もいない。



前を見る。


道路。


夜。


街灯。



「……気のせいか」



遠くで、電話が鳴る。


聞こえるはずのない場所で。



“I love you…”



エンジン音が、それをかき消した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