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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第4章 芸術の都・ケルンセン
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似ているけれど違う場所

 ロレーヌでの騒動から約一週間。 

 あれだけ大規模な戦いだったのに、大きな怪我を負った仲間は一人もおらず、それどころかこんな少数で国家レベルの軍事力を撃破してしまった精鋭ぶりに驚く。

 それもそうだ。3人中2人は希少かつ特殊な精霊の力を持っているし、残りの1人もまだ全力の姿を見たことがないくらいの強さを持っている。

 ……よくこんな兵器レベルの戦力を持った仲間が集まったな……と、ボーっと考え事をしながら歩いていると、隣から「……ッサ、メリッサ!」と私の名前を呼ぶ声がした。


 「……っへ!?何!?」

 思わず隣を見ると、そこには新しく私たちの仲間に加わった怪力少女……もとい、ナディアが私の隣を歩いていた。

 「何って……ちょっとボーっとしすぎだぞ、お前」

 強力な精霊使い、アデルが苦虫を嚙み潰したみたいな顔をしながら私を見てくる。

 「ご、ごめん……あの状況から全員帰還できたのが嬉しくてつい……」

 「まあアデルもそんな怒んないで。もうすぐ着くよ!


 ケルンセンに!」

 え、と思った次の瞬間、私は目の前の光景に圧倒された。


 元々ケルンセンはブルゴーニュやロレーヌと同じ国であり、その関係か建築物や街並み、雰囲気がやはり今まで訪れた二国と似ていると感じた。

 けれども何だろう。活気が全く違う。

 至る所を様々な髪色の、様々な服装の、老若男女問わず様々な人が歩いていて、みんな表情からこの国での生活を楽しんでいる感じが伝わってくる。

 あくまで私の予想でしかないけど、このケルンセンは、今まで訪れた国とは違って、人々が苦しむ仕組みが存在しないんだろう。

 国の治安というのは、来訪者を見る目でおおよその見当はつく。

 これまで訪れたブルゴーニュも、ロレーヌも、どちらも人々が来る苦しむような少々極端な政策を行ったせいなのか、その政策から外れた存在である私のことを、奇異を見るような目で見てきたからだ。

 ……あの視線は辛くはなかったけど、何十、何百も一斉に矢が刺さるみたいに見てこられたら、さすがの私でも胸が痛い。

 

 ……でもこの国は、そんな視線が一切感じない。

 通り過ぎる人は私のことを奇異の目で見たりなんてしない。それどころか、さっきすれ違うように目が合った老婆は、私のことを見てにっこりと微笑んできたし、街中で遊んでいた子どもたちの集団は、私たちを見て笑顔で手を振ってきた。それも全て、悪意も嘘も感じない。


 「この国はお前の故郷のアラクと同じで、基本的に中立の姿勢を取ってる。それに、ここは今までの国みたいに暴君が独裁政治を行ってるんじゃなくて、共和制で政治を行ってるから、治安も今までの国と比べればいいぜ」

 アデルからの情報になるほど、と納得する。

 でも治安の良さを実感すれば実感するほど、一つの違和感が膨らんでいく。


 あの時の赤い宝石は、確かにこのケルンセンを指していた。

 ということは、アリウムやアルベールのような存在が、この国に存在するということなのだろうか?

 けれどもさすがにあの宝石も、誰がそんな存在だということまで教えてくれる訳ではない上、ケルンセンはそれなりに広い。

 どこにその当事者が潜んでいるのか、検討すらつかない。

 

 うーんと頭を悩ませていると、視線の十数メートル先に人だかりができているのが見えた。

 「ん……?何、あの人だかり……?」

 「お姉ちゃん!知らないの!?」

 さっき私たちに手を振ってきた子どもたちが、いつの間にか私たちの近くに来ていた。


 


 

 「今日はね、セレーネがこの街に来るんだよ!ケルンセンの歌姫が!」

 


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