お兄さんとの出会い③
「…誰だって悪い事はやってしまうものなんだから、そういう時は非を認めて反省すればそれで良いのに、世の中認めないで過ちを繰り返して、それで結局は人から見捨てられるような人がいるもんだ」
男性が逃げた方に向かって、お兄さんは冷たい笑みを浮かべながら低い声でそう言った。
…美人の怒った顔は怖いと聞くけれど、これは本当にゾッとする。
「あぁ、それより」
表情をぱっと切り替え、お兄さんは私に目線を向けた。
「さっきは大丈夫だった?いきなり触ってごめんね」
触ってごめんね、とは、あの男性から離す時に肩に触れた時だろう。助けてくれたのにその部分を気にするなんて、優しい人だなと思った。
「あっ、はい、大丈夫です。助けてくれて、本当にありがとうございます。」
私は気を取り直してお兄さんに軽くお辞儀をした。
「ううん、君が無事なら良かった」
明るい笑顔を浮かべながらお兄さんは言った。
「そうだ、またあの変な人に絡まれたりしたら大変だし、途中まで送っていこうか?」
「えっ」
突然の申し出に困惑した。でも助けてくれたのに大丈夫ですとも言えないし、またあの人に絡まれるかもしれないのも確かに怖い。それに…
「…じゃあ…お言葉に甘えて…」
「うん、じゃあ、君の家の近くまで送るよ」
この人はそんな事してこない人だって、直感だけどそんな気がした。




