そしてプールに夕立が降りた
この作品は「なろうラジオ大賞6」応募作品です。
タイトルは敢えて『降りた』との言葉を使いました<m(__)m>
「あなたがしたいと思っている様に私も陽介さんにお料理の腕前を見せたいのよ」
こんなキュートな言葉で娘とその彼氏を朝の散歩へ送り出し、今も玄関で手を振っている彼女の母の……その穏やかな笑顔に少し見とれていた。
「どうしたの?」
「あ、うん!……気を遣わせちゃったかな?」
「アハハ! きっとね!」
「……穏やか人だよね」
「母が? じゃあ私も穏やかになれるかな 子供ができたら」
「えっ?!」
「フフ、そんなに構えないで。母曰く、『あなたは若い頃の私そっくり!』なんだって!」
「そうなの?!」
「ああ見えて母はね!若い頃、水着のモデルとかやってたのよ!」
「ええ??」
「その頃の写真、どこかにあると思うから私と比べて……」
そう言い掛けて那美は悪戯っぽい目でオレの腕にしがみ付く。
「お散歩は中止! 朝ごはんをお弁当にしてプールへ行こう!」.
。。。。
那美が……スイムキャップとゴーグルを着け、競泳用水着で更衣室から出て来たものだから、オレは全然気が付けなかった。
「ちゃんとサポーターも買った? 私、ホンキで泳ぐから! 私に追い付くつもりならチン列罪にならない様にしてね」なんて軽口が発せられて初めて那美と判った。
「てっきりビキニかと思った。さっきあんな話してたから……」
「そういう私は昨夜散々鑑賞したでしょ?! 今度は別の私を見て欲しいの!」
「アスリートの那美を?」
「そう! 行くよ!」
那美の長い指がオレの手首に絡み、身震いする様な冷たいシャワーを浴びた二人はジリジリと焼けたプールサイドへ足を踏み出した。
しかし一旦プールへ飛び込むと、水棲動物と化した那美の“鮮やかな”背中を追いかけるのが精一杯で……息の上がったオレはスタート台に背中を預けて空を仰いだ。
「もうギブアップ?」
「いや、空が暗くなったなって……」
その言葉が終わらないうちに空のタライがひっくり返った!
「ねえ!大きく息を吸って!」
「えっ?!」
「行くよ!!」
掛け声と共にオレ達は水の中。
那美は……昨晩とは違う肌の蛇となってオレに絡み付き、二人は口移しで互いの“空気”を入れ替えた。
エントリーはしたものの……どうかな?って内容です(^^;)
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!