見た事のない危険生物
「うわああああ!た、助けてぇ!」
声がした方向へ急いで向かうと、そこには何と2匹の馬を先頭に、茶色い木製の四輪の車輪と黒くて四角い箱みたいな形の……馬車が停まっていた。
……馬車ってこの時代に見れるんだ!もう何百年も前の時代のものだと思ってた!
そんな私のアンティークなものに対する感動は、馬車の手綱を握っていた中年男性の怯える表情と、男性の目の前にいた……蜘蛛……だけど普通の蜘蛛とは比べ物にならないほどの巨大な蜘蛛によって、私はもちろん、私以外の3人を戦闘態勢にさせた。
私達の目の前にいるのは、見た目は蜘蛛だが大きさが明らかに普通の蜘蛛とは異なり、下手したら一軒家くらいの大きさはあるんじゃないかという体長と、赤紫の鋭い爪を持った八本の足、黒色の胴体に赤い目という、虫嫌いが見たら気を失うんじゃないかというくらいのおぞましさと気味の悪さを感じさせる蜘蛛だった。
見た目の異様さとありえない程の大きさから、これも危険生物の1つなんだろうとすぐに理解した。
私はさっきの感動を一瞬で払拭すると、布から高速で刀を取り出して刀身を抜き、アデルも腰から二丁拳銃を、ナディアも背中に背負っていた箱から斧を取り出し、構える。
蜘蛛が右足の爪を馬車に向けて刺そうとしてきたので、私は男性が危ないと地面を蹴り、そのままジャンプして蜘蛛の足を一刀両断にした。
斬りつけた勢いで空中で一回転し、そのまま着地して馬車に乗っていた男性に「大丈夫ですか!?」と声をかけると、男性は泣きそうな顔で「は、はい……!ありがとうございます!」と言ってきた。
「おっさん!ここは俺達がどうにかするから、おっさんはここから離れた安全な所へ逃げろ!」
アデルからの呼びかけに慌ててはいっと返事をすると、男性は馬を走らせて道の先へ進んで行った。
男性が避難した事に安堵した次の瞬間、私は衝撃的なものを見てしまった。
私が切り落とした足から出てきた白い液体……恐らく血液が、地面にぼとりと落ちた瞬間にシュウウウ……と炭酸みたいな音を立てながら、地面に生えていた草や花を溶かしてしまったのである。
「え……?溶け……?」
「あー!?クッソッ!めんどくせぇ敵と遭遇した!」
アデルが銃を構えながら叫ぶ。
「お前ら!こいつは恐らく、身体に強力な毒性を持つ危険生物だよ!さっきみたいな血液にも、植物や人の肌みたいなものを溶かす毒性があるから、ぜってえ血液や体液を浴びるなよ!」
もしもさっきの血液を浴びていたら、私は一体どうなっていたんだろうか……?
そんな恐怖に愕然としていると、何と斬り落とした腕がすぐに再生してしまい、再び足を使って私達に攻撃しようとしてきた。
慌てて刀で弾くと、次の瞬間に別の足が2本同時に襲ってきて、2本はぎりぎり弾けてもさすがに3本同時には弾けない……!と焦ったその時、背後からバタフライナイフが飛んできて、蜘蛛の足のうち1本を刺して動きを止め、私はぎりぎり2本の足を弾くことができた。
このバタフライナイフは……と思って後ろを向くと、ケントが両手にバタフライナイフを構えていた。
「こいつ、多分だけど一度に6本の足を使って攻撃できるんだね。だとしたら1本は俺に任せてよ。メリッサはあとの2本をお願い」
分かった……とは思ったけど、じゃああとの3本はどうなるの?と思った瞬間、突然地面が割れる音がして、何だと思ったら、何とナディアがあの怪力を使って反対側の足3本を、斧を思いっきり振り落とした勢いで全て切り落としてしまった。
勢いが強すぎたのか、地面も振り落としたフォームと同じ形で割れている。
「こっちは私に任せて!メリッサとケントはそっちをお願い!」
まじか……と思ったが、これで蜘蛛の足の動きを封じる事ができる。その間に私はアデルに目配せし、アデルは「分かってる」という感じのアイコンタクトをして頭につけていたゴーグルを装着し、拳銃を合体させて狙撃状態にして、そのまま雷の精霊の力を使って蜘蛛の眉間を撃ち抜いた。
やった……!と思ったが次の瞬間、私はそんな気持ちを捨てた。
何せ、蜘蛛が全く倒れなかったのである。




