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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第1章 アラク
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私の日常④

 文庫本を読んでいるとチャイムが鳴り、他の教室に遊びに行っていた生徒達や教室に散らばっていた生徒達もぞろぞろと教室に戻ってきて、自分の席に着いた。

 しばらくすると担任の先生が入ってきて、連絡事項などを生徒に伝えると、教室を出ていった。


 1限目の授業が始まるまでに時間があるので、再び文庫本を読み始めると、背中をちょんちょんとつつかれた。

 ん?と思いながら後ろを振り返ると、そこには浅黒い肌に黒髪、白シャツを捲ったスポーティな雰囲気のクラスメイトのレイ・ボストンがいた。

 レイ・ボストンはサッカー部のエース(らしい。サッカー部に詳しくないけれど)で、運動神経抜群で性格も明るくお調子者気質、成績はお世辞にも良いとは言えないが、行事になるとクラスメイトを上手くまとめてくれ、いつも周りに人がいる、クラスの人気者と言える存在だった。

 毎月の席替えになると、彼の近くになりたい人が男女問わず続出して、もし彼の近くの席が大人しい男の子だったりすると、特に気の強い女子は断られないのを分かっているので、席交換を要請したりする。今回は私が最前列で、彼がその後ろだったので、最前列が嫌なクラスメイト達は、私に席交換を頼まなかった。最前列の力とはなかなか凄い。


 「どうしたの」

 若干真顔になりながら言うと、レイ・ボストンは申し訳なさそうな顔をしながら「リンドグルツさん、3限目の歴史の宿題プリントやってる?やってたら見せてほしくてさ…」

両手を合わせながらそう言うと、彼の周りにいたクラスメイト達も「あっ、俺もやってない!」「俺もだわ!」と続々と言う。


 「またか」と思った。クラスメイト達は、特に運動系の部活に入っている人はそうだが、よく宿題を忘れる。それもイケメンだが怖いと有名な、社会科のレオン先生の授業の宿題を忘れてくるので、彼らはある意味勇者じゃないかと思う。(レオン先生は若くてイケメンの先生だが、宿題忘れや授業中の居眠りなどに厳しく、やると淡々とした口調で睨みながら正論攻めをしてくるので、学校中から恐れられている)


 彼らがレオン先生に怒られる姿を想像すると同情に近い気持ちが湧いてきて、他に断る理由もないので私は「いいよ」と言い、歴史の宿題プリントを渡した。

 「さっすがリンドグルツさん!ありがとう!」

 満面の笑みを浮かべながらレイ・ボストンはプリントを受け取り、それと同時に周囲にいた男子達も、彼の席で続々と宿題を写し始めた。

 クラスには「宿題をきちんとやってくる人」と「そうじゃない人」の2つが存在していて、後者は前者によく前者に写してもよいかと頼ったりする。私はクラスメイト達に前者の側だと思われているのかな、もし私が体調不良とかで休んだりしたらどうなるのかなと思った。


 すると後ろから「私も写していい?」と声がして、振り返ると同じくクラスメイトのアリスがいた。

 アリスはさっき私の陰口を言っていた女子達の1人だ。さっきは嘲笑しながら私の陰口を言っていたのに、今は私を助けてほしいと言わんばかりの困った顔をしている。

 …さっきまでかなりの音量で私の悪口を言ってたのに「私知らない」と言わんばかりの態度で私に宿題の許可を取るとは、1周回って尊敬に値するし、こんな事が2年の時からちょくちょくあった。


 許可してもどのみち彼女達にとってはを何を言っても良い存在である事には変わりがないし、断ってもクラスでの立場がもっと脆いものになってしまうので、それを分かってやっているのだとしたら、1周回って彼女達は頭が良い。

 「いいよ」そう言うと、彼女は「わー!ありがとう!」と笑顔を浮かばせながら、宿題を写し始めた。


 「3限目までには返してね」みんなにそう言うと、私は再び文庫本に目を落とした。

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