甘く見ないでよ
圧倒的な強さで武術の心得がある自衛官達を一撃で倒す中性的な美男…という、何ともカオスな状況に、私は唖然としながら見ていた。
…お兄さん、戦えるの!?というか、こんなに強いの!?
目の前の情報量の多さにその場に突っ立っていると、突然後ろから首を迷彩柄の腕に絞められてしまった。まさか人生でスリーパーホールドをされる日が来るなんて思わなかった。
「おい金髪!お前のガールフレンドは今こっちの人質になったぞ!」
チンピラの様な口調で私の首を抑える自衛官の1人が、お兄さんに向かって叫び、それと同時にお兄さんがゆっくりと私と自衛官を見つめた。
「言っておくが、俺達はこの国の自衛官だ!人の1人2人くらいなら、殺した所で言い逃れ出来るんだぞ!俺達の言う事を聞かないと、この女の命はないぞ!」
…その発言に、私の心臓が大きく跳ね上がった。
私の命は、こんな所で、こんな状況で終わってしまうのだろうか?
だったら、私は…。
動揺する私に、また別の自衛官が声を上げた。
「先輩!こいつは小さなパン屋の地味なバイトです!こんな奴殺したって、むしろ世の為です!」
…は?
今この人は何を言ったんだ?私を殺して、本当に世の中が良くなるっていうのか?
自衛官っていうのは武術だけ優れていて、頭の方は終わってるのか?
そして何より、
こんな奴らに、私の人生を決められるの?
そんなの…絶対に嫌だ!!!
私は辺りを見渡すと、近くにいた自衛官の腰に刀が差してあったのを見つけ、それを勢い良く蹴り上げて、思いっきり手を伸ばしてキャッチした。
自衛官達が反応するよりも早く刀で私の首を絞めていた自衛官の腕を殴ると上手く脱出し、そのまま刀を鞘に入れたまま自衛官に斜めに思いっきり殴り上げた。
残りの自衛官2人にも同じ技をくらわせ、2人は一撃で気絶してしまった。
かろうじて意識を保っていた1人が、私を恐怖の表情で見つめる。
「ねぇ、自衛官さん」
「ヒッ!!!」
国を守る者とは思えない弱腰で私に怯えた態度を取る。
「私の事らいなくなった方が世の為って言ったけど…
どう?そんな奴に追い詰められるのは。」
すると自衛官は白目を剥きながら、ゆっくりと意識を手放し、気絶した。




