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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
139/215

通過

 時を同じくして、メリッサ、アデル、ナディアの3人は、ケントと町長との対面が終わるまでそこで待っていろという関所の門番の指示を受け、関所近くでその辺をウロウロしたり、暇なのであっち向いてホイをしたり、ナディアが私のポニーテールに編み込みをしてくれたりと適当に時間を潰していたが、あのケントなら大丈夫だろうという思いと同時に、金髪色白の美女が大好きだという初老の町長が相手という事もあり、変な事をされていないだろうかという心配の気持ちが同時に存在していた。


 「……なんかさ、長くない?」

 主語が完全に抜けてしまっている台詞だが、これだけでナディアの伝えたい事は十分に分かった。

 「……たかが面会するだけでしょ?それなのに何でこんな帰って来るの遅いの?」 

 町のブティックやアクセサリー店で揃えた服やアクセサリーを身に包み、もう100人中150人は女性だと勘違いしそうな姿に変身したケントが、嫌そうなオーラを完全に隠しきれていなかったが、笑顔で「じゃあ、行ってくるねー」と私達と一旦別れてから15分近くが経つ。

 学校の担任の先生と年数回程行う面談でも、10分は使わない。しかも今回は町長とちょっとした確認の為の面会だ。早ければ1分くらいで終わるだろうに。

 ……それなのに帰ってこないのだ。ここまできたら、ケントの身に何かあったのかもしれないとつい思ってしまう。


 「確かにおっせーよな……」

 「……うん。ケントなら強いし、何かあっても撃退できるだろうって、勝手に思ってた、けど……」

 うーんと唸っていたその時、関所の奥の方、ケントと町長が向かっていった先からガタガタと奇妙な音が鳴ったのが聞こえて、バッと勢いよく3人で顔を合わせると、3人同時に確信した。

 ケントに何かあったんだ!と。

 慌てて3人で武器を構え、門番を強行突破してケントの元へ向かおうとしたその時、関所の奥の方から白いフレアワンピースがふわりと舞って、私達の元へと近付いてきた。


 「……」

 「え、あれ?ケント……」

 「ケントだな……」

 ケントは纏めてあった髪をほどきながら私達の元へやって来ると、私達と門番に笑顔で両手でコの字を組み合わせて丸印を作った。

 ……これは恐らく、許可が下りた、という事だろうか?

 ケントは外見は女性的だが、声は完全に男性のそのものだ。喋ると一発で男性だとバレてしまうので、バレないようにジェスチャーで伝えてきたんだろう。

 ケントの動きを見て門番は顔を赤らめながら「よしっ!通っていいぞ!」と言ったので、私の予想は当たっていた。

 武器をしまって遠慮なく通らせてもらう事にするが、それにしても誰もケントが男性だって事に気付かないな……。

 門番の男性のケントを見る目が完全に女性を見る目だった。


 関所を通過し、しばらく歩いた所でしばらく口を開いていなかったケントが初めて口を開くと、「ナディア、化粧落としとかって持ってる?」と聞いてきた。

 「え?うん持ってるよ。何で?」

 「早くこの格好やめたいから」

 ……ケントが女装に対して嫌がっていたのは分かっていたけど、まさかここまで嫌だったとは……。

 「分かった。出すからちょっと待っててね」

 「うん。あと俺の服って誰が持ってる?」

 「あ、私持ってるよ」

 私は背負っていたリュックの中からケントの着替えを取り出そうとした。

 「ありがとう。あそこに川があるからさ、そこで着替えとか化粧落としとかしたいんだけど、ちょっとメリッサ一緒に来てもらっていい?」

 「うん。分かった……って、何で?」

 思わずケントの服を取り出す動作を止めた。たかが着替えと化粧落としだけじゃないか。ケント一人でも十分なはずなのに。

 「前みたいに突然危険生物が現れたら危ないでしょ。そういう時は2人以上で行動しておいた方が良い」

 ……うん。なるほど?まあ別に嫌ではないし、そうするか。


 こうして私達は2人1組で一旦別れ、別行動になった。



 そういえば、さっき関所を通過してあの崖と崖を繋ぐ橋を渡る前(結構怖かったな……)、崖付近に何か靴……それも初老の男性くらいが履いてそうな靴があったけど……。

 まさか転落事故か、それとも殺人があったんだろうか?

 一瞬だけ思考を巡らせたがすぐにやめてしまい、私はケントと一緒に川へと向かった。

 

 

 

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