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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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実の両親の秘密 Side:アデル

 クラウス曰く、今から17年前の夕方、あの2人は突然、大きな籠に入った赤ん坊を連れて帰って来たらしい。それが…俺だそうだ。

 夫人の方は妊娠なんてしていなかったし、突然赤ん坊を連れて帰って来た目の前の事態に、クラウス達使用人は皆騒然となった。

 

 「お、奥様…お帰りなさいませ。…そちらの赤ん坊は?」

 すると女は下品な笑みを浮かばせながら「この赤ん坊は…とても強力な精霊の力を持っているのよ!なんでも一人で危険生物を燃やし尽くしてしまったんですって!そんな赤ん坊、成長して国家の道具にすれば、私達にも多額の利益が入るだろうって、国家精霊部隊と協力して、実の親を殺してきたの!」

 

 話し方は楽しそうだが、会話の内容は完全に人間ではなかった。

 いくら希少な力を持つとはいえ、実の親を殺すなんて、この夫婦からは完全に、人の心を感じなかった。

 その瞬間を機に、クラウスは夫婦への忠誠心を一切捨てたそうだ。

 すると女は籠をクラウスに押し付けると「もう!やたらと重い赤ん坊だったわ!…その赤ん坊、まだ名前もないらしいの。名付けも養育も、お前達に任せるわ」

 そう言うと女は夫と共に、自室へと戻っていってしまった。


 「…こんな幼い年齢で、実の親を殺されて、国の道具にされるなんて…」

 自身の腕の中にいる赤ん坊に、クラウスは酷く同情した。


 一旦別の部屋へと連れていき、他のメイド達とミルクをあげたり衣服を替えたりしていると、メイドの1人が「クラウスさん…」と呼んできた。

 何かと思って赤ん坊を抱っこして行くと、何と籠のベッドの底から様々な物が入っていたのだ。

 ゴーグル、つなぎ服、何故か長い形状の白い二丁拳銃…。そして、恐らく実の両親が書いた手紙が。

 クラウスは赤ん坊をメイドに任せると、手紙を開いた。そこにはこう書いてあったそうだ。


 「 この手紙を読む人へ。この手紙が読まれてるという事は、僕たちの身に何かあったという事だね。

 …正直、不安だったんだ。強力な精霊の力を持つ、我が子の力を狙う奴が、この国にはごまんといて、僕たちの力だけで守れるのか。この手紙が読まれているという事は、守り切れなかったって事だね…。

 …この手紙を読んでくれている人が、優しい人であれば、この先も読んでほしい。

 籠の中に入っているのは、発明家の僕が使っていたゴーグルと、つなぎ服だ。まだ綺麗だから全然使えるし、もし将来息子が着たいと言う日が来れば、あげてやってほしい。

 そしてもう一つ。何で籠の中に銃なんて物騒な物入れてるんだ、って思うかもだけど、これは精霊の力を込めて使う、世界に一つだけの特殊な銃で、見た目より軽いし発砲という形で均等かつ余計な精霊力の消費がないので、もしも将来…戦いに巻き込まれるなんて日が来たら、使ってほしい。必ず役に立つはずだ。


 そして最後に…。どんなに強力な力を持っているからって、僕たちの息子であることに変わりはない。

 周りの目は気にせず、自分の心の赴く方へ生きて欲しい。

 

 ずっとずっと、愛しているからね。僕たちの息子、アデルへ。」

 

 

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