生徒会長に呼び出された件
次回更新は8/26予定です。
これまでの『僕とギャルゲー』
どうも皆さんこんにちは!じゃんけんで負けた斎藤でっす!
“轟さんと仲良くなって好きな人を聞き出す作戦”は保留!『嘘告白』実行へ秒読み!後は晴人が上手く告白してフラれて、轟さんの好きな人を聞き出せるかどうかにかかっている…。それはそうと、個人情報を漁りまくったせいで、生徒会補佐の二人が呼び出されたみたいです?え、これ大丈夫?
「さて、貴様ら。自分達が何故ここに呼ばれているか、分かるか?」
斎藤と2人で呼び出された俺たちがいるのは、坂上高校の生徒会室。
立っている俺たちの正面、ゴツい机を挟んだ向こう側。生徒会長用の立派な椅子に座り、キレておられるのは我が校が誇る美人生徒会長。
正直、何故前髪をちょっとだけ銀色に染めているのか気になって仕方ない白縫会長である。
ちょっとキレてる美人ってすごい迫力あることを教えて貰っている真っ最中なのだが、斎藤は何も臆することなく口を開いた。
「正直めちゃくちゃ心当たりあるんで分からないんですけど…ってか会長、僕たちを呼んだ時、最初に絶対その台詞言うの何なんですか?マニュアルですか?」
俺も聞きたかったそれを聞いてくれて、とてもありがたいが、それ聞くの多分今じゃ無いだろ。
そう思う俺の目の前、白縫会長は一瞬、声をあげそうになり…呆れたようにため息をついた。うちの斎藤がすいません。こいつちょっと空気読めないんです。
「…まあいい。それで今日貴様らを呼んだのはとある女子生徒が、『不快な思いをした。』と先生に訴えたからだ。加害者は2人、ご丁寧に生徒会補佐に所属している。と肩書きまで着けてな。」
完璧に俺たちのことだった。これは言い逃れできない。お、オレタチガナニヲシタッテイウンダー
「…まあ最近美少女コンテストのアンケート取るの手伝ってるんで、それ関係ですかね…。」
苦笑いして斎藤が答えた。
「当たりだ。匿名での意見だったようで、先生から名前を教えて貰ってはいないが。恐らくそうだろう。曰く、知り合いでもない二人組に日常生活を詮索されて非常に不快な思いをしている。とのことだ。」
え?それ?…小鳥遊が許可を取っているはずじゃ…?
思わず口から溢れた。
白縫会長は軽く頷いて答えた。
「分かっているさ。私のところにも小鳥遊から連絡が来ている。…私は許可を出したが…その話は知っていたよな?」
椅子にもたれ、腕を組みながら、会長は淡々と質問する。
俺はその辺りの話に全然関わっていない。
てっきり斎藤が知っているのかと…斎藤?
隣の斎藤はめちゃくちゃ汗をかいていた。
あ。これは詰んでますね。
どうやら斎藤は小鳥遊に確認を怠っていたらしい。これはマズイですね…。
白縫会長が目の前で大きなため息をついた。
「…連絡を怠った小鳥遊もそうだが、君たちもなぜ取材の許可を得ているか聞かなかったんだ…。」
無許可で見知らぬ女の子の情報をかぎ回っていたということになる。これは通報待ったなし。自明すぎる。
…ただ正直苦情が来るとは考えていなかった。
名誉ある立場に選ばれたことに『嫌だ』というのは難しいだろうから。その勇気と誠実さには、誠に勝手ながら好感を覚えた。
その女子生徒にはちゃんと、しっかり謝りたい。
でも一方で、此方の事情も知ってほしかった。
「でも、白縫会長、俺らにも一応言い分がありましてですね、」
おずおずと俺が口を開くと、会長は頷く。
「まあ、何を言っても今更だろうが…。とりあえず、聞こうか。」
そんな言葉を前に、一瞬俺は悩む。
己龍君の依頼はどこまで教えていいのだろう。
「…。」
くそっ、言葉が出ない…。
悩む俺が作ってしまった静寂を切り裂いたのは斎藤だった。
「…これのせいです。成果を焦っていました。すいません。」
その左手は自分のブレザーの襟元を掴んでいた。
「謝るのは私ではないだろう…で、バッチ持ち?新聞部には所属していない筈だが…誰の依頼だ?」
その可能性には至らなかったのか、少し焦ったように白縫会長は質問する。
「すいません。それは言えないんです。それにこれも結構ギリギリだと思うので。」
そう苦笑しつつ、襟元をひらひらさせる斎藤。
それを見た会長はため息をつきながら再び椅子に体重を預けた。
「そうか…。問題はバッチを持った第三者からの依頼か…。生徒会補佐の人間にしか教えるな。とでも言われたか?」
俺たちは無言で返答する。
それを察した会長は、そのまま呆れたように続けた。
「人に言えない面倒な依頼を持ち込むとは…。それは生徒会だけの特権だろうに…。」
生徒会の特権でも無いんですが?
