表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第1章 アラク
8/215

私の日常⑦

お店にやってくるお客さん達の接客をしているうちに、気が付いたら夕方になった。

パンを補充しながら時計を見ると、夕方の4時。シフトは5時までなので、あと1時間。このままだったら、あの人達に遭遇しなくて済むかも…なんて思っていた時だった。


「おー姉ちゃん、今日も店番やってるんかー、かんしんかんしんー」

70歳くらいの男性の声がして、心の中で「ゲッ」と思う。

「土曜日なんだから友達と遊んだりしないんかー?あ、それとも友達いないのかー」

はははっと笑いながら勝手に会話を進めて、しれっと失礼な事を言ったのには気付いていないふりをして、私も愛想笑いをしておく。


この人は私が高校2年の冬からお店によくやって来ている男性だ。

たまたまこのお店にやって来て、私の姿をしばらくジーっと見てきたのを覚えている。何で覚えているかって、そのジーっと見る目が何というか、興味関心とはまた違う、もっと別の何かを含んだような見方だったからで…。


それ以降というものの、毎週土曜日は必ずと言って良い程会うようになった。もっとも、よく会うだけで名前も何をしているのかも知らないのだが。服装はいつも工場の作業着のようなものを着ているので、工場か何かの非正規雇用者か何かだろうか?なんて思ったが、結局はよく分からない。


…と、ここまでの話は正直どうでもよくて、私はこの人がひじょーーーーに苦手だ。何でって…

「いやー、やっぱり若くて可愛い女の子の手は白くてすべすべでお餅みたいだねー」

にやにやと笑いながら、私の手を急に握ってきてモミモミと触り始め、その瞬間に全身の産毛が逆立った。

「…申し訳ありません、離してもらっても良いでしょうか?」

引きつった笑いを浮かべながら、少しでも穏便に済ませようと穏やかな口調で言う。

「あれっ、もしかして照れてるー?やっぱり10代の女の子は可愛いなあ」

…言葉が通じない。私は宇宙人か何かと会話してるのか?


この他にも「あれっ、髪の毛伸びたー?」と髪の毛を突然触られたり、目線が明らかに首より下の…私の平均よりも少し大きめの胸にいっている事もあり、そして私が「やめて」と言っても全くやめず、自分の都合の良いように会話を広げてセクハラしてくるのが、この人を苦手に感じる1番の理由だ。

他にもお風呂に入っていない人特有の腐った匂いや、いつも洗ってない匂いのする服を着てくるのも、理由なのであるが。


「いやー若い女の子はやっぱりいやされるなあ、うんうん」

満足そうな笑みを浮かべながら、男性は店を出ていった。その瞬間、身体に津波が襲ってくるかのようにどっと疲れた。

元々体力はある方なのに、あの人の対応をするだけで体力の半分くらいは取られたような感じになる。

…あと、パン買っていかないのかよ。そういえば、あの人いつも私に絡むだけ絡んで帰っていくな。

世の中面倒な客もいるものだな、と思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