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未来裂帛 序  作者: こころも りょうち
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5.ニューシーズン 1オブ4

 桜舞い散る空はピンク色。放課後は学友たちと共に花見を楽しむ。コンパクト化された都心にはたくさんの桜が植えられていた。

 かつて、都心の地表には高層ビルや戸建ての家がバラバラに立ち並んでいた。その後、都心の地表は太陽光が反射を繰り返す自然エネルギー製造地を造り出すため、生活空間が制限されるようになった。都心の地面は制限された代わりに、都民は地下と地下を結んで行き来するようになり、制限域外の地表や屋上には樹木が植えられ芝が張られた。さらに国による東京の凸凹した地形を利用した都心改造計画が都心の地下化を推し進め、都心の地表はエネルギーを製造するキューブの立ち並ぶ地帯と大規模な公園地帯に二分化し整備された。遥か過去に、海が埋められて地表が広がったように、現代は地下へと生活空間が広げられている。

 大学のキャンパスを覆う塀の東側に広い芝生の公園がある。そして公園の周りには淡い花びらをいっぱいに付けたソメイヨシノが植えられている。帝都大生や近所の住民が晴れ渡る青空の下で花見を楽しんでいる。

 俺たちも透明シートを芝生の上に敷いて、(うるし)塗りの器に入った弁当を食べながら世の中の慣わしに沿って風に揺れる桜色の天を眺めながら過ごしている。

 一年前に帝都大のキャンパスを潜った俺らは数人の集まりのままに変わろうとしない。キャンパスライフの始まりに繰り広げられたサークル勧誘作戦の罠にはここにいる連中は誰一人として嵌らずに、結局勉強ばかりの時間を取る流れとなった。シャイで人付き合いの苦手なこいつらがここに集まったのは奇跡に近い。おどおどしていたへなちょこタケも今は笑ってみんなと過ごしている。ショーがこの集団に加わった理由は不明だが、どうも他の集団生活には合わなかったらしい。サークルでの他校女学生遊びと自慢の仕合う連中とのやり取りに嫌気が差したと言っていた。ケイゴも昨年夏以来は笑顔を取り戻している。ショーの冗談に突っ込むのがうまい。むしろいまだに失恋ムードの抜けていない俺の方が浮かない顔をしている。あおは女一人俺らに交じっている。女どうしの付き合いが苦手なようだ。ここは俺らの避難所のように心地よく安らぎに溢れている。

 春風が桜を散らす。青空に大きな白い雲が流れてゆく。ダンスレッスンの身体の疲れに日本酒の巡るアルコール分が混じり込む。眠さも少しやってくる。

「おい、ハヤも何か言ってやれよ」

 子供の頃から好き嫌いの多いタケへ突っ込むショーが俺に同意を求める。へにょへにょしたもやし少年の姿を見て「栄養不足で死ぬぞ!」なんて突っ込んでやる。

「タケノコ食べないくらいで死なないよ」

 へなちょこの言い返しに、みんなが爆笑する。

 こだまする笑い声、バカな冗談の言い合い。いつまでもこんなくだらない時間が続けばいい。毎年のように俺らはここでバカ騒ぎをし合いたい。そんな時間が今日にある。



 過去に起きた世界の横暴と比べれば今は生ぬるい。壁の外に捨てられた世界がある事実はいくつも遮断された。原子のゴミは東北道に捨てられて、流行病の伝染病患者は山陰道に閉じ込められた。道州制によって作られた分離は様々な土地を人の立ち入れない死の地へと変えた。

 しかし帝都および主要都市においては国人の繁栄が続いている。今この国がすべき事はこの都の確実なる運用にある。安定した国造りのため、帝都に集められた優良児が様々な知識を得、技能を習得し、国の繁栄に携わる第一人者としての道を歩んでゆく。

「君たちは中高の教育において日本国の様々な地域の特性について学んできたと思うが、大学では地域のより細部の特性について学んでほしい。講義では時間がないので、特性のあるいくつかの地について説明する」

 新しい学期の講義が始まっていた。分散された地域の特性が説明される。

 国にはいくつかの地に危険地帯や国の命運を決めるまでの様々な隠された地球の特性をコントロールする地域がある。一般人には知られることのない知識が帝都大の講義上では開示され、若き学生の優秀な頭脳に一つ一つの情報がインプットされてゆく。テキストは電子データとして何千冊分が個々の情報ノートにインストールされている。さらに講義の受講者や大学の資格を持つ者だけが個別データより得られる資料を読み取る権利を持っている。情報量はいくら帝都大の優良児でも知識全てを頭に入れることはできないほどだ。二学年では各自が選んだより細かい知識を得るためのステップに上がる。一般地域論を基に各都市7万はある位のトップを目指すステージに入っている。


 麗らかな時間が過ぎればいつもの訓練が待っている。訓練で消耗する体力に比べれば、講義の時間さえ麗らかな休息時間に感じられる。

 食欲、性欲、自愛、取り巻く様々な無駄を消し去れ。さもなえれば俺を消し去れ。指先から足先までの神経に集中を求められるダンスは俺の感情にまで入り込む。俺を捉まえて、俺の生命を奪おうとしている。世の未来を残す為だけに、命を削れと言っている。

 俺の中には愚かさがある。ダンスは愚かな感情を全て吸い出す。この先、俺はいったい何に成れるのだろう?愛さえ無意味と感じる無滑稽な話の先は、唯一無二の価値ある存在へと近づく森羅万象の始まりだろうか。

 若き怒りが燃え立っている。今、俺を突き動かしている力はいったい何だろう?ここにあるエネルギー、それはただの愛さえ得られない欲求不満消化の活動だろうか?それとも結果にある自己満足への活動だろうか?

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