そういうのパワハラって言うんですよ?
俺たちは力を合わせて会長に目で訴える。
ニッコリと笑顔が返ってきた。目も笑っていた。普通に怖い。
「あー。とりあえず、その子の言い分は理解したんで、もう情報収集は辞めます。新聞部には会長から伝えていただければ。」
「…分かった。」
己龍君への言い訳はもう出来るはずなので、不安だったのは集めた情報で新聞部が満足するかどうかだったのだが。会長が言うなら大丈夫だろう。もう思い残すことはない。
大きな仕事が解決した開放感から、少し肩の力を抜く。
詳細を小鳥遊に聞かなければ…。許可が出ていない子に関して調べてしまっていたのなら、ちゃんと謝らなきゃ…。
確認を怠ったことを反省しつつ、考えを巡らせる俺たちの前で。
「では、ここからは」
目の前に座る会長がそそくさと、会長である証である謎の金色のヒモっぽい何かを制服から外し、口を開いた。
「会長ではなく1人の白縫花織として話を聞こうではないか。」
満面の笑顔でそう言った。
…あ、いえ、結構です。間に合ってるんで。
心でそう思っても、体は一切ついてこない。
あっ、と思う合間に、言葉を届ける隙間は無く。
…いったい、何が始まるのか…。
俺は戦々恐々としながら、ちょっと居住まいを正した。
ーーーーーーーーー
「正直この椅子も、このゴツい机も堅苦しくて敵わん。しかも、必然1人になっている気がするのがいけない。今の時代、威厳なんてなんの価値もないと思うのだがな。」
はい仕事終了ー!あー開放されたぁー!
みたいに伸びをしながら、会長は椅子を降りた。
やっぱこうやって近くで見ると、会長って凄いちっちゃいよな…。
そう。端的に言って、会長は小さい。すごく。
まあ、とりあえず座れ。お茶でも飲みながらゆっくり話そうじゃないか。
そう言いながら、会長は生徒会備え付けのポットとかを利用してお茶の準備をしてくれる。
どう見てもその身長は140〜150cm程度しか無い。本人は160cmはあると言って譲らないが。
ちょこまか、ちょこまかと動く会長。
その動きに、髪の九割九部を占める紫がかった長い髪がぴょこぴょこと連動する。そこには先ほどまで醸し出されていた威厳なんぞカケラもなかった。ゴツい机と豪華な椅子に座らせたくなるのもよく分かる。これでは仕事にならん。
隣を見るとニヘラッと癒されている斎藤。
あれだけ毎回怒られているのに何にも懲りていない様子がよく分かる。もう少し隠せよ。
お茶をいただき、少し空気が弛緩したところで、会長が話を切り出す。
「ではあらためて。君たちには色々と世話になっているからな。しかも、依頼解決に困っても中々相談してくれないし。」
「いやぁ。ははは。」
会長がジト目で軽く責めてくるのに、苦笑いで返す。
一瞬、間があり、耐えきれなくなったのか会長の笑顔が溢れた。
「…まあ助けられている身としては感謝しかない。それに君たちが困っていることを知れたのなら助けようと決めていたんだ。それで、その厄介な依頼を解決するために新聞部の依頼を利用したんだろう?」
「まあそうっすね。僕らの頭ではもうそれしか思いつかなくて。」
「で、確認ミスで苦情が来たと。ここまでは合っているか?」
「はい。」
「それで、だ。この状況をリカバリーする方法を思いついた。」
そう笑顔で曰う会長。
あの、コンテストの情報はこれ以上必要なくて…もう全部まるっと解決しそうなんですが…。
そんなことよりその女子生徒に謝りたいのですけど…。
なんて言えない…。結構嬉しそうなこの人の前でそんなん言えないよ…。
ただ、ちょっと方法が気になる自分もいる。
隣を見ると斎藤も同じような表情をしている。
「その方法ってなんですかね?」
そんな斎藤の言葉に会長がちょっとドヤ顔で口を開いた。
「苦情内容は見知らぬ2人に、プライベートに関して色々と知られるのが不愉快ということだろう?…ならその女子生徒と君たち2人が仲良くなれば、万事解決じゃないか?」
あっれれー?おっかしいなぁー?それ何処かで聞いたことがある台詞だよー?
