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ギャルゲーと僕。  作者: のりたまごはんとみそスープ
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ここから

次回更新は9/9予定です。多分。

前回までの『僕とギャルゲー』

どうも皆さんこんにちは!後方友人面の斎藤でっす!会長っ!本当に連れてきてくれたんですね!ありがと…あれ?何か怒ってない?めっちゃキレてるやん!これは謝罪一択。心で五体投地。…さぁて…桐山の告白は上手くいったのか!?とりあえず会長…笑いすぎでは?



いやぁー。笑った笑った。


生徒会室の椅子にもたれ、cigaretteを咥えながら今日のことを振り返る。


あの、桐山が直接的過ぎる告白まがいの宣言をした後の話。


互いの認識のズレを修正する様はてんやわんやだった。


まあ、最終的には私が謝ることでことなきを得たわけだが。


「コンテストを開催したいのではなかったの?」


「それはあくまで依頼ということで…俺らは主催でも何でもないから…。」


「アンケート調査を続けたいと聞いていたのだけれど?」


「それはまあ。でも、轟さんが嫌なら全然大丈夫。俺たちはすぐ辞めるし、新聞部の説得も手伝うから。」


「話が、全然違うのだけれど?」


「それは俺らには何とも…」


2人ともそんな目で見ないで欲しい。

話を拗らせたのは私で、二人の事情をよく聞かなかったのも私で(後で二人から謝られた)、声を出して大爆笑したのも、はい。私です。本当に申し訳ありませんでした…。


こうして事態は収束を見せたものの…。


「申し訳ないけれど、あなた達と仲良くする気はないの。」


さも当然のごとく、轟は言う。


桐山の友達なってくれや宣言は完膚なきまでに叩きのめされ…なんて、まあそうはいかない。


当然、二人の罪は重いが。轟が別に気にしていないのなら、二人が反省しているなら。


言っただろう?私はお節介焼きなんだ。


「まあ、待て。そんな風に即決するものでも無いだろう?」


突然割り込んできた私に、胡乱げな視線を送ってくる轟と桐山。

ん、まあ諸悪の根源であることは認めるが。


そう思いつつ、悪びれもせず私はある提案をした。


「3ヶ月。3ヶ月のお友達お試し期間を設けるのはどうだろう?合わなければ、3ヶ月でこれまでの生活に戻るという約束で。」


「白縫会長、その、提案はありがたいのですが、私は…」


嫌そうに目を細めて断ろうとする轟を、そっと教室の隅に連れ去る。


「ちょっ…あの、白縫会長!何を」


「『相談』の件。私はまだ諦めてないぞ?」


その言葉に少し驚く轟。

あまり表情を変えないタイプだと思っていたのだが、今日で一生分驚いたんじゃないか?

