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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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アデルの見解

  アデルのその言葉に、頭の中が「?」という言葉で溢れる。

 いやいや…さっきから、アデルと互角以上にやり合うくらいの強烈な精霊術を連発してるのに、精霊の力を持ってない…?

 連発しているのに使えないって、一体どういう事なんだ?

 それに、もしアデルの言葉が本当だったのなら、さっきからアリウムは私の事を毛嫌いしているけど、その毛嫌いしている人と同類だという事になる。

 困惑する私にも気付かないで、アデルは見解を述べる。

 

 「まず…精霊使いってのは、精霊の力を放ったり使ったりする時、腕とか脚とか、身体の全身の力を抜くものなんだよ。身体を力ませると体内にある精霊力の流れが滞って、力を最大限発揮できなくなる。

 これは理論とか法則の話ではねぇけど…精霊使いなら無意識の内にやっている事だから、ほぼそう考えてもいい。

 さっきメリッサ達が倒した隊員達もそうだし…俺やケントも使用する時は当然そうなってる。ケントは意識してねぇだろうけどな」

 アデルがそう述べた後、隣にいたケントの顔を見ると、ケントが私の視線に気付いて「うん。多分そうしてたかも」と言った。


 「でもアンタは…精霊術を放つ時、腕の使い方とか構え方とか、全身に力が入りまくってるんだよ。

 学院で秀才と呼ばれていたアンタなら、身体の力を入れてしまえば力を出せない事は気付けるはずなのに、それをやっていない…というか、知らない感じすらある。

 だからアンタは…元々精霊の力を持っていなかったんじゃねぇかって思ったんだよ」


 アデルが語る理論に、心の中で「へぇ…」と感心する。こんなに緊迫した戦いなのに、相手の動きを観察してしまえる余裕があるアデルは、改めて高い実力を持っているのだと思う。


 

 

 「…そんでもう1つ。



 アンタ、精霊使いが使える範疇を超える力を持ってんだよ」

 …精霊使いが使える範疇?アデルの話や、これまでに経験してきた体験を振り返ってみても、精霊使いは割と無限の可能性があるというか、使い方に限度なんてないような気がする。これは一体…?


 「人間が精霊の力を使用する時、重要になってくるのは、本人の精霊力と共鳴度の高さだ。これは精霊使いならほとんどの奴が知っているし、確かに重要な要素だ。


 …けどな、気付いてねぇ奴もいるが、それ以上に重要なのが…




 使い手がどれだけ精霊に無理をさせないか、なんだよ」

 …使い手が、どれだけ精霊に無理をさせないか。アデルの言葉を脳内で繰り返す。


 「精霊使いによって、精霊力の量も共鳴度の高さもそれぞれだ。これは仕方のない話だし、個人差があるのは当たり前だ。


 でもな、そういったものも無視して精霊の力を乱用すれば…



 精霊は使用者を見限って、力を貸さなくなる。もっと言えば、精霊使いは精霊の力を失う」


 アデルの言葉に頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

 精霊使いでも、精霊の力を使えなくなるような事があるのか…?アデルの言葉に疑問が止まらないでいると、隣にいるケントが「あぁ。メリッサは知らないかもだけど…たまにいるんだよ。精霊の力を失ってしまう人って」と教えてくれた。

 …なるほど。なかなか衝撃的な話ではあるけれど、特段珍しい話でもないらしい。


 「アンタ、雷の精霊の使い手だろ?俺も雷の精霊の力を持ってるから分かるけどよ、アンタは強力な精霊の力を持ってるが、精霊力や共鳴度は正直俺よりも低い。なのに、俺の雷の精霊術とほとんど同等の威力の力を放つ事が出来る。


 

 となると考えられるのは、雷の精霊を酷使して力を使ってるって事だ。何なら、お前の周りにいる雷の精霊達も、とんでもなく苦しそうな声を上げてる。



 精霊の力を失ってもおかしくないような行為をしてるのに、力を失ってないって事は…。



 アンタ、何か怪しい事に手を出してるか?というか、さっきから精霊の姿を確認出来て」

 「黙れ…」


 アデルの説明を遮って、先程から俯いていたアリウムが地を這う様な低い声で言い放つ。

 そのたった3文字の一言だけで、私とアデルは戦慄した。何せ、さっきの隊員達の攻撃が可愛く感じてしまう程、私達に攻撃も何もしていないのに、身体の芯から体温が大幅に下がるような殺意を感じたからだ。

 私は思わず刀を構え、普段は冷静なケントも、この一言で目を大きく見開き、さっきは使用しなかったバタフライナイフをサッと取り出して、構えの姿勢を取る。


 「精霊とは…。人間に跪く為に存在しているのだ…。例え力を酷使して消滅してしまうような事があったとしても…。精霊なのだから何度でも復活するし、どんな使い方をしても許されるのだ…」

 アリウムの非道極まりない発言に、アデルは顔を怒りに染めながら、声を荒げて叫んだ。



 「テメェッ…!精霊にも…命があるって事が分かんねぇのかよ!!!」

 

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