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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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恩人との出会い② Side:アデル

 それからというものの、放課後になると必ず学長の部屋へと行った。

 学長は俺の知りたい事、学びたい事を尊重してくれて、俺の疑問には全て答えてくれた。

  

 「精霊使いの存在意義ってさ、一体何なの?」

 その日もいつも通り、俺の疑問を学長にぶつけていた。

 「その質問をするという事は、恐らく精霊の力で誰かを傷付けるのを怖いと思っている…という事かね?」

 …凄い。図星だった。


 …そうだ。俺はこの強力な力を、誰かを無差別に傷付ける為に使いたくない。


 学校から寮へと戻る途中、たまに精霊使いが精霊の力を持たない人を(もちろん、みんながみんなそうではなく、一部の差別主義者だけだけど)、精霊術でいじめたりしているのを見るけど、そんな感じのものを見ると吐き気がしてくる。

 精霊の力を持つ人には、その人にしか出来ない事が。持たない人にも、その人にしか出来ない事があるはずなのに、どうして一つの運の違いでここまで扱いの格差が出てしまうのだろう。

 

 この力を持つだけで、他の人より偉そうにできて、危害を加える事ができて、使用者同士では酷く対立し合う…そんなもはや人間性に欠けた奴に、俺も含めて存在する意味はあるのか?


 「…この世界の、この国の均衡は、精霊の力によって保たれてきたといっても過言ではない」

 いつもの凛とした口調で、学長がゆっくりと語り出した。

 「それだけ精霊の力というのは強大で、数値や理論では分からないような不思議な力を持っている。たくさんの学者たちがその研究を行っているが、未だに謎は多い…というか、謎がなくなる事はないじゃろうな」

 …うんうん。その点については非常に共感する。

 精霊の力っていうのは、理屈じゃ説明出来ない要素が詰まっている。


 「でもそんな強大な力を、精霊たちだけでは最大限に利用する事は出来ないんじゃよ」

 「…精霊は、その力を世界の至る所に宿しているだけで、自分で力を発したり、使う事は出来ない…からか?」

 「そうじゃ。精霊は強大なその力を、自分から発する事は出来ない。…となると。必要になってくるのは一体誰じゃ?」

 「…人間。俺達精霊使い」

 「ああ。その通り。力があっても、使える者がいないと意味がない。それに、もし世界が危機に陥れば、精霊たちにとっての危機でもあるからな」


  …あ。それもそうか。 それってつまり…。

 「…精霊と人間は、お互いに傷付け合ったりもするけど、同時に助け合って生きてるって事か?」

 俺がそう言うと、学長は満足そうに頷き、「今のお主の言葉、今から1000年以上前の精霊使い・ミンナの言葉と同じじゃよ」と言った。


 …え!1000年前!?1000年前に、俺と同じ事を考えてた奴がいんのか!?

 先人とか、何か大体持ち上げられてるだけのイメージだったけど、調べてみたら案外すごい人なのかもしれない。


 「…じゃあ。俺達と精霊は、お互い切っても切り離せない関係なんだな」

 「その通り。



 …お主は本当に優しい子じゃな。アデル・フォン・ヘルトリングよ」


 …前々から、精霊に関する疑問以上に気になっている事がある。



 …さっきからこの学長、何で俺を優しい、なんて言うんだ?

 

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