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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
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ガンナーだと思った?

 「おいおいどうしたぁ!さっきから逃げてばっかで全然攻撃してねぇじゃねぇか!」

 「……」

 ケントが水の精霊の力を使って軍人達をまとめて追い詰めていた時、アデルは宮殿の庭をぐるりと一周しながら軍人達の攻撃を避け続けていた。

 宮殿の柱の前、宮殿の壁、植えられた木、花壇の縁など、中庭の至る所に逃げては止まり、また逃げるという動作を繰り返していた。

 

 「お前、見た感じ拳銃使いのガンナーだよな!?」

 アデルに攻撃をしていた軍人の一人が剣を振り回しながらアデルにそう呼び掛ける。

 アデルの両手に持った白い二丁拳銃から見てそう判断したんだろう。

 「拳銃だったら弾の数に限りがあるし、その関係でここにいる俺達全員は倒せねぇ!何ならお前は背も低くて華奢なガキだ!そんなひょろい奴が俺達に勝てる訳ねぇだろ!」

 軍人が剣をアデルの頚元めがけて思いっきり振り払うが、アデルはそれを当たるよりも前にその場にしゃがんで避け、そのまま滑り込むように宮殿の柱の前へと移動した。

 

 「(くっそ……!一見ただの小柄なガキだが、小柄な分動きがすばしっこい……!しかもあいつ、武器は持ってやがるのに、どうして俺達を攻撃してこない……?)」

 軍人達が次はどうやって動こうかとアデルの動きをじっと待っていると、その次の瞬間、アデルはふっと笑い、さっきまで一度も開いていなかった口を開けた。

 「なあおっさん。さっき俺の事、拳銃使いのガンナーだって言ったよな?」

 「……はっ?」

 いきなり口を開いたかと思ったら出てきたのはさっき何となく言った話だった。こんな状況で何でそんな話が出てくるんだ。あと俺はまだ30代だからおっさんじゃないと心の中で軽く反論する。

 

 「……ガンナーなのに何で銃を使わねぇんだとか思ってそうだけど……





 お前ら気付いてねぇの?俺が至る所に罠仕掛けた事に」

 アデルのその一言に軍人達が中庭周辺を見渡すと、そこには至る所にバチバチと高い音を鳴らしながら青白く光り輝く光の塊のようなものがあった。

 光の塊があったのは、宮殿の柱の前、宮殿の壁、植えられた木、花壇の縁など、宮殿の至る所にあり、発生している場所を見て、軍人のうちの一人があっと気付く。

 「お前っ……!まさか……!」

 男が慌てふためきながらアデルの方を見ると、アデルは頭に着けていたゴーグルを目元に装着すると、二丁拳銃を合体させてライフルにし、植えられた木に向かって狙い撃ちしようとしているところだった。

 「気付いたか?俺はさっき逃げてたんじゃなくて、精霊力を至る所に溜め込んでたんだよ。



 お前らを一斉に戦闘不能にできるようにな!」

 アデルが引き金を引こうとしたその瞬間、「あいつに撃たせるな!」という声がどこからか響き、軍人のうちの一人がアデルに向かって持っていた斧を思いっきり振るう。

 さすがにアデルもこれは予想外だったのか、慌ててライフルを盾にして攻撃は防げたものの、華奢なアデルは大柄で力のある軍人の攻撃を食らって、空へと放り出されてしまった。

 「よくやった!これで落下してきたタイミングを狙え!」

 

 「……これで俺を止めたつもりかよ!」

 アデルの低くドスの利いた声が空で響くと、アデルは空に放り出されて安定しない体勢のままライフルを構えると、集中力を最大限まで高めて木の根元を狙って引き金を引いた。

 するとアデルの攻撃を受けた光の塊はそのまま宮殿の柱、宮殿の壁、花壇の縁など、至る所を線で繋ぐように青白い光の直線を描き、その光から発せられる強力な電撃によって、その場にいた軍人達は皆気絶した。


 アデルの作戦が成功した後、アデルはそのまま地面に落下しそうになったが、何故か水の塊のようなものに落ちた関係で、怪我一つ負わなかった。

 「(ん……?水……?)」 

 水はアデルを地面に優しく置くと、そのまま溶けるように形を崩し、生きた生き物のようにずるずると地面を這いながらプールへと戻って行った。

 「おぉーアデル。水も滴るなんとかじゃん」

 「……間に合わなかったら、俺が失敗したらどうするつもりだったんだよ。ケント」

 のんきに自分の元へやって来るケントに対し、アデルは水でびしょびしょになりながら睨む。

 「え?俺は絶対間に合うって自信しかなかったし、アデルだって意地でもこいつらをどうにかするつもりだったでしょ。違う?」

 「……いや、合ってる」

 「でしょ?それに、作戦は上手くいったよ。よくやったね。アデル」

 「……全く、飴と鞭の使い分けが上手い仲間だぜ」

 アデルは濡れた髪をかき上げながら、そのまま流れでケントと手と手を軽く鳴らした。

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