どうして俺の周りにいる人間は、とりあえず仲良くなれば全部うまく行くと思っているのか。
というか、その女子生徒はそもそもコンテストが嫌なのではないだろうか。見知らぬ2人に詮索されるのが嫌なのは間違いないが、本当の目的はコンテストの中止なのでは?知らんけど。
疑問ばかりの俺を置き去りに話は進む。
「…でも苦情は匿名ですよね?誰か分からない状況で、僕らが仲良くなるのは不可能じゃないですか?」
素直に斎藤が聞き返す。その疑問に再び会長はドヤ顔で口を開いた。
「会長であるこの私が直接場を設けよう。確かに苦情は匿名だが、私が聞けば先生も教えてくれるだろうし、私が言えばその女子生徒も話を聞いてくれるはずだ。生徒会長だからな!」
普通に職権乱用じゃねーか。
ただの力技でビックリだよ!
得意げに言い切る会長に思わずツッコミそうになる。
白縫会長はたまに抜けているところがあるのだ。そういうところも2年連続で会長をするという偉業を成し遂げるコツだろうか。完璧ではないからこそ下がついてくる的な。
「…本当にいいんですか?会長に負担をかけてしまうことになるんですけど。」
「普段から世話になっているからな、これくらいさせてくれ。どうしてもというならこれからの働きで返して欲しい。」
「会長…!…正直、仲良くなれるかは分からないですけど、今回のこと、しっかり謝りたいと思います。」
「ああ。まずは謝罪。それが一番大切だからな。」
…まあ、確かに。
その女子生徒に謝れる機会が貰えるならめちゃくちゃありがたい。先生への言伝とか、新聞部のSNSとか考えたけど、出来るならちゃんと頭を下げたい…。
ただの自己満と言われればそれまでだけど。
それでも、誠意は伝えたかった。
ただ、会長に大きな迷惑をかけてしまう…。
そんな罪悪感とともに話は進んでいく。
「あ、最後に。会長、質問なんですけど。初対面の女子と仲良くなるにはどうすればいいですか?会長って個人でお悩み相談とかしてるくらい慕われてますよね?なんかコツとか教えてくれないかなぁ、なんて。」
斎藤がさらっと質問する。
ここ最近ずっと『誰かと仲良くなること』で困っていたので、会長なら凄い方法を知っているかもしれない。
そんな期待の目の先、会長は…
ちょっとしょんぼりしていた。
「まあ、確かにお悩み相談なんかはしているが…。それは友人として慕われているのではなく、隣人として慕われているというか…。こう見えて友達は少ないんだ。ぶっちゃけ、人と仲良くなる方法なら私が知りたい。君たちが羨ましいよ。」
遠い目をして語る会長。
ちょっとしょんぼりしている会長は、思わず励ましたくなった。
確かに会長と特別仲がいい人を見たことがない。
みんなの会長という雰囲気で、学生というより会長だから、なんか一線引かれている気がする。寂しすぎる。俺が同級生の女の子だったら思わず抱きしめて高い高いしていたのに…。誰か会長と友だちになってあげてよぉー!
「安心して下さい会長!僕は会長のこと友達だと思ってるんで!」
会長の言葉に、斎藤はめちゃくちゃ笑顔で言い切った。
流石斎藤。俺もそれに乗っかって首をブンブン縦に振る。
「いや、まあ、うん。その気持ちは嬉しいな。ありがとう、二人とも。」
ちょっと苦笑いで、それでも嬉しそうにお礼を述べる会長に癒された1日であった。
ということで、俺たちは轟さんに告白するという試練に加え、俺たちを嫌っているであろう名前も分からぬ女子生徒を説得するという謎の難題に直面することになった。
正直、その見ず知らずの女子生徒と仲良くなる必要はほとんどない…いや、なかったというべきか。
後で分かったことだが…その苦情を言っている女子生徒の名前は轟姫花。
これは起死回生のチャンスか。それとも、ただ嫌われるきっかけか。
見知らぬ美少女と仲良くなる…陰キャ二人の前に高すぎる壁が立ちはだかっていた。
人物紹介
桐山 晴人
主人公。なんでもいいから依頼を終わらせたくなっている。ちょっと投げやり気味。
斎藤 優
転生者の陰キャ。一度仲良くなった人には良くしゃべる。
白縫会長
坂ノ上高校の生徒会長。属性ロリ。今回苦情を言っている女子生徒に心当たりがある。パワハラが常習的になり始めているが、カワイイので許されている。自分では他の生徒にかなり敬遠されていると感じているが、実際は逆。大半の女子生徒は目に入れても痛くない会長の姿を見るために近づかないだけ。ほら、近づきすぎると相手って見えにくくなるじゃん?つまり、カワイイは罪。