少し微笑ましく思う。


「っ!ですから、それはもう」


「確かに轟が思う形ではないかもしれないが、これ程都合のいい条件もないと思うぞ?」


目を瞑ると、今でも脳裏に蘇る。

不安そうに生徒会室を訪ねてきた、去年の彼女を。


彼女の『相談』とは『交友関係を広げたい』だった。

『人見知りを直したい』とも。


あの時は、頼ってきた彼女に何も返すことが出来なかった。友達の作り方なんぞ私が知りたいくらいだから。


だから、これは、私なりの答えだと。


「あんな感じだがいい奴らなんだ。私が保証する。」


「…。」


少し黙り込んで、ポツリと轟は呟いた。


「3ヶ月なんですよね…。」


「ああ。別に嫌になったらすぐに言ってくれれば、私が何とかするから。何ならあの二人をグーで殴ってくれてもいい。だから…」


伏せている轟の目をそっと覗き込む。



覚悟、は出来た。



桐山を見ると、めちゃくちゃ斎藤に励まされていた。2人とも呑気なものだ。


私のエゴに巻き込んだというのに、思わず苦笑いが出る。



大変なのは、きっとここから。

だから、頑張りたまえよ。君達。



少し不安そうに、それでも勇気を持って歩を進める轟の背中へと。

私の思いとともに、春の風がそっと寄り添った。


ーーーーーーーーー

※ここから桐山視点


「なあ。」


ここは桐山宅。

月明かりの差し込む六畳半の自室。


「ん?どうした?」


ちゃぶ台のような大きさの机にすき焼きを囲み、俺たちは舌鼓を打っていた。


「俺たち、頑張ったよな?」


「まあ?頑張ったというより?全ては僕の手のひらの上だったわけだし?」


「そのドヤ顔やめろ。全部偶然だろ。」


轟さんに告白して振られて終わる筈だった己龍君の依頼。まさか、


苦情を言ってきた女子生徒 = 轟さん


になるとは。


これで良心の痛む『嘘告白』もしなくて良くなり、期限付きではあるが、轟さんと世間話をする権利を俺たちは得たわけだ。


あとは3ヶ月のうちに、仲良くなった轟さんの好きな人をかるーく聞けばいい。


うん。俺には無理かな。


「とりあえず、これで僕らは轟さんと一応、友達ってわけだ。順風満帆すぎて怖いくらいだよね。」


そう言って、斎藤はもたれかかっている俺のベットに頭を乗せ、上を見上げ、言葉を続ける。


「まあ実際に動いたの全部晴人だけど。」


その言葉に、ひょいっと肉を取りながら、俺は苦笑いして返す。


「今思うと苦情を言ってきた女の子に『告白の練習がてら、友達になって下さいって言えばいいじゃん』って、悪魔みたいな提案だよな。」


「それな。ただ…初対面かつ、こっちを敵視する女の子と、どうやって仲良くなるよ?もうどうあがいても回りくどい方法は無理じゃん。」


もう終わったことに、斎藤は笑いながら言った。


「マジでヤケクソだったしなぁ…。実際、一刀両断されたし。」


「会長には足向けて寝られないよ…。寝たことないけど…。」


「俺、大爆笑されたの、まだ根に持ってるんだけど。」


「ごめん、僕もちょっと笑った。」


「おい…。」


斎藤は笑うなよ…。


俺が何とも言えない表情で、肉を咀嚼していると、不意に斎藤が口を開く。


「にしても、僕らって轟さんと一応は、友達になったんだよね。…ほら、連絡先もバッチリ載ってるし。」


そう言ってスマホの画面を見せてくる。

あの後、轟さんの了承の元、会長経由で連絡先を教えてもらったのだ。苦情の件といい、友達お試し期間の話といい、マジで会長には頭が上がらない。

…その分、無茶振りを通してきた去年の実績が脳裏をよぎる。感謝と憎しみがごっちゃになった複雑な感情が胸を満たした。


色んな意味で、少しうんざりした顔で口を開く。


「んなもん分かってるだろ。俺のにも登録されてるし。」


「いやまあそうなんだけど…」


すき焼きの煙越しに、美少女とは思えないニチャついた笑顔が見えた。そのまま、斎藤は続ける。


「何つーか、美少女に連絡する権利がこうやって手元に、目に見える形であると心にくるものがあるんだよ…。」


「…どういうことだよ。」


あのキモい顔をしている斎藤の話は、聞き流すに限る。俺はスマホをガン見している斎藤を放置し、ガンガンすき焼きを食べることにした。


「だって、画面を軽く操作するだけで、美少女と話せるわけじゃん。自分の好きな時に好きな話をさぁ。しかも、無料で、かつ、素顔も知ってる確実な美少女と。確実に美少女なJKと、無料で、自分の都合の良い時間に、連絡を取れるってどれだけすごいことか分かってる??これもう今世の運使い果たしたも同然だよ?」


すき焼きをガンガン食べるはずだった手が止まる。


「…いや、まあ、改めて考えるとエグいけどな?いや、その考えをしてるお前もどうかと思うけどな?」


一回、鏡を見てから言ってくれないだろうか。

桐山は叫びたくなった。


「僕の指先一つで、美少女を喜ばせるも、顔を歪ませるも自由自在って考えると、こう、ほら、唐揚げを揚げまくった後の汚れた油みたいな、ドロっとした快感がさ」


「はい、レッドカード!社会から退場でーす!」


「審判!!言論の自由!僕らの権利!」


「言い訳は俺じゃなくて法廷でお願いしまーす。」


その危ない例えをやめろ。確かに唐揚げをあげまくった後の油はなんかドロっとしてて、焦げとか凄いけど。ちょっと共感してしまいそうだっただろ。


しばらくアホな会話で盛り上がった後、まあ冗談だよ、と笑顔になる斎藤。何となく目は笑いきれてない気はするものの、空気は弛緩し、俺の口の中にすき焼きの味が戻ってきた。


と、椎茸と肉を卵にダイブさせながら再び斎藤が口を開く。


「それなのになーんか晴人は嬉しそうじゃ無いよね?普通この流れは、『ちょ、どっちが轟にメッセ入れるかじゃんけんで決めようぜ!ってか何て送る?』って盛り上がるとこだろ?散々盛り上がった挙句、何も送らないのが伝統だけど。」


