異世界召喚
突然目の前で光が広がった後、おれがいたのは見知らぬ場所だった。
「どこだここ…。また何かトラブルに巻き込まれたか?」
念の為ズボンのポケットを探るとちゃんとあれがあった。これなら多少のことはどうにか出来るな。
「うっ。ここは一体…」
「何がどうなってるんだよ」
声がしたから周りを見回すと、学生が30人程いた。制服が同じなことを考えるとクラスメイトなのかもしれない。
「あ、あなたもここに連れて来られたんですか。…えっ?!」
おれに話しかけてきたボーイッシュな女の子が驚きの声を上げた。
「どうした。おれの顔に何かついてる?」
「い、いえ。何でもないです」
女の子は「えっ、まさか本物…」とか「いや、でもそんな…」と何かブツブツ呟いている。知らない所に連れて来られて頭が混乱してるのだろうか?
「よくいらして下さいました勇者様方。どうか我が国を救って下さい」
周りに気をとられている所に声が聞こえた。声がする方に顔を向けるといかにも姫という感じの女の子がいた。周りには護衛らしき兵士もいる。
「こ、これはまさか異世界召喚か?」
集団から離れた所にいたメガネで小太りの少年が何か呟いた。
「異世界召喚だぁ?ラノベの読みすぎだろキモオタ。そんな妄想よりまだどこかの映画監督がエキストラとして拉致したと考えた方が現実的だぜ」
金髪のいかにも不良らしき少年が正論を言った。
「ぶ、無礼な。誰が拉致だと?!」
激昂した兵士が腰の剣に手をかけた。
「まあまあ。状況からすれば拉致されたとしか思えないのも無理ないでしょう。実際おれ自身気が付いたら見知らぬ場所にいたんだしさ」
おれは左手にポケットを入れながら兵士を制止した。
「とりあえず異世界だっていうなら何か不思議な力を見せたらいいんじゃないかな。少なくとも自分の今までの常識が通用しない世界に来たことはわかると思うよ」
そう言いつつ兵士の様子を観察する。今の所何かあった時学生たちを守れるのはおれだけだから気を抜かない方がいいだろう。
「…わかりました。魔法をお見せしましょう」
姫らしき人がそう言うと掌に火の玉が出現した。
「な、何もない所から火が出た…」
「もしかして本当に異世界なのか?!」
一緒に来た学生たちは驚きの声を上げた。どうやら超常的な力があるから異世界という結論に達したようだ。
「とりあえずここが異世界で、あなたたちにわざわざ異世界召喚なんていう大それた手段を使うだけの理由があるだろうことは理解しました。でも彼らは見た所一般的な学生ですよ?あなたたちの国を救えるだけの力があるとは思えないのですが」
おれはお姫様に尋ねた。
「それはご心配なく。異世界人には神から力と職業が与えられます。今から鑑定させていただきますね」
お姫様は笑顔を浮かべながら言った。
「それはまたゲームみたいなシステムですね。あ、おれは年長者なので最後でいいですよ。彼らも早く自分の運命を知りたいでしょう」
おれは端の方に移動してお姫様にお辞儀した。
一区切りついたので新作を書いてみました。
…ある秘密をいつ明かすかはこれから考えます。