トレーア
町へ到着した時、私は360度見渡しても新鮮な光景に心を踊らせた。
白を貴重とした木造の民家の数々に、窓は長方形で格子状のデザインになっている。窓付近や町の至る所に花が植えられていて、これはまるで…。
「…絵本の中の世界みたい…」
「ははっ。初めての外の世界に感動してるねぇ、メリッサ」
ケントが微笑ましそうな顔で私を見てくる。
スマホを確認すると、時刻は8:01。相変わらず時間の進みを忘れてしまうくらい、新鮮な事ばかり目の前で起こる。まだ朝早いという事もあり、人はあまりいないが、服装はワンピースやズボンなど、町の雰囲気はアラクと全く違うものの、服装は結構似ているなと思った。
そんな御伽話みたいな光景を楽しんでいたその時だった。
「だっ!誰か!誰か来てくれ!」
若い男性の声が聞こえて、ケントと同時に走り出した。
到着したその場所には、熊…と似た姿をした、真っ赤な凶悪な目に2mくらいはありそうな身長、鋭い爪をした生き物がいて、住民達はそいつと距離を取りながら不安そうな顔でいた。
「ケント、あれってもしかして…!」
「ああ。危険生物だよ。この辺の地域だと、町中に現れるもの珍しくないんだ」
これが普通なのだとしたら、ケントの「武器は持っておいた方が良い」という忠告は本当にそうだった。
これは常備しておかないと死んでしまう。
布から刀を取り出し、鞘から刀を抜いて構えたその時だった。
「ウギャアアアアアア!!!」
私とケントの間を閃光みたいな何かが通過して、そのまま危険生物の眉間に命中した。
危険生物でも人間でも、急所の場所はどうやら同じらしく、そのまま仰向けに倒れ、動かなくなってしまった。
住民達がぞろぞろと危険生物の周りに集まる中、私とケントはあの閃光の正体が気になっていた。
「ねえケント。さっきの閃光みたいなあれ。あの裏路地に繋がってる通路?から出たよね?」
「ああ。多分…あっちに誰かがいるんだと思う。…ちょっと行ってみようか」
ケントの提案に私も賛成し、私達は裏路地へ繋がる通路へ入って行った。




