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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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決意、絶縁。そして出会いへ。

 手紙を全て読み切ると、クラウスは静かに手紙を畳み、メイドと交代して赤ん坊を抱き上げた。


 「…あなたの…いいえ。アデルお坊ちゃまのご両親は、あなたの事を本当に大切に思っておられたのですね」

 赤ん坊にそう話し掛けるが、赤ん坊は「?」といった表情でクラウスの顔を見つめている。


 「…あなたのご両親が守ってくれた命を、私達は必ず守りますからね。


 手紙に書かれていた通り、あなたの力を狙う者がこれから現れるかもしれないし、その力が、あなたの事を更に不幸にしてしまうかもしれない。


 …それでも。あなたがどんな道を選んで、どんな選択をしても、私達は、あなたを支え続けます」

 「キャハハッ!」

 

 アデルにそう呼び掛けると、アデルは明るい笑顔を見せ、きゃっきゃとはしゃいだ。



 それからというものの、アデルは健やかかつ真っ直ぐに成長した。 

 手紙に書かれていた通り、アデルはこれまで見た事がない程強力な精霊の力を持っていて、幼い頃から精霊と意思疎通が出来るという、大人の精霊使いも顔負けの才能の持ち主だった。


 けれども、あの2人はアデルの力と、それがもたらす利益にしか目がなく。

 そんな大人達の勝手な都合や理不尽によって振り回されたり、価値を決められる毎日に嫌気が差して、アデルは卒業式の日にあの騒動を起こし、今は国や国の国家精霊部隊に追われる立場にある。


 けれどもクラウス達にとっては、たとえアデルの行いが良くないものでも、アデルがそれで幸せなら何でも良かった。


 ただ、一つだけ。アデルが命を狙う者によって命を奪われないか。それだけが心配だった。


 また、後に分かった事もある。

 アデルがヘルトリングの家にやって来てから一週間後、クラウス達の調査により、アデルの実の両親の姓は「シュナイダー」という名で、ライプチヒ最南端の町・トレーアで、発明家として活動していた夫婦だったという事が分かった。

 それを聞いたアデルは「じゃあこれから、俺はアデル・シュナイダーだな」と笑顔で答え、それ以降は、アデル・シュナイダーと名乗っている。

 更に、手紙にトレーアで両親の実家に当たる場所の地図が書かれていたらしく、トレーアに避難したアデルがその場所へ向かうと、そこには精霊学はもちろん、発明や文学など、様々なジャンルの本があり、まるでいつかアデルが来る事を待っていたかのような、アデルが知りたい事がたくさん詰まった空間があったらしい。


 そこでアデルは、その両親の実家を少し改築し、精霊のサポートを受けながら国から隠れる生活をスタートさせた。


 そして。

 突然やって来た異国からの侵入者。


 それが私達、メリッサとケントだった。

 

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