これからも傍に
「ロレーヌって、どのくらいで着くの?」
「えー…と…。確かここから北へ8kmくらい歩いて行けば辿り着くはずだよ。この国、そこまで国土面積が広くねぇからな」
8kmか。だったら歩いて向かえるかもしれない。
「じゃあ、次の目的地はロレーヌって事だね」
「ああ。ロレーヌは文献でなら読んだ事はあるけど、詳しい実態とかは分からねぇ。今回みたいに俺が役に立てる訳じゃねぇけどな」
…さっきから、すごく気になっている事がある。
「ねぇアデル…」
ん?という顔をしながら顔と目線を私に向ける。
「もしかして、ロレーヌにも来るの?さっきこの国を変えるって言ったのに、国を離れて大丈夫なの?」
これである。国がほとんど崩壊したこの状況で、国を離れてしまっても大丈夫なのだろうか。
「ああ…。この国は正直、俺以外に強大な力を持った奴っていうのは正直いない。だから多少離れても大丈夫だし、何ならいてもまた俺が倒してやるよ。
それに…。今回の件は思った以上に根が深い気がする。どこかに今回の件の根源がいるなら、それは倒さなきゃならねぇ。それは俺にとっても他人事じゃねぇ」
…なるほど。アデルはアデルなりに考えがあったんだ。
「それに…。
俺の過去と一緒に向き合ってくれて、俺の命も救ってくれて、そんな奴に何もしないでいるなんて、俺の気が済まねぇ」
「…!」
相変わらず口も悪かったが、表情は優しかった。
何より、人を警戒していたアデルがそんな風に思ってくれていたなら、これほど嬉しい事はない。
「だからさ。遠慮なく使えよ。俺の力を。
仲間で…友達なんだからさ」
アデルが今まで見たことのない穏やかな微笑みを浮かべながら、優しい口調で私達に伝える。
その雰囲気は根拠はないけど、ああ、この子は精霊に愛されている子なんだと、そう思った。
様々な困難や騒動を経て、アデルが、天才的な精霊の力を持つ少年が、改めて私達の仲間になった。




