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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第4章 芸術の都・ケルンセン
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仲間との再会

 セレーネたちと別れ、私はセレーネに貰った紙切れを手に握りしめながら、フィリッハの街の中を少しだけ放心状態で歩いていた。

 この紙切れはセレーネたちと別れる直前、セレーネから「メーちゃん!良かったらこれ!」と言われて渡された紙切れなのだが、紙にはなんとセレーネの家の住所が書かれていた。恐らく時間がある時に遊びに来てという意味だろう。

 家の住所、ましてや芸能人という個人情報の管理に厳しい職業に就いているのに自分からそれを教えるなんて、私は相当セレーネに信頼されているようだった。


 ちなみにフィリッハというのは、今私がいる街の名前で、このケルンセンの首都でもある。バタバタしすぎて知るのが遅れてしまったけれど。

 いつもだったらここが首都かとテンションが上がっているのだが、今はそれどころじゃなかった。


 セレーネと、マネージャーのジャンさんが交際関係にある。

 どういう経緯で交際に至ったのかは分からないし、私自身、交際にどんなきっかけがあろうとそれは全く気にしないのだが……。

 

 それでも想像の斜め上をいく組み合わせだった。

 普通芸能人の交際相手や結婚相手は、同じ芸能界の人とか、一般人でも社長とか、財閥の御曹司とか、億万長者みたいな「一般人の中の一般人じゃない人」というイメージが強かった。そして尚且つ、そのほとんどが生まれながらの人生勝ち組!みたいな、整った容貌の持ち主であることが多い。

 

 正直、セレーネくらい人気の歌手なんだから、異性の一人や二人いたって特に驚きはしない。

 セレーネは優しいし、思いやりの気持ちも深いし、仕事に対する姿勢も真摯だ。そんな姿はきっと、どんな男性だろうと惹かれてしまうに違いない。女性の私でこうなんだから、異性の目にはきっともっと魅力的に映るだろう。

 

 けれどもそんな美しい女性が選んだのは……自分のサポートをしている、言ったら悪いけど地味な男性だった。

 星の数ほどいる男性の中から、どうしてジャンさんを選んだのか。

 ……あとこれはどうでも良い話だが、やっぱり週刊誌や掲示板みたいな、そういう芸能記事みたいなものは、信憑性が限りなくゼロに近いレベルで低いのだと改めて分かった。

 交際関係もそうだけど、何よりセレーネの人間性が180度違う姿で描かれていた。

 やっぱり記事を書く側と言うのは、自分たちにとって利益になるようなことしか書かないのだと、そこに人間らしい思いやりや情け、善悪の基準といったものは存在していないのだと、今回の交流を通して強く実感した。


 フィリッハの街は、夕方の関係もあってオレンジ色の空と空気に包まれていた。

 街の雰囲気の相まって、一日の終わりと寂しさの混じった独特な空気感が漂う。


 「うーん……」

 あぁもう、別に変なものを見た訳でもなんでもないのに、あの時見たもののインパクトが大きすぎて、意識しなくてもいろいろと考え込んでしまう。

 とことこと広場の近くを歩いていると、首根っこの辺りを突然グイッと引っ張られ、思わず「うがっ!?」と変な声が出てしまった。

 

 「え!?何!?」

 「何、じゃねぇよ。ここで待ち合わせだろうが。何スルーしようとしてんだ」

 特徴のある低い声がして後ろを振り返ると、そこには私より少し低い目線から私を鋭い目で見てくるアデルと、その両隣にケントとナディアがいた。


 「おかえりメリッサ!セレーネさんと楽しく過ごせた?」

 「お前、明らかに目立つ仲間がいるのに全く気付いてなかったぞ……何かあったのかよ」

 ええもう。ここ半年で一番の衝撃がありました。

 でもアデルたちに言うのはさすがに良くないし、おまけに私はあの二人が恋人同士に見えたけど、まだそう確定した訳じゃない。今は黙っておくのが良いだろう。


 「ま、んなことは今いいとして……





 お前、あの歌姫を見て何か感じなかったか?」

 「感じる?」


 何か感じるかって……それって例えば、清廉な空気感の持ち主とか、気配り上手で優しいとか、あとは、歌声がすごく綺麗で……とか?

 考え込んで黙り込んだ私を見て、アデルは一瞬思案してからゆっくりと口を開いた。

 




 「あの歌姫、多分精霊の力を持ってる」

 

 

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