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第二話 別の燃料

小さなろうそくの明かりの中。

俺は空になった魔石を前に、紙へ計算を書きなぐる。


魔石の本質は、安定したエネルギーの結晶。

ならば別のエネルギー源で、代替できるはずだ。


理屈はそう難しくない。

問題は何を使うか。


太陽光、炎、小型魔物、髪、血液。


試行錯誤の末、俺は答えに行き着いた。

自分の「時間」だ。


魔力回路に流れる生体時間を抽出し、結晶化する。

魔石も元は自然界の時間圧縮体。

ならば人の時間も同質のはずだ。


昼は荷運び、夜は研究。

俺は睡眠を犠牲に、理論を形へと変えた。


結果、成功はした。


透き通った薄青の結晶。

触れると冷たい。

魔石同様、高エネルギーが感じられる。


だが致命的な欠点があった。


「……劣化が早すぎる」


生成した瞬間から、時間結晶は崩れ始める。

内部の時間が加速し、自己崩壊するのだ。


保存も流通もできない。

作り置きは不可能。

即時使用限定。


後輩に見せると、しばらく無言だった。


「これ、何ですか」

「俺の時間だ」

「……意味がわかりません」

「わからなくていい。使えるかどうかだけ確認する」


平原へと出かけ、時間結晶で魔法を発動させた。

爆風に煽られた髪が舞った。

圧倒的な出力だった。

魔石を超えている。

だが後輩は喜ばなかった。


「先輩、これ溶けてますよ」

「知ってる。だから無駄遣いはできない」

「……先輩の時間が溶けてるってことですよね」


後輩が、少し長い袖の上から俺の手を掴んだ。

加減しろ、少し痛い。


「難しく考えるな。魔石と同じだ」

「全然同じじゃないですよ」


後輩の声が少し震えていたが、俺は気づかないふりをした。


「……他の魔法使いにも、教えるんですよね?」

「駄目だ」

「でも、皆が使えれば――」

「俺だけが使う」

後輩は何か言いかけて、口を閉じた。


翌朝。

ギルドで依頼を確認した。


北方鉱脈の調査および上位魔物の討伐。

破格の報酬。


「本当に、受けるんですか」

「金になるからな」

「……本当にそれだけですか」

「それだけだ」


後輩は少し間を置いてから、「わかりました」と言った。

準備を整えた俺は、後輩とともに北方へ向けて出発した。

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