意外な武器
村娘によると、山賊はここから2km程離れた森の中にアジトを構えているらしく、恐らくそこに村で盗まれた金品はもちろん、子ども達もいる。
アジトへ向かう道中、アデルに聞いてみた。
「ねぇアデル、ライプチヒでは、山賊って結構沢山いるの?」
「そーだな…首都のフランクみたいな都会の方ではほとんどねぇけど、こっちみたいな田舎だとたまにあるな。俺の住んでたあの町でも一度あったし。でも、強奪がほとんどで、命を奪うような事は一度も無かったな。ひょっとすると奴らは恐らく…」
そこまで言うと、アデルは何かハッとした様子で、何故か口を噤んだ。
「え?どうしたの?」
「いや、俺のただの憶測だ。気にすんな」
そんなやり取りをしていると、辺り一面を見渡せる、すぐ隣に滝がある崖にやって来て、その崖から肉眼で確認できる森の中に_アジトはあった。
アジトは丸太をロープで縛る形で出来た、学校の体育館くらいの広さはありそうな、そこそこ大きな場所だった。
アジトの前には同じく丸太でできた門があって、門は閉じられている。その近くで門番と思しき、裸の上に動物の毛皮を羽織った小太りの男性が、槍を持って立っていた。
「あれって…門番だよね…。ここから降りて戦っても、奇襲に気付かれるよね…」
「そーだな…だったら…」
アデルが腰から拳銃を取り出す。そういえばこのアデルの拳銃、オートマチックの形状なんだけど、本とかで見た拳銃よりも何か、形が長いような…?
そう思った次の瞬間、アデルは右手に持っていた拳銃を左手に持っていた拳銃の後ろ、激鉄の辺りに差し込むと、頭に着けていたゴーグルを着用し、崖付近にうつ伏せになって銃を構えた。これはもしかして…。
「ねぇアデル、何する」
「少し待ってろ」
そのアデルの声には、さっきまでの不良の様な感じではなく、ただ一つ、強烈な集中の意思が感じられた。
アデルが目を細めると、次の瞬間アデルは銃の引き金を引き、銃口から青白く輝く光の光線が爆発音と共に走り、そのまま遠く離れたあの門番に…命中した。
命中した瞬間、男性は一瞬痙攣した後、白目を剥きながら仰向けに倒れた。
「よしっ、あれで他の仲間に気付かれずに行けるぜ!」
ゴーグルを再び頭に付け直しながら、アデルが明るい口調で言う。銃口からは発砲した関係で、煙が上がっている。
…いやいやいや、ちょっと待って!アデルって、遠距離からの狙撃も出来るの!?
「ちょ、ちょっとアデル!」
「ん?」
「今、なにやったの!?一体…。」
「あぁ。俺のこの銃、合体させる事でライフルにもなるんだよ。近付くのは無理だけど、ライフルで狙えばいけると思ったんだ。あぁあと、あいつは殺してはないぜ。今は気絶してるだけどけど…しばらく目は覚まさねぇだろうな」
…情報が追いつかない。詳しく追求したいところだけど、今は子ども達の命が関わっている。話は後でまたすれば良い。
「…で、あそこまでまた時間がかかるよな。どうやって行けば効率良く行けるか…」
「あぁ。それなら簡単だよ」
ケントの一言に2人でえ?と反応すると、次の瞬間、ケントにアデルと一緒に滝に突き落とされた。
…突き落とされた?
「「えっ(はっ)???」」
うわあああああと叫びながら、私達は滝に落ちて、滝の下にあった滝壺にざばんと入水した。
私達が入水したすぐ後に、ケントもまた落ちてきた。一旦全員で陸まで上がり、息を整えると、アデルはお腹の底から声を出して叫んだ。




