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未来裂帛 序  作者: こころも りょうち
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5.ニューシーズン 2オブ4

 新年度が始まっても、相変わらず俺は市川の研究室に通い続ける。そして冬場に弛んでいた反動のように熱く燃えるエナジーで激しく踊り続ける。

「世界を変える可能性を、君は持っている」

 市川は俺にそう言った。

「今、俺は何をしているんだろう?」

 そう尋ねた俺の言葉に始まって、市川はその問いに答えてくれた。研究室の薄暗い部屋に立って、マサキと俺は市川の説明を聞いていた。

「目標のない練習を続けることは苦痛でしかないだろう。暇つぶしのゲームにさえ、得点くらいは付けるものだ。訓練の先に何があるか、君たちには話さなければならない時期に来ているだろう。これから話すことを君たちが否定するならば今日で訓練は終了だ。いい運動になったと感じて、ここを立ち去るがいい」

 もちろん彼の言葉の真意には、俺たちをここから追い出すつもりなど毛頭から感じない。市川は謎の訓練の第2ステージに案内しようとしている。

「君たちには新しいコンピュータプログラミングの手法を試してもらっている。指の動作での入力は限られている。作られたプログラムの流用法としてキーを増やし、指の動作を読み取る方法などが考案されていたがそれではまだ遅い。より速い入力として体の動作の一つ一つをキー入力として読み取り、プログラミングしてゆく。つまり君たちが体を軽く動かすだけでそれがある言語を意味し、コンピュータが読み取ってゆく。その事は以前に伝えた通りだ」そう前置きをしてから、さらに話を続ける。「このプログラミング方式は実はすでに国家のマザーコンピュータに組み込まれている。国家は他国のシステムに後れを取らぬよう先行して身体の動きをコンピュータ言語化して汲み取る方式を開発していた。そしてこのプロジェクトは君たちだけでなく国の中枢の幾つかの省庁でも試されていた。つまり訓練を続ける先には君たちが国家の中枢として働く快諾が求められる。もしその気がないのならすぐに去ってもらって構わない」

 二一世紀末期に起きたフードアンドエネルギークリティカルにより、世界各地で土地の略奪と国家の防衛強化が進んだ。各国の官僚は自国の富と自らの安全を守る為に開発強化の為の最新技術の導入を進めていった。二二世紀中期、遺伝子工学技術の発展により食糧生産工場やエネルギー発生生物の育成工場が建設されたことにより、一時の危機的な状態は解消された。だが平和な世になった現在でも国は自国の富と防衛の為のあらゆる開発を進めている。光の壁や能力識別装置もその為に開発されたものだ。今も新たなる防衛策が必要とされているのは言うまでもない。

「前から思っていたのですが」マサキが珍しく口を開く。「確かに入力は速い方がいい。しかし身体に掛かる負担から考えるとそこまでのスピードでは長持ちしない。むしろキーを増やして指や手の動きを読み取る訓練をした方が効率的に考えられます」

「そうだな。ただのプログラミングにおいてはそれでいい。だが即座の対応を必要とする事態においては速度が重視される場合もある」

「おいおい、ゲームや遊びじゃないんだろう?そんなに即時の入力が何になる?」

 市川の言おうとしている考えには一貫性がないので俺は呆れた態度を見せる。

 すると少し躊躇している素振りを見せた市川であったが、直ぐに回答を返してきた。

「たとえば、戦時状態において、ギリギリの線では即時の判断と対応が必要となる」

「おいおい。いったい俺たちに何をさせようというつもりさ」

「何も君たちを外国との戦争に駆り出そうというつもりはない。国のセキュリティを増す防衛策は常に求められている。どんな状況においても最先端技術を隠し持っておくことが防衛に繋がるわけだ」

 暴露されたのは、このサークルが国家トップの技術に繋がっていて、国家防衛の手段として使われる試作であるというシナリオだ。


 二二世紀初頭、各国家のみならず、幾つかの巨大テロリスト集団が国家を転覆させる為の手段を構想してそのプロセスデータをプログラミングしていた。戦争とは、軍備や兵力をぶつけ合うものではなく、攻撃や防御のプロセスと行動タイミングが重要になっている。組まれた基本プログラムは人が手を加えずともボタンを一つ押せば、戦争がスタートする。テロリストの基本プログラムには国も十分な対処システムを用意していて、コンピュータウィルスやミサイル、細菌兵器の攻撃に対しても防御策が取られている。国家を潰すには相手の防御システムを読んで人間の勘や瞬時の判断で作戦を変える術が必要となる。各国やテロリスト集団はこうした瞬時の動きを判断し対応できる、イミディエントアーミーと呼ばれる軍師を育てていた。

 きっと市川は俺たちをそんな軍師に育てるつもりでいたのだろう。市川は俺たちを安心させようとそうでないと強調している様子だったが、俺にとっては不要な心配だ。むしろその技能を使ってどこかに即時活用してみてやってもいい。技能を注げば国さえも脅かす人間に成れる。俺は何かをやってやっても構わない。

 目的は不確かでも俺は燃えていた。この装置と訓練された俺があれば世界との戦いさえ可能となるだろう。世界を支配するつもりはなくとも唯一無二の存在に成ろうとしている己の価値を得たい想いが強く湧き上がるエネルギーに同調し、俺は世界の頂への道を上り始めた。

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