無事だったの?
余裕そうな笑みを浮かべながら、お兄さんは男の元へ歩いていき、男の元へ着いたその時、男の首を掴み、思いっきり締め上げた。
「アッ…!ガッ…!」
熊みたいな男が中性的な美男に締め上げられるという光景を若干の恐怖と共に見ていると、お兄さんは言った。
「あんた、強さが全てだと思ってるよね?多分。
でもさ、強さだけで誰かを支配できると思ってるんなら…
あんたは弱いよ。物凄く」
そう言うとお兄さんは、男を近くにあった下水道にぽいっと投げ入れた。
男は白目を浮かばせながら、仰向けで浮かんでいる。
これで一旦、自衛官は全員止められた…?じゃあ、街は燃やされない?
そう自分の中で安心した途端、私はその場にへなへなとへたり込んだ。
「おっとメリッサ、大丈夫?」
お兄さんが私の元に駆け寄り、私と目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「う、うん…。気が抜けちゃって…」
「そっか。
…よく頑張ったね。メリッサ」
優しい口調で私に呼びかけると、お兄さんは私の頭をそっと撫でてきた。
「あんな連中に立ち向かうなんて、メリッサぐらいの年の子なら怖くて当然だ。
よく頑張ったね」
お兄さんの優しい声と手つきに、私は安心して、そしたらチェックのボトムスの上にポタポタと水が落ちてきた。
気付いたら、私は泣いていた。
「…お兄さんも、無事で、良かった…」
涙で高くなった声で私は懸命にそう言った。
「うん、俺は大丈夫。ありがとう」
穏やかな空気が流れていたその時、背後から突然声がした。
「おい…!貴様ら…!よくも我々の計画を邪魔してくれたな…!」
太った禿頭の、大統領が私達を真っ赤な顔で見つめていた。
「お前たちなんて、私の力を使えば簡単に死刑に…」
そう言おうとした次の瞬間、下水道からザバーンと音を立てて、何かが飛び出してきた。
思わずそっちを見ると、そこには深緑の体に長い尻尾、長い爪に2メートルくらいはありそうな、ワニ…と似ているが、ワニとは違う…危険生物がいた。
「!?」
私と大統領が同じ反応をすると、ここでもお兄さんは冷静に、私に「メリッサ、俺の近くにいて」と呼びかけてきた。
思わずお兄さんの後ろに回ると、危険生物は大統領を鷲掴みに捕らえた。
「な、何をするんだね!おいお前たち!助け…」
助けを求める前に、大統領は危険生物に頭から噛みつかれ、そのまま上半身を食いちぎられてしまった。
私はその様子を、ただ黙って見つめていた。




