教団幹部
おれたちが部屋に入ると、血まみれで倒れている勇者たちが見えた。
「うぅ…」
みんなうめきながら倒れている。どうやらまだ生きているようだ。
「またザコ勇者が来たのか。弱いやつしかいなくてあくびが出るぜ」
そんな倒れている勇者たちの真ん中に返り血がべったりついた法衣を着た男がいた。
「まさか邪悪破滅教団?!よくもみんなをやってくれたわね!」
杏ちゃんは怒り狂って剣を構えた。
「弱い犬ほどよく吠える。役立たずの勇者がおれに勝てるとでも思ってるのか」
男は杏ちゃんを挑発した。
「役立たずなのは君だろ。邪悪破滅教団がここに刺客を放ったってことは、勇者が育たないうちに始末したいってことだよね。でも君は今誰も殺せてない。全く任務を果たせてないじゃないか」
おれは杏ちゃんの前に出ながら挑発した。
「はっ。おれはてめえらがじわじわと息絶える所を眺めたいんだよ。だからあえて生かしてるだけだ」
男はそう言ってナイフをなめた。
「うわ…。トドメをさすべき場面で自分の異常な性癖を優先するんだ。こんな見るからに刺客失格のバカを送り込んでくる教団が信仰する神なんて大したことないんだろうね」
おれはわざと地雷を踏みに言った。
「てめえ!我らが神を侮辱するな!」
「そんなこと言われてもねえ。君みたいな程度が低い人間が信者な時点でろくでもない神だとしか思えないよ。逆ギレする前に信者の恥さらしな自分のことを反省した方がいいんじゃない?ま、君みたいなバカじゃ反省すら無理だから信者やめなよ。神も君みたいなのに信仰されるの嫌だろうしね」
おれは叫ぶ男を煽り倒した。怒らせたらまずおれを狙ってくるだろうしね。
「てめえ!ぶっ殺されてえのか!」
「よく吠えるね。弱いんだね、君」
おれは相手の理論をそのまま返した。
「上等だよ。まずてめえから始末してやる!」
男が姿を消したかと思うと、地面から手を伸ばした。
「あ、あいつ。またあの空間に引きずり込んで倒す気か!」
真琴ちゃんの治療を受けていた勇者の1人が叫んだ。
「ゆ、遊季さん!」
真琴ちゃんは切羽つまった声で叫んだ。
「大丈夫。おれにはこれがあるから。ね、ルナちゃん」
おれはルナちゃんの方を見ながら言った。こうしておけばおれが帰ってこれたのはルナちゃんが生み出したアイテムのおかげということに出来るだろう。
「…帰って来ねば怒るぞ」
ルナちゃんは涙目でにらんできた。
「当たり前だよ。おれを誰だと思ってる?」
おれは親指を上げながら、地面に吸い込まれて行った。
ーー
「よう。仲間にさよならは言ったか?」
男はおれに聞いてきた。
「さよならなんて言ってないさ。勝つのはおれだからね。だからまたねって言ってきた」
おれはそう言いつつ距離をとった。
「強がりはよせ。道化師ごときがこのザンギャック様に勝てるものか」
ザンギャックと名乗った男はニヤリと笑った。
「へー。そういうの分かるもんなんだね」
「あたり前だろう。我らが神は何でもお見通しだ。偽りの神が授けた加護くらい見抜けなくてどうする」
偽りの神っていうのはおれたちの職業を決めた神のことか。やっぱり別口なんだね。
「そう。なら君たちの神の目は節穴だね」
おれはそう言ってジェスターキーをポケットを出した。
「あ?てめえ何が言いたい?」
ザンギャックはおれをギロリとにらみつけた。
「事実を言っただけだよ。だって本当に何でも知ってるなら」
おれは話ながらジェスターキーを突き出した。
「おれの秘密くらい君に教えてるはずだからね。…変身」
おれは指を鳴らし、現れたベルトにキーを挿した。
『Ladies and gentlemen!It's time for show of Mask Raider Jester!Don't miss it!』
次の瞬間ベルトから電子音声が鳴り、おれはジェスターに変身した。
「な、何だァ?!てめえ!」
ザンギャックは驚きながらおれを指差した。
「マスクレイダージェスター」
おれは名乗りつつザンギャックを指差した。
「さあ、ショーの始まりだ」
おれはザンギャックに宣言した。
ネーミングセンスにはあまり自信ないです。次はザンギャックとの激突です。