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筆頭勇者

「誰、君?悪いけど同じグループの子以外わからないんだよね」

おれはやけに態度が大きい少年に聞いた。

「ふん。道化師に名乗る名なんてない」

なぜか当たりが強いな。おれ何かしたか。

「彼は神野勇。職業は剣聖。他のクラスメイトが騒いでいる中『困っている人がいるなら力を貸そうよ』とか言ってまとめるはずだったであろう人」

文ちゃんは雑誌を読みながら言った。


「確かにおれが最初うやむやにはしたけど…。え、おれそんな下らない理由でつっかかられてるの?」

おれは思わずツッコんだ。

「下らなくなんてない!よくもぼくが英雄になるための一歩を邪魔してくれたな」

神野くんはおれに敵意を向けた。

「英雄ねえ。そんなのストーリーなぞった所でなれる物じゃないでしょ。そもそも英雄になるために行動しようとする精神がすでに英雄としてふさわしくないんじゃないかな」

「あはは…。なんか南山弁護士みたいなこと言ってますね」

おれの言葉に真琴ちゃんは苦笑した。


「黙れ!大した力もないくせに英雄を語るな!」

神野くんはおれに向かって吠えた。

「た、大したことないってもご」

「しー。せっかく鑑定結果ごまかせてるんだからよけいなこと言わないの」

夢ちゃんはきららちゃんの口を手でおさえた。

「おれは自分の考えを言っただけだよ。つっかかって来るってことは自分でもこのままじゃ英雄失格だってことを薄々理解してるからじゃない?」

おれの言葉に神野くんは顔を赤くした。

「黙れ。道化師なんていう外れ職のくせに!」

「大事なのはどんな力を得たのかじゃなくてどう力を使うかだよ。ま、強大な力をもらって調子に乗ってる時に言っても無駄だろうけどね」

おれはこれ以上話しても無駄だから話を切り上げた。


「この!ぼくをなめやがって」

神野くんはそう言って腰の剣に手をかけた。 

「やめなさいこんな所で。筆頭勇者が人前でそんなことをするのはよくないわよ」

杏ちゃんはそう言って前に出てきた。

「止まらぬと地獄の熱風が汝を襲うぞ」

ルナちゃんはそう言ってドクロと唐辛子が描いてあるスプレーを出した。明らかに辛そうだね。

「ふ、ふん。命拾いしたな」

神野くんは捨てゼリフを吐いて去って行った。


「あんたもあんたよ。何であんなに煽ったりするのよ」

杏ちゃんはそう言っておれをにらみつけた。

「ごめん。つい気になるとツッコんじゃうんだよね。やめようと思ってはいるんだけどどうしても止まらないんだよ」

おれは杏ちゃんに頭を下げた。

「ジェスターは精神攻撃が主体のレイダーですもんね。敵味方問わず心の傷を無意識で抉るからキャラの掘り下げ回では便利なんですよ」

真琴ちゃんは聞き捨てならない説明をした。


「あはは。おれそういうイメージなんだ…。おれがこういう性分なのもそういう役割を与えられたからなのかな」

思わず口から自虐的な言葉が出た。

「少なくとも今目の前にいるあなたは八雲遊季という1人の人間。勝手に誰かのせいにするのはただの責任転嫁」

そういう文ちゃんの言葉からは厳しさと同時に、おれを特撮のキャラじゃなくて現実の存在だと認めてくれていることを感じさせてくれた。

「そうだね。敵だけを傷付けるように注意するよ」

「ゆーきくん結構セーカク悪いよね。ま、そこが推せるんだけど☆」

そんな夢ちゃんの言葉におれはどういう反応を返せばいいかわからなかった。


「所で筆頭勇者って何なの?」

おれはふと感じたことを聞いた。

「文字通り勇者を束ねるリーダーです。友だちによると戦闘職でリーダーシップがあるから満場一致で決まったようですよ」

きららちゃんはおれに説明してくれた。

「外面はよさそうだから納得だよ。英雄願望で戦闘職のグループを破滅に導かないといいけど」

おれは懸念を口にした。

「これはいざという時に背中を撃ってでも止める覚悟しておくか。無効化は得意だし」

「そこはウソでも敵から守り抜くくらい言いなさいよ…」

杏ちゃんは呆れながら微笑んだ。

また勇者らしき何かを生み出してしまいました。まだ改心の余地があるかもしれない分金田よりはマシかもしれないですが。

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