邪悪破滅教団
「…雑誌に書いてあることを総合してみると、おれたちが召喚されたのは邪悪破滅教団とやらに対抗するためみたいだね」
雑誌を一通り読んだおれは話を切り出した。
「魔物を操り、禁術を使ったテロを行う邪教の狂信者の集団…。いかにも特撮に出てきそうな悪の組織ですね」
真琴ちゃんは顔を険しくして言った。
「ロック鳥の襲撃も邪悪破滅教団の仕業の可能性がある。既にジェスターは目をつけられているかもしれない」
文ちゃんは真剣な顔で言った。
「人々に危害を加えるっていうなら撃退はするよ。ただこの国の上層部にジェスターであることを明かすわけにはいかないことが確定しちゃったのは何とも言えないよ」
おれは雑誌を見ながら頭を押さえた。
「どこどこの国が邪悪破滅教団と繋がってるだの、邪悪破滅教団が潜伏してるだのいう理由で緊迫状態が続いてるようだしね。国同士のドロドロとした思惑が透けて見えるわ」
杏ちゃんは眉間にシワを寄せながら言った。
「…巨悪がいるのになぜ団結せぬのだ」
ルナちゃんは呆れたように言った。
「同じ悪と戦う中でもそれぞれの陣営で思惑が違うのはよくあることだよ。ま、おれはソロだったから自由にやってたけどね」
おれはデストラクションズとの戦いの日々に思いを馳せた。
「ソードとスピアのケンカの仲裁には苦労してましたけどね。最後はロープショットで縛るのがお約束でした」
「あれね…。レイダーの動きが封じられるなら私が抜けられるわけないわね」
杏ちゃんはそう言って顔をしかめた。
「まあ何にせよ目立たずに教団の悪事を防ぐ必要があるね。おれ1人ならとっとと城かり出るんだけどね」
「…すみません。別世界からくっついてきてしまって」
きららちゃんはそう言って顔をうつむけた。
「気にしないで。男だらけのグループにぶちこまれるよりは、かわいい女の子に囲まれた今の状況の方が確実にいいんだからさ。こんなハーレム状態なのに逃げる方がもったいないよ」
おれはあえて明るく言った。
「うわー。ゆーきくんサイテー」
「不潔」
「やっぱり変態ね」
夢ちゃんと文ちゃんと杏ちゃんが冷たい目で見てきた。
「ひどくない?!おれはただ場を和ませようと」
「言い訳は見苦しいぞ!」
「レイダーでもスケベなんですね。何だかショックです…」
ルナちゃんと真琴ちゃんが追い討ちをかけてきた。
「ふふっ。わざと道化を演じてくれたんですね。八雲さん優しいんですね」
きららちゃんはクスクス笑った。
「買い被り過ぎよ。レイダーである所以外長所ないでしょこいつ」
「そういうこと言うのやめて。本気で傷付くから」
まあそれは冗談にしても、おれが今慕われてるのはレイダーだから頼りにしてるだけなんだろう。まだ強さ以外そこまで信頼されてないと思う。
「ま、今はいざという時頼ってくれればそれでいいよ。邪神が来ない限りは何とかするからさ」
おれはそう言って親指を立てた。
「それ本当に来ちゃうフラグですよ…」
真琴ちゃんはそう言って苦笑いした。
「ふっ。まだそんな道化師と組んでるのか」
そんな威圧的な声が急に雑談に割り込んできた。
今後も国上層部に自らジェスターだと明かす展開を書く気はないです。
正体バレはあるかもしれませんが。