助けるつもりが…
「へっ?」
こんな反応しか出なかった。
いや別に、美しくないと言われたのがショックだった訳じゃない。元々学校でも可愛くないとか、中の下の顔とか言われてきたから。美人と有名だった母親とは異なり、外見には昔から自信がない。
状況に焦り過ぎてよく見ていなかったが、子どもは男の子で、金髪の丸い、所謂ボブカットをしている。
「この国で…。美しくない女の人は雑草と同じくらい価値がないってパパが…。だからそんな人いなくなれば、みんな喜ぶんじゃないかと思って…」
「ふぅん…?とりあえず、君が単なる好き嫌いでやった訳じゃないって事は分かったよ」
ケントは手首を離して男の子を解放した。
「とりあえず、このお姉さんに謝って。それで何もしなければ、君は見逃すよ」
男の子は泣きそうな顔をしながら「ごめんなさい…」と言って、とぼとぼと歩いて行った。
「メリッサ、アデル。とりあえずこの町から出よう。ここにいたらさすがのメリッサでも命がいくつあっても足りないし、あと単純に胸糞悪い」
「おう。完っ全に同意だ。こんなやり取りしてる今でも町の奴らの視線が気持ち悪ぃ」
アデルがこちらを見ていた町の人々を睨むと、人々はその威圧感に耐え切れず、びくりと身体を震わせたり、バツが悪そうにどこかへ退散していった。
町を出るために出口へ向かっていると、もう一つの事に私は気付いた。
ケントに向けられる視線は、羨望に満ちているのだ。
ケントが元々整った顔立ちの持ち主というのもあるだろうが、それにしても視線を集めすぎるくらいに集めている。
それでもって私は露骨に睨まれたり嫌悪感を隠せない表情で見られるので、良い気分がしない。
ケントと私の違いは一体何なんだと思っていると出口が見えてきたと同時に、近くで誰かが口論しているような声が聞こえてきた。
「…その髪色、気持ちわりーんだよ」
「目の色も気持ちわりーし」
「それをそのままにしてるのも気持ちわりー」
10代後半くらいの男性達が、誰かを囲んで暴言を吐いている。
これは止めないとまずいかなと思い、丁度同じ事を思っていたケントとアデルと走り出すと、何かが飛んできてすぐに避けた。
何だと思っていると、それは暴言を吐いていた人の1人で、私達の足元で何が起こったと頭の上に「?」を大量に浮かべた顔をしていた。
男性達もオドオドし始め、すると男性達に囲まれていた女の子が口を開いた。
「私が好きでやってるんだから。あれこれ言われる筋合いないんだけど」




