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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
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意味のわからない発言

 「そーいやさ」

 馬車の中で4人で会話をしていたある時、アデルがふいに話題を切り替えた。

 「メリッサっていつもそのスカート履いてるけどさ……スカートってさ、あんな激しく動いても大丈夫なのか?」

 「大丈夫か、とは?」

 ケントがアデルに補足を要求する。

 「……いつもあんな激しく動いて、下が見えないのかって事だよ」

 何故か私から視線を逸らしながら、いつものアデルらしくない、聞き取れるか聞き取れないからくらいの小さな声でそう呟く。

 「あぁー。それなら大丈夫。だってこれ、キュロットだから」

 「……は?キュロット?」

 「うん、キュロット」

 そう言うと私は、キャロットの裾を持って左右にひらひらとし、スカートではない事を視覚情報で伝える。


 「私の高校の制服、昔は普通のスカートだったんだけど、風の強い日とか男子の悪ふざけとかでめくれる事が多かったらしくて。5、6年くらい前からキュロットに変更したんだって。これならめくれる心配もないからって」

 「へ、へえ……?」

 おしゃれに疎い為か、よく分からない世界の話に若干の戸惑いを見せるアデル。勉強に関する事なら完璧と言って良いくらい何でもできるのに、こういった話で見せる顔はやっぱり年相応だ。

 「てゆーか、話題変えたのかと思ったらほんとにどこ見てんの!?変態じゃん!」

 ナディアがアデルを信じられないと言わんばかりの若干怒った顔で見る。

 「は!?変態って!どこが変態なんだよ!」

 「気にする所が完全に変態だし、さっき指摘した時に小声だったのも変態!」

 「こーゆー話は指摘しづらいだろ!変態変態変態連呼しやがって!」

 「ちょ、ちょっと……」

 さっきまで楽しく会話ができていたので完全に想定外だったが、馬車の中でも言い合いになる2人だった。


 「あっははっ。アデル、絶賛17歳じゃん」

 ケントがアデルを揶揄うように奇妙なネーミングをつけて楽しそうに笑う。

 ……元はといえば、アデルがナディアに怒られるきっけになった質問をしたのは、ケントだったんだけど。

 ケントもケントで人をいじったり意のままにするのが上手いな、と思っていると、荷物のリュックの中で何かがブブッと鳴った。

 何かと思ってリュックのチャックを開けると、スマホに誰かから通知が来ていた。

 ロックを解除して内容を確認すると、クラスメイト数人からどうして何日も学校に来ていないのかという内容だった。

 そういえば、旅に出てから何日も学校に行けていない。

 学校を欠席する際は私が住んでいる学生寮の寮母さんがしてくれるのだが、その寮母さんが欠席理由を把握できていないのだから、そりゃあ学校にも連絡がいかないだろう。恐らく学校は今無断欠席状態だろう。

 島から出るという事は、学校にも行かないという事を指しているのに、何でそんな初歩的な事に気付かなかったんだろう。

 アプリを開いて内容を確認すると、何で学校に来ていないのかという事と、今回の社会の課題が難しくて量が多いので、やったものを写真で送って欲しいというものだった。


 私はその内容を見た後、リュックの中に叩きつけるようにスマホをしまい、その叩きつける音の大きさに驚いたのか、私以外の3人が何だ何だと焦った顔で私を見る。

 ……こんなに長い間休んでるのに、心配どころか相変わらず私に課題を見せてとせがむなんて、人って変わらない人は本当に変わらないんだと思った。

 

 「……お、おい…。何でそんな怒ってんだよ」

 「……別に、怒ってなんてない。ただ学校の子から嫌な連絡がきただけ」

 車窓の景色を眺めながらそう呟く私に、3人が少し心配そうな顔で私を見てくる。

 ……こんな顔、友達にはさせたくなかったな。

 本当に嫌な人というのは、相手だけじゃなくて相手と深い繋がりを持つ誰かにも悪影響を及ぼす。私のクラスメイト達が、お手本レベルのそれだと思った。

 

 「そういえば皆さんは、目的地へ着いたら何をされるんですか?」

 御者席からジョセフが私達に大きな声で問いかける。

 「あー。俺達は目的地よりも先の、ロレーヌの首都に行きたいんだけどさ……」

 「先は進む為の金髪美女がいない」という言葉は胃へと飲み込んで、アデルらしくない少し弱気な口調でそう返す。

 「ほう!首都に!首都は行くには金髪の美しい方が必要ですが、あなた達ならきっと通過できますよ」

 ……通過できる?この中に金髪の美人はいないのに?

 ジョセフの意味の分からない発言に疑問を抱き、抱く頃にはさっきのクラスメイト達への怒りも収まっていた。

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