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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
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奇妙な町

 町へ入ると、私は思わず「あれ?」という声を上げた。

 何せ、どこかで見た事のある、既視感のある光景だったからだ。

 白や黄色のカラフルな壁の建物の数々に、至る所に植えられた、赤や黄色の花たち、石造りの道に、町の中心と思しき広場には噴水もあり、これはどこか…。


 「あぁ。ライプチヒとロレーヌと、あとロレーヌの西側にある、ケルンセンっていう国は、元々は一つの国だったんだよ。でも、今から数百年くらい前に国内で動乱が起こって、そこから国は3つに分裂して…。

 今の状態になった。昔は敵対してたから国を行き来するのも無理だったらしいけど、今は問題なく出来るぜ」

 アデルの解説に、心から納得する。どうりで町並みや雰囲気がライプチヒと似ていると思った。

 国内で動乱が起こって集団と集団で分裂してしまい、そのまま同じ国でも県同士で睨み合うという歴史は何百年か前にアラクでもあるし、ライプチヒとロレーヌも、それと似たような感じなのだろう。

 ブレザーからスマホを取り出し、地図アプリで現在位置を確認する。アラクから北東へ進んだ所にあるライプチヒから更に北にある、ライプチヒより国土面積が広い国。その南の方に、私の現在位置が表示されていて、画面を指で操作してロレーヌの西側を確認すると、ロレーヌと同じ同じくらいの国土面積の国があった。これがケルンセンなんだろう。

 アラクからかなり遠くに来たなと思うと同時に、もう外の世界なんていうファンタジーな感覚もほとんど無くなってきたなと思うようになったのを実感し、スマホをしまった。



 けれども、1つ気になる事があった。

 確かに、町並みや絵本に出てきそうな雰囲気はライプチヒと似ている。

 でも決定的に明らかに違うのが、町を歩く人々…。

特に、女性だ。


 ライプチヒは町を歩いていても、高身長の人から低身長の人、夕焼けを束ねたようなオレンジの髪や、チョコレートみたいな茶髪など、様々な髪色の、様々な女性を見たのを覚えている。

 アラクは基本的に地毛が焦げ茶色か黒色しかないので、そんなカラフルな地毛を見て驚いたのを覚えている。


 けれどもこのロレーヌは…。


 男性はライプチヒと同じで様々な髪色の人がいたが、女性は…。


 すれ違う人、見かける人の全てが色素の薄い金髪に、雪みたいな白い肌、小柄な体格…。

 男性はいろんな人がいるのに、女性は完全にワンパターンだった。

 綺麗ではあるんだけど、これは…何か…。


 周囲の異様な空気に動揺しつつも自分なりに分析していた時、それに恐らく気付いていないアデルが私とケントに声をかけてきた。

 「なあ。朝出発してもう昼だからさ、何か食わねぇか?金は俺結構持ってるし、ライプチヒの一件もあるから、そのお礼と言っちゃ何だけど、奢るぜ」

 確かに、朝から今までずっと歩きで移動で、お腹が空いている。

 いつかお返ししなきゃなと思いつつ、ここはお言葉に甘えて、何かご馳走になろう。


 何を食べようかと辺りを散策していると、パンの香ばしい匂いが鼻を通って、匂いの元を見てみると、クロックムッシュという料理のお店があった。

 食べた事はないが、ハムやチーズを使ったホットサンドみたいな感じで、空腹時にもっと食べたくなるような、そんな感じの料理だった。

 テイクアウトができるみたいなので、あそこにしないかと2人に呼びかけ、店へと向かう。


 店番をやっている眼鏡をかけたおじさんに声を掛ける。

 「すいません。クロックムッシュ3つ下さい」 

 私の姿に気付くとおじさんは店の奥へ行ってクロックムッシュを用意し、私の元へと戻ってきて…。



 

 私には渡さず、地面にぽいっと投げた。

 出来たてのクロックムッシュが、べしゃりと無惨な音を立てながら、地面にチーズやハムを撒き散らしながら寝そべっていた。


 


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