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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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意外な一面

 アデルと2人、子ども達の救出に向かう。

 子ども達は6〜10歳くらいの子が6人いて、全員ロープで体を、口を布で縛られた状態だったので、こんな状態で小屋に閉じ込められ、助けも呼べなかったなんて、トラウマになってもおかしくないくらい怖かっただろうなと思った。実際、目から涙が出ている子も何人かいた。


 「大丈夫?怪我はない?あ、私達、みんなを助ける為に来たんだよ。あの山賊達は、私達がやっつけたから」

 子ども達と目線を合わせ、ロープと布を解きながら、子ども達を怖がらせないよう優しく声をかける。

 「あぁ。…怖かったよな。もう大丈夫だ」

 今の声に耳を疑って、思わず隣を見ると、アデルが子ども達と目線を合わせながら、優しい表情で子ども達の頭を撫でている。

 「…おい何だよその顔は。さすがに俺だって、誰にだってあの態度じゃねぇよ」

 アデルが私の視線に気付いて、私を睨んでくる。


 …いや。アデルのいつもの態度しか知らない人が今の話し方を聞いたら、ほとんどの人がこのリアクションになる。それくらい優しくて、心の奥にじんわりと入り込んでくるような、心地良い声だった。子ども達も安心したのか、泣きながらアデルに抱きついてきた。

 「うおっ…!?…ははっ。怪我がなくて良かったよ」

 抱きつかれて一瞬動揺したが、すぐに冷静になり、子ども達の頭を再び撫でる。


 …意外に子ども好きで面倒見良いんだ。口も態度も悪い少年の、意外な一面を発見した瞬間だった。


 しばらくするとケントが戻ってきた。ケントが小屋に入ってきた瞬間、泣いていた子ども…特に女の子達が、頬を赤くしながら泣くのを止め、ぼーっとケントを見つめてきたので、わあ、子どもの純粋な心を通り越してしまうケントの美貌は、もはやこの世のものじゃないな、と思ってしまう。


 小屋の裏から金品や宝石の入った袋も取り返し、村へと戻る事にする。

 その時子ども達と手を繋ぐ事にしたが、その組み合わせが、ケントがさっき頬を赤くしていた女の子2人、アデルがさっきは泣いていたけど、本当はめちゃくちゃ元気だった男の子2人、私がさっき助けた男女2人と、なんとも個性が別れる組み合わせであった。


 道中、ケントが女の子2人からの質問攻めに笑顔で答える姿はほぼアイドルの対面イベントか何かだったし、アデルがやんちゃな男の子2人とぎゃいぎゃいしながら歩く姿は、何だか新米保育士みたいだった。私はそんな2人を見て、手を繋いでいた子ども達に「面白いお兄ちゃん達だよね」と呼びかけた。

 

 そんなやり取りをしばらく繰り返すうち、村へと到着した。空と太陽はオレンジに染まり、夜へと姿を変えるその直前だった。

 


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