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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第1章 アラク
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私の日常⑤

 4限目の授業終わりのチャイムが鳴り、生徒達は鞄からお弁当なりコンビニの袋を取り出すなりして、昼食の準備をし出す。

 生徒達にとっての至福の時間とも言える。ちなみに3限目の授業は、私が宿題を見せたおかげなのか、レオン先生の犠牲になる人は出なかった。


 高校の昼食は、大体仲の良い人達でグループになって食べる事が多く、女子達は大体4~8人くらいの3つのグループに分かれて、男子達も同じようにグループになって食べていた。

 けれど私は昼食のパンが入った袋を鞄から取り出すと、自分の机を一瞥もしないで教室を出て行った。


 階段を何回か下りて、1階にある職員室ーではなく、その横にある階段を下りた、地下にあるカウンセリングルームへと向かった。

 ノックをして中からの返事を聞くと、カウンセリングルームの扉を開けると職員用のデスクがあって、その奥の部屋に白い机にオレンジのソファー、そして、そのソファーに座る小太りの眼鏡をかけた初老の男性と、肩くらいの長さの髪の、伸びまくった前髪で目が見えない少年が座っていた。


 「おお、今日も来たのかい。いらっしゃい」

 いかにも初老っぽい、落ち着いた口調で、ハンネス先生は笑顔を浮かべながら私に呼びかけた。ハンネス先生はこの学園の情報科の教員兼スクールカウンセラーだ。

 「…おはよう。メリッサ」

 隣に座っていたセミロングの髪と前髪が特徴的な、ノエルも小さな声で私にあいさつした。

 「おはよう。ノエル」

 「2人共。僕は今からちょっと職員室に用事があるからここを少し離れるね」

 はーいと返事すると、ハンネス先生は部屋から出ていった。


 ノエルの隣に座り、袋に入ったメロンパンとクリームパンを取り出した。

 「…メリッサていつも菓子パンだけど、栄養偏らないの?」

 ラップに包まれたおにぎりを両手に持ちながら、ノエルが話しかけてきた。

 「朝と夜はちゃんと栄養のある物食べてるから、大丈夫だよ。多分」

 「…多分なんだ…」

 ノエルはこの学園の2年生、つまりは私の1学年下だ。1年生の中頃からクラスで大人しい性格を目につけられて、暴言や物を取られるといったいじめに遭ってしまい、今はこのカウンセリング室に別室登校している。

 私は1年の最初の頃からこの部屋によく来ていたので、ある日いつものようにここに来たら、髪の長いしんどそうな男の子がいたのでびっくりしたのを覚えている。


 いじめられっ子というのもあって上手く打ち解けられるか心配だったが、ノエル曰く「メリッサは安心する感じがある」という理由で、警戒されることなく話が出来ている。

 「…メリッサ、いつもこの部屋に来てるけど、友達と食べなくていいの?」

少し心配そうな口調でノエルが聞いてきた。

 「私は友達いないし、教室でぼっちで食べてても女子達にネタにされるだけだから」

 「…そっか…」

 どこか落ち込んだ口調でそう呟いた。…大変なのは私じゃなくて圧倒的にノエルの方なのに、どうして私の心配をするんだろうか。

 「…でも、こうやってノエルと一緒に話しながらご飯食べるの、楽しいよ」

 「…えっ、ほんと?…あ、ありがとう…嬉しいな…」

今まで前髪もあって目が合わなかったノエルだけど、さっきの瞬間だけ目が合って、その時少し顔も見えた。丸くて大きな目をしていて、結構可愛い顔だなと思った。


 クリームパンを食べ終わって時計を見ると、5限目の授業が始まる10分前だった。

 「あ、そろそろ私戻るね。」

 「あ、う、うん…」

 袋を持って、ソファーから立ち上がる。

 「メ、メリッサ!」

 ノエルに呼び止められた。

 「ま、また一緒にご飯食べようね…」

 その呼びかけに、私は「うん」と返し、部屋から出ていった。




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