やっぱり変わった男の子 Side:ナディア
翌朝。
相変わらずいつもと同じようにベッドに潜ってぼーっとしていると、ベッドの真横にある窓をコンコンと外側からノックする音がした。
お父さんが仕事の忘れ物とかしたのかな?と、あまり深く考えないで欠伸をしながら窓を開けると、私は「ひえっ…!」と小さく声を上げてベッドに尻餅をついた。何せそこにいたのはお父さんではなく…。
「わわっ!大丈夫!?いきなりごめんね!」
昨日私が助けて、私の事を綺麗だなんて言ってきたあの男の子。名前は確か……ルカだったっけ。その子がいたからだ。
いきなり家にやって来て、私がこんな反応を取った事がさすがに申し訳ないとは分かっていたのか、心配そうな顔で私に謝罪してくる。
「あの後お父さんと帰って行く君を少し尾行して、君の家がここだって知ったんだ。だから…」
そこまで言うと私はバンッと乱暴に窓を閉め、同じ勢いでカーテンも閉めた。
……何で、私の事を見てくれる人がいるって思ったんだろう。やっぱりこの子も、見方は多少違えど私の事を変な目で見てたんだ。あの後私を尾行するなんて正気じゃない。
正直、私の事をいじめてくる人はいても、家まで押しかけてくる人は今までいなかったので、この子はそういう意味でも面倒臭いタイプだなと思った。
その後もルカの呼びかけを全て無視し、呼びかけがなくなった所で一旦安心した……が。安心したのはこの時だけだった。
何せ、その翌日も、さらに翌日も。ルカは私の家に来たからだ。
やり方はあの時と変わらず、私の部屋の窓をノックしてやって来るスタイル。
どれだけ冷淡に追い返しても翌日には必ず来るので、私は呆れと面倒な気持ちの方が上回って、ルカの訪問が1ヶ月続いたある日、私は諦めである事をする事にした。
朝。いつも通りベッドに潜っていると、窓をコンコンとノックする音が聞こえた。
窓を開けると、そこにはいつも通りルカが立っていて、私に挨拶をして話しかけてくる。
「やあ、おはよう。今日は」
「用件は何?」
自分でも驚く程冷たい声が出た。自分が警戒している相手と真正面から接する時は、人は本来の性格も忘れてしまう程冷たくなるのだなと思った。
ある事……もう無視するのも面倒だなと思って、思い切ってこの子と話してみようというものだった。
用件が例えどんな内容でも、叶えればもうこの子は来なくなるだろう。そう思って今日は無視しなかった。
するとルカは一瞬驚いた顔をして、私がやっと口をきいてくれたのが嬉しかったのか、それとも目的を話せるのが嬉しかったのか、うきうきした笑顔を浮かばせながら、私にこう聞いてきた。
「君の……髪をスタイリングさせて欲しいんだ」




