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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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アデルの出生の秘密③ Side:アデル

 母親…だと思っていた人のこの一言に、俺は心臓を剣で貫かれたような気持になった。

 さらにこの女は、まさか俺が聞いているなんて事を思いもせず、衝撃的な話を続けた。


 元々俺は、ライプチヒの南の方にある町の、精霊の力を全く持たないとある夫婦の息子だったという事。

 けれども神の悪戯かそれとも何かの運命か、息子である俺は両親と異なり、国家精霊部隊の精鋭部隊を遥かに上回る精霊力を赤ん坊の頃から持っていた。

 そのきっかけは俺が赤ん坊の頃、町に凶暴な危険生物が出現して町を襲い、精霊部隊の精鋭部隊もその力に全滅しかけていた時、俺が突然炎と雷の渦を発生させ、大人の集団でも対処できなかった危険生物を、一瞬で倒してしまったそうだ。

 さらに、その時木の頂上へ上って落ちそうになっていた子供を木の精霊の力で救出し、その光景を全て見ていた生き残りの精霊部隊の一人は、「あの赤ちゃんは…天才だ…。精霊の申し子だ…」と直感で感じ、そのまま俺を上司と国家に報告したそうだ。


 …けど、ライプチヒの精霊部隊と国家の上層部は野心家かつ強欲な大人がほとんどで、そこで考えたのは「俺の力を極限まで育て、他国の侵略の道具にする」というものだった。

 話によれば、赤ん坊の俺1人の力で精鋭部隊5つ分には十分相当していたらしく、そんな都合の良いもはや人間兵器は、早めに国で心のない兵器に育てて利用しようというものだった。

 ヘルトリング侯爵家は国の中核を担う貴族家の一つであり、この力を上手く利用すれば、自分達も権力や財力が手に入るのだと考え、精霊部隊と秘密裏に協力し…



 

 俺の実の両親を殺害したのだ。


 そして俺をヘルトリング家の養子にし、早いうちから様々な教育を受けさせる事で、俺を殺戮兵器に育てようとしていたのだ。

 …だからあの2人は、俺に対する情や、思いやりなんて砂一粒も持っていなかったのだ。俺に求めていたのは、精霊の力と、それを使っていつかは手に入る権力や財力だけだった。

 正直、小太りで醜い外見をしていた両親と俺では、見た目が似ていないなとは少し思っていた。けど、まさか血も繋がっていなくて、しかも親子としての情もなかったなんて、まだ小さかった俺の心を酷く乱した。


 俺はトイレの事も忘れて両親に気付かれないよう静かに自室へ戻り、ベッドに入って、こんなに泣いた日はないんじゃないかと思うほど泣いた。

 枕はもちろん、シーツも水浸しになるくらい泣いて、泣いて、泣いた。


 俺の両親だと思っていた人は、俺を利用しようとしていた人で、本当の両親はもうこの世にいない。

 俺は一体何の為に生まれてきて、何の為に生きてるのか。

 考えれば考える程自分の存在が分からなくて、それでまた辛くなって泣いた。


 俺がどうして泣いているのか分からない精霊たちが心配そうに寄り添ってきて、そんな夜と、時間だけがただ流れていった。

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