さあ、行こうか
「…いきなり何しやがんだよ!ケント!」
ケントに抱き抱えられたままだったアデルは、ケントの腕の中でジタバタとして、言葉にはしないで「早く下ろせ」と訴えている。
「あー。ごめんごめん。下ろすよ」
そう言ってケントはアデルを地面に立たせた。
私達が逃げて来たのは、ケルンブルクと首都・フランクの中間地点にある田園だった。
青空と緑が一面に広がっていて、空気が美味しくて呼吸がしやすかった。
ケントとアデルと3人、田園を歩く。
「…多少話には聞いていたけど、この国って本当に精霊至上主義なんだね」
「…あぁ。ハイデルの村で、子供達が襲われた事があっただろ?」
ハイデルの村と聞き、私は山賊から救った村の事を思い出す。
「…あの子供達は、多分だけど精霊の力を持った子供達だ。ハイデルの村は、どういう訳が精霊の力を持った子が生まれやすい」
…あの村に、そんな特徴があったんだ。
「だから山賊達がそんな力を持った子供を攫って、他国へ売り飛ばす。それがこの国で問題になってるし、俺もされかけた事がある」
「アデルは古い価値観が嫌いなんだね?」
「…古い価値観が嫌いっつーか…。内容が明らかにおかしいのに『伝統だから』『昔から続いてるから』って考えもしないで現状維持を保とうとするのが嫌いなんだよ…。だから何千年前の考えでも、それが良い考えだったら、俺は好きだよ」
「…うんうん。
で、アデル?他に何か言う事があるだろ?」
ケントがそう言うとアデルはぴたりと足を止め、前を歩いていた私達2人を見た。
「…本当に、この国とやり合うのかよ。最初は冗談かと思ったけど、ここまで来たらマジな気がしてきたぜ…」
「本当に決まってるじゃん。俺達が強いのは知ってるのに、信用ないなぁ」
「いやけどさ…!」
「友達が困ってるのに、放っておけないでしょ」
2人の会話に突然入り、2人の視線が私を向く。
「目の前で友達が困ってるのに、無視するなんて出来ないし、もしアデルの目の前で同じ事が起こっても、アデルは絶対に放置したりしない。そうでしょ?」
「…まあ、そうかもな…」
「それに、これはアデルだけじゃなくて、この国全体の問題でもあるんでしょ?国の人達が先入観や古い価値観に縛られて動けないなら、その考えを持たない私達でどうにかするしかない…違う?」
「いや…間違ってはない」
私が自分の意見を主張する珍しさに、アデルは動揺した。
「うん。じゃあもうこのままフランクへ、敵の本拠地に向かおうか」
そう言ってケントは背中を向けて歩き出した。
「…あっ!おい!」
「…アデル。1人で抱え込んで解決するのが美徳なんじゃない。
誰かの力を借りても良い、自分の心が軽くなる方を選ぶのが正解なんだよ。きっと」
私の言葉に、アデルははっとした。
そしてしばらく黙り込むと、再び足を進め、私もそれに着いて行った。
「…おい。メリッサ、ケント」
「…ん?何?」
「どうしたの?」
「絶対死ぬなよ。
もし何かあったら、そっちも俺の力を借りろ。
絶対に守るからな」




