変な見た目の女の子 Side:ナディア
「おい変な髪!マカロン買ってこいよ〜」
「キモい目〜その目で見てくんなよ!」
「お前の母ちゃん髪の色変えさせてくれねぇんだって!?お前拾われた子なんじゃね〜の〜」
「……」
ピンク色の髪に濃い桃色の瞳。そんな国の女性の美の価値観から大きく外れた小さな女の子を、同年代の男の子達が囲い、見た目や女の子の家族も馬鹿にする発言で女の子を傷付ける。
当時8歳だった私は、外に植えてある花に水をやろうと外に出ていた時、近くを通りかかった近所に住む同年代の男の子達に突然囲まれ、そんな言葉を吐かれた。
この国では、色素の薄い髪や瞳、白い肌を持った、言わば儚げな雰囲気の人が美人の象徴と言われいるのだが、そんな基準から外れる人は美しくないとされ、美に厳しいこの花の都では差別の対象、それも、軍に報告しようと無視されるという有様だ。
そして、そんな基準とは正反対の見た目をした私も、差別やいじめの対象だった。
そして何より私が嫌だったのは…。
「おっ、お前ら何やってるんだー?」
気さくな声が正面から聞こえて、俯かせていた顔を上げるとこの男の子達の中の誰かのお父さんが、私達の元へ近づいてきた。
「お父さん!こいつが変な髪だから、懲らしめてたんだ!」
「そうかそうか!それは確かに懲らしめないとだな!」
男性は私の近くへ来るといきなり髪の毛を引っ張り、「何でこの家の人は髪色を変えさせないんだろーなー。俺は色素の薄い髪が好みなのに」と私の髪の毛を舐め回すように見ながら言った。
大人という子どもを守る為の存在が子どもをいじめ、しかも当時8歳の私でも分かる、差別対象に対する性的な視線に私は堪忍袋の尾が切れた。
「…んっ!」
私は男性に半泣きになりながら足にデコピンを食らわせると、男性は数十メートル先まで吹っ飛ばされた。
「わっ!お父さん!」
「何すんだよお前!」
男の子達が私に怒りの目線を投げかけながら私を責める。
そうなのだ。私は生まれつき「力の精霊」という希少かつ特殊な精霊の力を持っていて、さっきみたいに自分の何倍もある成人男性をデコピンで遠くまで吹っ飛ばすのはそうだし、丸太を数本担いだり、鉄板を素手で破壊したり、馬車を自力で押したりなんて大人でも出来ない事が普通にできるのだ。
力作業をする上ではもってこいな力…けれども、この国は女性が男性よりも強くあってはいけないという価値観もあって、だからか私の外見の事もあってか、私は周りにいる人全てから忌み嫌われていた。
「お前は黙って俺達に従ってればいいんだ」
そこまで言って私が男の子の腕を掴もうとすると、男の子は怯えたように後ろへ下がって、そのまま「覚えてろよ!」と捨て台詞を吐いて逃げていった。
人をいじめる時は調子が良いのに、逆の立場になるととことん弱腰だ。
溜め息を吐きながら家へ戻る。
…花の水やり、もう3日は落ち着いて出来てないな。




