変な目で見てこない同性
「おお……」
浴場の扉を開けると温かい湯気が全身に直撃して、その優しく肌を刺す感覚に小さく声が漏れる。
あの後私達は町を後にして、町から数km歩いた所にある天使の寝床にやって来た。
そこでお風呂に入り、みんなで夕飯を食べようという話になったので、こうして浴場まで来たのだ。
「えーと、まずは頭と身体を洗って」
「メリッサ……めっっっちゃくちゃスタイル良いね!?」
「わっ!?」
後ろから声をかけてきたナディアに驚き、両手で身体を隠していたタオルを落としそうになる。
「身長が高くてスレンダーなのは気付いてたけど……まさかここまでスタイル良いとは思わなかったよ!」
キラキラと目を輝かせながら私を見てくるナディアに若干たじたじになる。
「ねね!メリッサって身長は何cmあるの?」
「えー……と、167くらいじゃなかったかな……?」
「答え辛かったら答えなくて大丈夫だけど、体重は?」
「体重……は、一番最近計った時で54じゃなかったかな……」
「えーっ!そのスタイルでその身長体重って事は、筋肉もしっかり付いてるって事だよね!?すごい!私が小柄っていうのもあるけど、メリッサのスタイル、女の子だったら絶対憧れる体形だよ!ウエストが細くて腹筋も引き締まって何なら11字なのに、脚は長くて引き締まってる!女の子の理想を詰め込んだスタイルだよ!」
「あ、ありがとう……?」
突然褒められたので動揺する。何せ、同年代の学校の子達は私の体形に対して良い感情を向けてこなかったからだ。
男子は私の細いけど胸は割とある部分ばかり見て、でも体重を聞けば「50超えてるとかデブじゃん」と言ってきて、女子は「男子を誘惑してる」とか「社長の愛人」なんてろくでもないあだ名を付けてくるので。
……でも、ナディアがこうして私を褒める目には、嘘もお世辞もなくて、本当に、心からそう思って言ってるんだという事が伝わってきた。
「どうやったらこんなスタイルキープできるの!?やってる事があれば真似してみたい!」
ナディアが質問してきたので、私はいつも剣のトレーニングの一環としてやっている筋トレメニューを伝える事にした。
「バービージャンプを200回」
「え」
「上体起こしを200回と、ジャンピングジャックを200回、あとスクワットを200回と、プランク3分を5セット。あとは……」
「メリッサ。ありがとう。もう大丈夫。メリッサがあんなにスタイル良い理由が十分なくらい分かったよ。普通の人には絶対真似できない領域だわ。そのメニュー」
「……?」
真似できない?私これを毎日やってたんだけど……。
まあ、人には基準があって当然だよね、とサクッと結論付けておいた。




