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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
143/215

いや何で?

 いや何で?ほんとに何で?

 「おいおいこいつ見ろよ、髪が糞みたいな色してるぜ、顔と身体は恵まれてるのによ~」

 

 時を遡る事数分前。

 私はケントとアデルと一緒に、これから倒すべき敵である総統についての話ナディアから聞いていた。

 総統って聞くと50代60代くらいのある程度歳を重ねたちょっと偉そうな男性が就いているイメージがあったけど、この総統は20代と非常に若く、大勢の人をまとめあげるカリスマ性と危険生物ともやり合える武力、そして何より、この国でも有数の美貌の持ち主という、何ともイメージとは180度正反対の特徴を教えてもらった。

 若くて美しくて油断できない力を持ったこの国の総統。何ていう名前なんだろうか。

 そして何よりも……。

 

 ナディアの口からは出てこなかったけれど、恐らくこの総統がこの国の女性の価値観を苦しいものにした張本人だ。この国の女性の美の基準を変えてしまった。それはつまり、ナディアがこの国で迫害を受ける原因を作った人物でもある。

 一体何がどうして、そんな決まりを作ってしまったんだろうか?

 頭の中でいろいろと考えていると、とつぜん横からぐいっと腕を引っ張られて、そのまま建物と建物の間の……どこかで経験した事のある、裏路地へと連れ込まれたのだ。


 「なあお前、何で顔と身体は恵まれてるくせに髪色は変えねーの?」

 「……」

 私を裏路地へと拉致したのは、20代前半くらいの、私よりも少し年上くらいの男性数名だった。

 ……私の髪色を糞みたいな色とか言って気に食わないのなら、この町には綺麗な女性がたくさんいて選り取り見取りなんだから、こんな強引なやり方じゃなくてもっと正攻法で口説いて遊べば良いのに……。

 というか、もし仮に私が狙いやすそうだから狙ったとしても、本当に気持ち悪い存在にはこんな事はしないだろう。

 ……この国、女性の美の基準は決まっているのに、そんな基準から外れた存在をそんなつもりはなくてもこうやって絡むなんて、実は男性でもこの価値観を窮屈に感じてる人がちらほらといるのではないか?

 

 そして何より、何だ。この既視感のある今の状況は。1回だけに限らずもう数回くらいは経験してるんだけど……。


 何ともくだらない事をぼーっと考えていると、ほとんど反応がないことが気に食わなかった男性達が機嫌を悪くし、「なあ、こっち見ろって」と手で顎を掴んで強引に上げてきた。

 ……あれ、これ確か、俗に言う「顎クイ」ってやつじゃない?クラスメイトの女子達が彼氏や好きな人にしてもらいたいと話していたような気がする。故郷から遠く離れた国で顎クイをされるだなんて、人生何が起こるかわからないなーと、どこまでも馬鹿な事を考えていると、突然何かが割れるような衝撃音が鳴り、男性達が目線から消えた。


 「えっ?」

 消えた、というより、突然できた地面の亀裂にはまってしまった……のだが、そんな都合の良い亀裂が突然できるはずもない。

 亀裂が発生した先を見ると、そこには斧を地面にめり込ませたピンク髪のツインテールの女の子がいた。

 ナディアだ。ナディアが斧を地面に叩きつけて地面に亀裂を作り、男性達に大きな傷を付けずに私から距離を置かせたのだ。


 「メリッサーーーーー!!!!!大丈夫だった!?」

 いつも声が大きめのナディアだけど、私を心配して駆けつけてくれたのか、いつも以上に大きな声で私の無事を確認する。

 「あ、うん!大丈夫!」

 「良かったあああああ!もし何かされてたら私軽く精神病んでたよーーーー!!!」

 精神を病むって、なかなか大袈裟だな。でも、それくらい心配してくれてたなんて、悪い気はしない、というか普通に嬉しい。


 「何すんだよ!幼児向けのおもちゃのドレスの色みたいな女!」

 男性達が亀裂から脱出しようともがきながらナディアに向かって叫ぶが、男性達の体形に合った亀裂だったのか、なかなか脱出できない。

 「メリッサ、行こ!多分私達、この町にいるだけでいろんな人から狙われるから、急いで目的地に行こう!」

 そう言うとナディアは私の手を取り、光の見える方向、裏路地の出口へと走り出した。

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