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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第1章 アラク
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偽善だったとしても

 「ありがとうアントン…でも私ね、そんな恩人とか言われるような程、大きな事はしてないよ」

 「?」

 「私は長い間自分の気持ちが分からなくて、だからもしかしたら、ここへ来ているのも、偽善の気持ちがあるからじゃないかって思って。だから…」

 「偽善でもいいんじゃねえか?」

 へっ?と間抜けな声が出た。


 「偽善だったとしても、お前が行動したっていうのは事実だろう。それでこうやって、助けられた命や救われた存在があるんだから、お前はやっぱり俺達の恩人だよ。まあ、助けられる側からしたら、偽善でも正直気にしないんだけどな」


 …胸がじんわりと熱くなった。今まで自分は、何で生きているのか分からなかった。…けど。


 こうやって自分の小さな行動で誰かの心や命を助けられたなら、私は生きてて良かったかもって、ほんの少しは思えた。

 「だからメリッサ。それはお前が持っていけ」

そう言われると私はこくりと頷き、ありがとうアントンと返した。


 「…あっ、ねぇアントン」

 …どうしよう、今すごく重要な事を思い出した。

 「ん?どうした?」

 「…私がいないのに、危険生物にどうやって対応するの?」

 そうだ、これが物凄い重要だ。何せ、地下街のみんなの命が関わってくるのだから。

 「あぁ。それなら、俺の地下街知り合いに武術の心得がある奴がいるし、何なら俺も少しは戦えるぜ」

 …え!?アントンって戦えたの!?最初から言ってくれたら良いのに…。

 …まあ、本人がそう言うなら、その点の心配はしなくても良いのかな?私はひとまず安心した。


 「そういやさ、島から出るって、どうやって出るんだ?」

 「あぁ、それなら俺が何とかするよ」

 今までの会話をずっと聞いていたケントが会話に入ってきた。

 「ん?この兄ちゃん誰だ?さっきから気になってたけどよ。メリッサの男か?」

 「全然違う」

 …何だ?このどこかでやったような会話は…。というか、アントンまで何言ってるんだ本当。

 「違うのかぁ?でも2人、並ぶと結構バランス良いぞ?」

 バランス良いって何だ?新手の誉め言葉か?


 「まあでも、メリッサも男の1人や2人いてもおかしくない年頃だもんなぁ。…なあ兄ちゃん」

アントンの呼びかけに、ケントがん?と反応する。

 「メリッサの事、よろしく頼んだぜ」

 「…うん、もちろんだよ。任せて」

 …何だ。この結婚を控えた娘の父親と、その婚約者みたいな会話は。

 「がははっ!兄ちゃん面白いな。島から出るって不可能なのに、兄ちゃんだったら可能な気がしちまう」


 そんなこんなで、私は無事に武器を入手する事ができた。

 他の最低限の荷物は通学リュックの中に入っていたので、つまり…。


 「準備できたよ、ケント。行こう」

 とうとう、島を出る時が来た。

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