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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
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身近すぎて気付かない強大な力

 ケントが服を着た事を確認すると、私達は森を後にし、あの危険生物と戦った辺りへ戻った。

 戻った先にはアデルとナディアが岩場に座りながら私達を待ってくれていて、少し待たせてしまったかなと申し訳ない気持ちになった。

 

 「アデル、ナディア!ごめんね、待たせちゃった?」

 「ううん。私達もちょっと休んでたし、全然大丈夫!」

 さっきまで巨大な危険生物と戦っていた者とは思えない、天真爛漫な笑顔を浮かべるナディア。

 だがその明るい笑顔以上に、気になるものがあった。

 「……あれ?さっきの蜘蛛は?」

 さっきまで相手にしていたあの一軒家くらいの大きさのある蜘蛛が、跡形もなく消えていたのである。

 辺りを見渡してもいないし、仮に運んだとしても、小柄なアデルとナディアでは無理だ。


 「あー。それならこいつが持ち前の怪力で、肉を包丁で切るみたいに6等分にして、俺が炎の精霊の力で燃やして灰にした。あのまま放置しても通行人の邪魔になるだろうし」

 「だーかーら!怪力っていう言い方やめて!」

 「……」

 いつもみたいな高校生の口喧嘩を繰り広げそうになっている一方で、なかなかとんでもない事をやった2人である。

 よくよく考えれば、4人中2人が全精霊使いの0.01%に満たない、希少な精霊の力を持つ者だ。

 そんな遭遇するだけでもレアな2人と、友達になって一緒に冒険するという、もっとレアな事をしているのだという事実に、私は今更ながら実感した。

 「へえ、灰にしたの?やっぱり2人は凄いねぇ」

 「……」

 ……そしてそんな強力すぎる力を前にいつも通りのテンションをキープするケントは、ある意味でもっと凄いのかもしれない。

 

 

 そんなこんなで旅を再開すると、進んだ先でまさかの人物がいた。

 さっきの危険生物と戦った際、私が間一髪で助けたあの中年男性が、馬車を停めて待機していたのである。

 「あれっ、あの人さっきメリッサが助けた……」

 「あっ!みなさん!よくご無事で……!」

 男性は私達の姿を確認すると、飼い主を見つけた犬みたいな勢いで私達の近くに駆け寄ってくる。

 「さっきは助けていただいて本当にありがとうございます!私は行商人で、これからシャルセーヌの町へ向かう道中だったのですが、運悪くあの危険生物に遭遇してしまって……。戦いの心得もないですし、ここで死ぬのかと思った時にあなた方が助けてくださって……。本当になんとお礼を言えば良いのか……」

 男性が早口で私達にお礼を伝えてくる。至って当然の事をしたまでだけど、こうやってお礼を伝えられるのは素直に嬉しい。

 

 「ところでみなさんは、恐らくですが旅の方ですよね?一体どちらへ向かわれるのですか?」

 「あー。俺達も一応、シャルセーヌの町に向かってんだけど……」

 「何と!でしたら丁度良い!私の馬車に乗って行って下さい!ここからシャルセーヌまではかなり距離がありますし、歩きで行けば3日くらいかかる距離も、馬車なら1日で到着できます」

  ……1日で!これはなかなか、いやかなり良い誘いなんじゃないか?

 「……どうする?みんな。私はいいと思うけど……」

 「いいんじゃねぇの?目的地に早く着けるなら、そんな良い話はないだろうし」

 「そうだね。ここはお言葉に甘えさせてもらおう」

 「おじさんありがとう!また何か襲ってきても、私達が絶対守るからね!」

 

 こうして旅の途中で出会った、ジョセフという行商人の計らいにより、私達は馬車に乗せてもらって、シャルセーヌの町に向かえる事になった。

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