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コンフロント・マイノリティ  作者: 珊瑚菜月
第3章 花の都・ロレーヌ
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心臓に悪い

 アデルに向かうよう指示された森の川で、川辺に座って脚を水に浸けながら、唾液で汚れた脚と膝下くらいの長さの学校の靴下を洗っていく。

 「冷たっ。でもいい感じに身体がひんやりする~」

 川は流れの強さはほとんど強くはないが、私の脚が膝下まで浸かるくらいの深さがあった。

 脚を洗いながら、辺りを確認する。

 川の周辺はまばらな大きさの石が落ちていて、中には楕円形かつツルツルとした石もあったので、ちょっと石切りをしたい気持ちにもなったが、18歳もなって石切りをしたいなんて何かちょっと子どもっぽいかなと思い、すぐにやめておこうと気持ちを切り替えた。


 アデルも精霊力を使い過ぎて軽いオーバーヒート状態だったので、少しは休まないと動けないだろう。

 アデルの傍にはナディアがいてくれているので、何かあってもどうにかなるだろう。

 靴下を太陽の光に当てながら乾くのを待っていると、私はある事に気が付いた。

 「(あれ……?そういえばケントは……?)」

 一緒に森まで来た事はもちろん覚えている。それでその後「俺全身汚れてるから、ちょっと向こうで洗ってくる」って言って……。

 その向こうって一体どこだ?と思っていると、背後から「メリッサー」とケントの声がしたので、あ、とりあえずいきなり姿を消したとかじゃなくて良かった、と思って後ろを振り返ると、私は目の前の光景に強烈に動揺して、「わっ……!ちょ……!?」と素っ頓狂な声を上げ、衝撃のあまり川に身体を落としそうになった。


 「え、何そんな動揺してるの」

 何せ、ケントが上半身裸の状態、かつ身体を水に濡らした状態で私の目の前にしゃがみ込んでいたからだ。

 「~~~っ!動揺しない訳ないでしょ!せめて服着てよ!てか、服はどうしたの!?」

 目を両手の手の平で隠しながら指摘する。

 「服?近くで太陽の光に当てて乾かしてる」

 そう言いながら、ケントは私から見て右方向に地面に置かれた白いシャツを指差した。

 

 「というか、何で俺の上半身裸でそんな動揺してるの。メリッサだって、男の裸の1人や2人見た事……」

 「ない!あるはあるけど、こんな至近距離で見た事ないから!」

 「え。そうなの?じゃあメリッサて、男と付き合った事……」

 「それもない!」

 こんな状況で何で異性との交際経験がない事を告白しているんだろう。

 ケントが一体どんな表情をしているのか少し気になって、薬指と人差し指の隙間からケントを確認する。

 ケントはケントのままで、いつもと変わらない明るくて穏やかな表情を浮かべている。が、それと同時に、ケントの上半身の姿も目に入る。

 女の子でもこんな色の子はいないんじゃないかと思うくらいに雪みたいな白い肌に、一体何個割れてるんだと言わんばかりの均衡のとれた腹筋と筋肉が目に入ってきて、どんどん顔に熱が集まって来るのを感じる。

 ケントが中性的で綺麗な顔立ちをしている為か、顔と身体のアンバランスさがすごいし、こんなの男性の裸を見慣れているような……所謂そういう経験が豊富な人でも、こんなの見たら絶対に私と同じ反応になるし、心臓に悪い。それくらいに男性的な要素が強い体つきをしていた。


 ……ああもう、こんな分析をしている自分にも恥ずかしくなってきた。小学生時代、体育の授業を終えて教室へと戻ったら男子達がまだ着替えの途中で、「メリッサのえっちー!」と言われたのを思い出した。

 それ以降私は、無意識の内に異性の裸や性的なものに少しだけ苦手意識を感じるようになったし、クラスメイトの女の子達がほぼ全員交際経験があったり、何ならそういう経験をした事もあるという子もいる中で、私は18歳になってもまだ、その両方を経験した事がなかった。

 

 ……いや、待って。後者の方は……未遂だし、結局やってもないけど確か……。

 

 「そっか。揶揄ってごめんね、メリッサ。じゃあ俺、メリッサの視界に入らないようにするから、メリッサは前向いときなよ」

 考え込んでいた私にケントがそう呼びかけてきた事で意識が現実に引き戻され、ケントは私に背中を向けるように座り、私も身体を前へ向き直し、お互いに背中合わせのように座り直した。

 


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