一瞬、またじゃんけんかと思って焦った。


…それに、俺が嬉しそうじゃないと言うが。

むしろ、それは普通の反応だと思うのだが。


「何つーか、全然実感無いんだよな。それに、轟さんの連絡先を持ってるからって別に何も無いだろ?知り合ってまだ0日だし。普通これからじゃね?」


友達でもなければ、思いを向けているわけでもない相手に何と送ればいいのか。連絡を取りたいとも正直あまり思わない。そりゃ、仲良くなりたいという気持ちはあるけど。いかんせん、性格が問題なのだ。全然轟さんの素性を知らないことは百も承知だが、それでもあの短時間で伝わるものはあった。


俺の言葉に、スンッと真顔になる斎藤。

なぜか偉そうに腕を組んで、口を開いた。


「いや、甘いなぁ。甘い。人工甘味料を飽和させた水よりも甘いよ。美少女と友達になって連絡先を交換したことがある人間がどれだけいると思う?こんな機会、偶然に偶然が重なって、さらに追い偶然をマシマシでトッピングしてもまだ足りないくらい貴重なんだよ?」


美少女と連絡先交換するの、もう2度目だしなぁ。

ちょっとお腹が満たされ、ぼんやりする頭でそう思う。


「まあそうかも知れないけどな?…焦る必要はないだろ。ってかそこまで言うなら、まず斎藤が連絡して欲しいんだが。」


白滝をすき焼きのタレと共に口に入れながら、斎藤にそう提案した。


「はぁ?何言ってんだよ晴人。そんな仲良くもない美少女に連絡する勇気なんて、僕にあるわけないだろ?」


コイツ一発殴らせてはくれないだろうか。


無理に決まってるじゃん。と軽く鼻で笑いながら言う斎藤に、内心で呆れる。


というか、と俺はため息をつきながら、口を開く。


「そもそも轟さんと仲良くなるのも、依頼解決のためだからな?目的と手段を間違えたら、多分ややこしいことになるぞ?」


斎藤も一応わかってると思うが、忠告はしておく。まあ、そのあたり斎藤は間違えないだろ。うん。


そう思って斎藤を見る。


斎藤はポカンと呆けた顔をしていた。


え、これ間違えてるじゃん。


「そそそそうだよねー!これも己龍の依頼のためだったよねぇー。うんうん。あー…あー、そうだったかぁ。」


焦ったのち、残念そうに言う斎藤。


そんな斎藤に、流石の俺も少し諭すように口を開く。


「何も無いくせに、根暗でオタクな男子高校生が美少女と仲良くなれるわけないだろ。それなんてギャルゲ?ってやつな。…いや、まあ例外はある、けど…。」


言いながらチラッと斎藤を盗み見る。

最近よく考えることが、また脳内で繰り返される。



ほんと…これなんてギャルゲー?



美少女と2人、自分の部屋ですき焼きを囲む…。

3年前の俺が聞いたら妄想乙、で終わるだろう。


春菊の代わりにつっこんだ、春キャベツを食べつつ…春キャベツうっま。柔らかくて口の中で解ける…作る時に水の量を少し減らすのがポイント。


俺の言葉に、斎藤は少し驚いたように目を開く。そして、すぐ、それを隠すように、ニヤリと口の端を上げた。


「まあ、そうだよね。柄にもなく舞い上がってたかも。でもまあ、依頼とか関係なく、仲良くなれれば嬉しいけど。」


「それはまあ、確かにな。」


いずれにせよ、轟さんとはまだ殆ど初対面だ。

これから仲良くなれるのか。お友達(仮)ではなく、友人として気軽に話せるようになるのか。


それはこれからの頑張り次第だろう。


…こうして。


すき焼きを食べ終わり、洗い物担当としてじゃんけんをして(今度は斎藤が勝った)、雑談して…。いつものようにベランダ経由で帰宅する斎藤を見送った。


その後も、それぞれの部屋で通話しながら、寝るギリギリまで二人で同じアニメを観た。


『じゃあ、僕はもう寝るね。おやすみー。』


『おう。おやすみ。』


アプリを落とす音と共に、静かになる部屋。


それに一抹の寂しさを抱えながら、数々の作品について語り合える友の存在を噛み締め、感謝しつつ…俺もそのまま寝ることにした。


明日から非日常が始まる。


当然のように隣には斎藤がいて、なんだかんだ斎藤は轟さんと仲良くなって。斎藤の無茶振りにツッコミつつ、振り回されて、少し轟さんとも話す様になって…。


正直、期待していた。

それが当然だと。明日からも、まあ斎藤がいれば何とかなると。そう、思っていた。



次の日。斎藤は学校に来なかった。



そして、その次の日、そのまた次の日も。




斎藤は学校を休んだ。


桐山晴人

主人公。すき焼きおいしい。


轟姫花

ヒロイン。極度の人見知り。ここから修業期間に入る。


斎藤優

桐山が轟に告白⇒フラれるシーンは原作にもあったため、生で見れて感動している。

ここからしばらく出番が無くなる。

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