予感の的中
なるべく足音を立てずに走っていると、8人くらいの男性の集団を見つけたので、お兄さんと近くの積まれた箱の後ろに隠れ、とりあえず彼らの会話を盗み聞きになるけど、聞いてみる事にした。
箱の後ろから集団を確認すると、そこにはいつもバイト先に来ているあのチャラい自衛官の集団と、熊みたいなゴツい体格に鬼のような顔立ちの40代くらいの男性がいた。恐らくあのチャラ自衛官達の上司なのだろう。
そしてもう1人、膨れたお腹にスーツ姿、禿げた頭に眼鏡が特徴的な老人…このアラクの大統領、アーロン・ミラーがいた。
何で、自衛官の集団と大統領がこんな所に?
基本的にあの波止場に海軍の軍人が立っている事は普通だけど、自衛官と政治家がこんな所に来る事はない。
そもそも、地下街の人が苦しんでいて、助けてと声を上げているのに気付いていないふりをしたり、無視をしているのはそっちなのに、どういう事だろう…?
「…にしても、話で聞いていた以上に臭いし汚い所だなぁ」
アーロン・ミラーがゴミを見るような目で辺りを見渡しながら、嫌悪感を含んだ声でそう言った。元々地下街の住民や若者を無視した発言や、富裕層しか得をしない政策ばかり展開していて、国民からの支持はあまり高くないと、誰かから聞いた事がある。
なるほど、あの振る舞いからその話は嘘じゃないのだろうなと思った。
「ええ、ですから…」
あの熊みたいな自衛官が口を開く。
「その汚物を消す為に、これから火を放つのです」




