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第1話「雄飛の回想 ~第一章の振り返り~」

こちらは、「転生したら魅了スキルが強すぎて人生ハードモードだった件」の簡単なあらすじです。

 今日から高校生活が始まる。

 岡山に来て、もう4年目になるのか……。

 ベッドに寝そべり天井を見つめながら、ぼんやりと昔のことを思い浮かべる」

「雄飛~! 朝ごはんだよ~」

「は~い、今行くよ」

 香ばしい朝食の香りと、変わらない母さんの声。

 こっちに来てからは東京にいた頃が嘘のことのように平和だ。


 俺も、母さんも……。

 連中に狙われていることを忘れてしまいそうなくらい。


 忘れちゃダメだ。

 自分の置かれている状況も……。

 自分の特異な体質も……。


「七海のことも……華怜のことも……」

 口に出した名前に胸が苦しくなるのを感じる。

 俺は……。

 俺は絶対に忘れたくない——。



 50歳になった前世の俺、「熊山三四郎(くまやまさんしろう)」は友人の知り合いで出会った、20歳年下の女性「沢井七海(さわいななみ)」とお付き合いを始めていた。

 あの日は初めての泊り旅行だった。

 大切な彼女との旅行、どれだけ楽しみにしていたか。


 だけど……。

「緊急地震です! 強い揺れにご注意ください!!」

 その直後、大きな音を立てて部屋全体が揺れる。……そして、七海の悲鳴が響き渡った。

 最後に目に映ったのは、目を見開いて口から血を流し、力なく俺に抱かれる彼女の虚ろな瞳だった。


 そして俺は、暗闇の世界を歩き続け、謎の男に出会った。

 男は言った。

「君、転生に興味は無いかな?」

 と。

 全てに絶望していた俺は、彼の好きにするように伝えた。



 そして……。

 俺は転生した。

 今の俺、種吉雄飛(たねよしゆうと)として。

 母、舞歌(まいか)は元有名モデルの優しい母親だ。

 父、(しゅう)は有名店のオーナーシェフで、俺と母さんを何より大切にしてくれる愛情あふれる父親……だと思っていた。この時は。


 転生した俺は周囲よりも歩けるようになるのも、言葉を覚えるのも早かったけど、それは隠して過ごしていた。

 いつか七海を探し出すことを目的に生きていたけど、俺の生まれ持った能力「魅了(みりょう)」「精力(せいりょく)」が知らず知らずのうちに周囲に影響を及ぼしていたんだ。


 そんなある日、出会ったんだ。

『私はもう5回転生してるから! 先輩として尊敬してよね!』

 感謝してもしきれない恩人であり、大切な友人であり、転生者としての師匠でもある門宮華怜(かどみやかれん)に。

 華怜との出会いがなかったら、俺はとっくに……。


 華怜の転生者としての能力は「抑制(よくせい)」と「解放(かいほう)」だった。

 彼女が抑制してくれたおかげで、俺の魅了や精力は入間さんに会うまで抑え込むことができたんだ。

 それだけじゃない。

 華怜は俺に、格闘術の他、転生者としての生き方まで教えてくれた。

 出会ってからずっと。


 入間真珠いるままみさん。

 指名手配中の天才科学者。

 膨大な研究データと素材、そしてその頭脳から、俺の能力を制御する薬を開発してくれた人だ。

 Ouroborosウロボロスと過去に手を組んでいたことがあったり、素性の知れない部分も多いから、完全に善良な人とは言えるかどうかはわからないけど、俺にとってはいなくてはならない人。


 Ouroborosは、転生者の組織の1つだ。

 数年前から過激な行動を取るようになったらしい。

 目的は新たなる世界を創造し、その世界の神を誕生させること。

 その目的のために、種主(しゅしゅ)とされる俺と、聖母(せいぼ)とされる母さんが必要らしく、Ouroborosは執拗に監視、接触を試みてきた。

 全員が転生者であるOuroborosのメンバーたちは、俺や華怜同様に特殊な能力をそれぞれ有しており、幾度か戦い、苦しめられてきた。

 そしてOuroborosのメンバーには、種吉秀……つまり俺の父も名を連ねている。それもどうやら筆頭幹部の1人らしい。

 父さん……種吉秀はずっと、母さんと俺を監視していたんだ。Ouroborosの悲願のために。


 そして俺は……。

『古代の遺跡から発見された神の遺物と呼ばれる物質……。そこには人間とは明らかに異なる生体情報が記録されていた。Ouroborosは長年の研究の末にそれを解析し、神の細胞を作り出した。そしてそれを人工の精子として、舞歌の子宮に宿したんだ。……お前は普通の人間じゃない。神の子種を宿した、()()()()()()だ』

 種吉秀と母さんの間にできた子じゃない。


『雄飛ちゃんは、私の可愛い子供だよ。誰がなんと言おうと、私の子供。私がお腹を痛めて産んだんだもん。絶対に、誰にも渡さない』

 母さんが力強くそう言ってくれたから、俺は自分を見失わずにいられた。絶対に母さんを守りたいって思ったんだ。


 俺たちは、華怜と華怜の母である茉純(ますみ)さんと共に、地獄と化した東京を脱して、日本の新首都に近い岡山県に移り住むことを目指して移動していた。

 怪我をした茉純さんが退院するのを待って、華怜は岡山県に来ることになり、俺たちはそこで別れた。

 だけど……。

 華怜は来なかった。

 俺たちと別れたあと、彼女は行方不明になったんだ。

『お母さんごめんなさい。一緒には行けません。私はもう、助かりません。探さないでください。それから雄飛たちにもよろしく伝えてね。どうかお元気で。ごめんなさい。お母さん大好きだよ』

 茉純さんに頼まれた食べ物が入った買い物袋と、大量の血が付いたメモを残して……。



 しばらくは何も手に付かなかった。

 だけど今は信じてる。

 華怜は死んでなんかいない。

 転生してる七海も、華怜も絶対に探し出すんだ。


 中学生になった俺。

 友達はできないだろうと思っていたけど、「秋定涼輔(あきさだりょうすけ)」「金沢遊娜(かなざわゆな)」「赤星絵未(あかほしえみ)」と出会い、仲良くなった。

 ちなみにユナと絵未は、俺と同じ転生者だ。

 3人とは高校も一緒だから、心強いし嬉しいな。


 高校生になったけど、通常時の身長は小学校の低学年時代とほぼ変わらないままだ。

 だけどちゃんと備えている。

 いつかOuroborosは必ず俺に接触してくる。

 それ以外のテロ組織や犯罪者集団の暴動にだっていつ巻き込まれるかわからない時代だ。

 今度こそ、自分の大切な人を、もの、を自分な力で守ってみせるんだ。


「雄飛~、初日なのに遅刻しちゃうよ?」

「大丈夫だよ、母さん」

部屋の前まで迎えに来た母さんに、俺は明るい声で返した。


今日から新しい生活が始まるんだ。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回から本編です。

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