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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
87/215

張本人 Side:アリウム

 これだけの悲劇が起こって終わりかと思ったら…全くそうではなかった。


 

 父親は、自分と同じで強力な精霊の力を持つ子を欲していた。その方が、権力や自分の地位を保つのに丁度良かったからだ。

 運とはいえ、10人に1人の割合で精霊使いは生まれてくるので、自分の子供も精霊使いだろうと根拠のない確信を抱いていたらしい。



 …けれど、生まれてきたのは精霊の力を持たない、普通の子だった。

 

 この事実に怒り狂った父親は、それが判明した日から母親に酷い暴力を振るうようになった。

 殴る蹴るだけでなく、「俺の名誉を傷つけやがって」とか「お前のような奴がいるからこの国の地位が下がるんだ」とか「顔しか取り柄の無い中身のない女」といった暴言、さらに機嫌の悪い日は、精霊術で母親を攻撃し、顔に火傷を負わせるなど、DVの域を超えた…犯罪行為を母親に行った。


 そんな状況でも、母親は変わらず優しかったし、何より、父親のターゲットにならないように俺を守ってくれた。

 最悪な家庭環境ではあったけど、母親は自分の前では笑顔を絶やさず、俺が寂しい思いをしないよう、いつも傍にいてくれた。

 俺もそんな母親がいてくれたから、こんな家庭でも居続けようと思える事ができた。



 …けれど。俺が13歳の時に、そんな日々はあっけなく終わった。

 

 俺が13歳の時、母親は病気で倒れた。理由に至っては、日々のストレスと過労だろうとすぐに検討がついた。

 母親がいなくなるなんて考えたくもなかった俺は、父親に母親を治療する為の薬が欲しいと頼み込んだ。

 …けれど、返ってきたのは…。


 「精霊の力を持たない奴らを助ける義理なんてない」

 

 それ以降、父親は俺達の存在を無視した。

 母親の病状も悪化して、この言葉を吐かれた一週間後に亡くなった。

 母親の冷たくなった手を握って、俺は怒りと憎しみに震え、夜中だったにも関わらず家を飛び出し、ひたすら走り続けた。


 

 母さんが亡くなったのは、父親のせいか?…いや違う、母さんがあんな仕打ちを受け始めたのは、俺が精霊の力を持っていなかったからだ。

 …精霊の力を持っていない?…ああ、そうか。



 母さんが死んだのは、俺のせいだ。

 

 その事実に気付いた途端、何故か笑いが出てきた。

 自分と母さんは不幸だって思ってたのに、不幸にしていた張本人は、全ての元凶は自分だった。

 力もないのにこの状況をひたすら嘆いて、その割には何もできない。

 

 …ああ、精霊の力が欲しい。強力極まりない精霊の力で、力を持つ者も持たない者も全て支配してしまいたい。

 ほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい


 



 「力が欲しいなら、あげようか?」

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