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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第1章 アラク
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お兄さんとの出会い⑤

 「…っていう事が、過去にありましたね」

 我ながら話が長くなってしまった。

 「…それさ、周りの大人に話したの?」

 「バイト先の店長には話しましたよ。でも『君はしっかりしてるから、1人でも大丈夫でしょ?』とか『君の接し方に問題があったんじゃないの?』しか返ってこないです」

 「……」

 お兄さんからの返事はなかった。でもその代わり、お兄さんは私の顔を見ながら睨んでいた。

 もちろん、私個人に対して向けられているんじゃなくて、今の話に対してこんな顔をしているのは、私にも分かった。


 「…君がどれだけ怖い目に遭って」

 「…へっ?」

 「周りの大人にちゃんと話を聴いてもらえなくて、勝手に君のせいにされて、君は安心できたの?



 君はきっと傷付いたのに」

 「……」

 

 お兄さんの静かだけど小さな怒りの入った話し方に、私は思わず黙りこんだ。話し方もそうだけど、内容が特に驚いた。


 そうだ、あの時私は、すごく傷付いたんだ。

 なのにみんな私の見た目とか、表面上の振る舞いばかり見て、私の心なんて全然見てくれなかった。

 「馬鹿馬鹿しい」という気持ちのもっと奥に、「悲しい」そして「誰でも良いから気付いて」という気持ちがあった。

 そんな気持ちを一瞬で見抜いたお兄さんに、ものすごく驚いた。


 「…あっ、ここまでくれば、もう大丈夫だと思います」

 学生寮近くの公園に着き、お兄さんに呼びかける。


 …正直すごく、このお兄さんから離れたかった。

 …私の、誰も見てくれなかった心を覗かれて、心を曝けてしまいそうで、少し怖かったから。

 「そう?それじゃあまたね。おやすみ。」

 そう言うとお兄さんは手を振って去っていった。


 …不思議な人だったな。


 …あれ、私、あの人の名前聞いてない…。

 …まあ、もう会う事もないだろうし、いいか。

 心の中で納得して、私は学生寮に入っていった。

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