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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第2章 精霊国家・ライプチヒ
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強気な少年の悲しみ

 その後もアデルから、この国の事や精霊についての事をいくつか教えて貰った。

 そのライプチヒは、精霊への信仰や学問、活用が非常に積極的な国家で「精霊国家」と呼ばれているらしい。

 精霊の力が使える者は、例えば炎の精霊の使い手であれば陶芸やガラス細工職人といった炎を使用する仕事に、水の精霊の使い手であれば漁師や水夫といった水と関わる仕事に、木の精霊の使い手であれば庭師や花屋など、それぞれの属性と関わりのある職業に就く事が多いそうだ。

 実際、道中で水の精霊の力を使って洗濯をする老婆を川で見かけ、そんな風に当たり前に精霊の力が生活に根付いた光景に、自分はファンタジー小説の夢でも見ているのではないかと思う程、私の心は未だに動揺していた。

 「じゃあ、アデルも何かそれに関わる仕事に就くの?」

 「いや…それは正直分かんねーけど…」

 ハキハキとしたアデルにしては珍しく、気まずそうな顔で言葉を濁したので、ここはあまり深く追求しないほうが良いなと思い、話題を変えることにした。


 「精霊の力を持つ人って、10人に1人なんだよね?どんな傾向なの?」

 「ん?…そんなの正直…運だよ。運。」

 「運?」

 「おう。強力な精霊の力を持った夫婦から何の力も持たない子供が生まれた事もあるし、何の力も持たない夫婦から強力な精霊の力を持った子供が生まれた事もある。だから少なくとも遺伝性ではねぇし、他にも血液や体の構造なんかを調べても、これといった共通性が見つからなかったんだ。



 だからこれはもう正直…運なんだよ。」


 

 _運。

 その言葉を頭の中で繰り返す。

 そうだ。この精霊の力に限らず、世の中の大半の要素は運だ。アラクにいた頃も、地下街の住民に対して地上の人達が「努力が足りない」「甘えだ」なんて批判する姿を見てきたけど、その努力や気持ちの根本にある「環境」や「生まれ」「親」といった要素は、本人が選べるものではない。その辺りのものは、完全に「運」が良かった人しかする事が出来ない。

 そしてそんな「運」に恵まれてある程度成功した人が、「運」に恵まれなくて落ちぶれた人達を批判する。

 …何とまあ、不条理で不平等な世の中の仕組みである。


 「…だから、学校にいた頃、俺を天才だ、なんてもてはやす奴らが何人かいたけどさ、俺はあくまで…運が良かっただけで、俺自身が凄いわけでも何でもねーんだよ…」

 そう話すアデルの表情は、いつものハキハキした感じではなく、どこか悲しみが混じった表情だった。

アデルも何か、運の不条理さを感じる経験があったのだろうか?


 思わず聞いてみたくなったが、その表情ではなく、心の底に何かを抱えていそうな感じに、私は何も聞けなかった。



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