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ギャルゲーと僕。  作者: のりたまごはんとみそスープ
4/16

三位って…マジで有名人じゃないですかやだー

次回更新は8/19の7:00予定です。

前回までの『僕とギャルゲー』

どうも皆さんこんにちは。生徒会補佐の斎藤でっす!

いやあ、僕の冴えわたる頭脳が幾億ものアイデアで立ちはだかる難題をバッタンバッタンと切り捨てて…まあそんなことはさておき。美少女コンテストを利用して、”轟さんと仲良くなって好きな人を聞き出す作戦”が始・まる・ゼ☆!刮目していけぇ~?


「昨日のアンケート結果みた?」


次の日、斎藤と二人でニュースを横目に朝飯を食っていると、斎藤が話を振ってきた。


「ああ。一応は確認した。名前と顔はほとんど一致しないけどな。」


「晴人のそれが強がりなのか、マジで興味ないのか全然分かんなくて、普通に心配しちゃうな。」


ドヤ顔でいうと、上から目線で心配された。なら斎藤は言えるの…?言えるって…?マジで…?


先日、轟さんを知るために坂上高校美少女コンテストを利用することを思いついた俺たちは、すぐさま行動に移した。新聞部に許可をとり、生徒会補佐の伝手も駆使しつつSNSでアンケートを敢行。仮ではあるが、ある程度のアンケート結果を得た。


朝食のシリアルが牛乳にしっかり浸るのを見届けつつ、俺はスマホの画面にアンケート結果を表示させる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


坂上高校美少女アンケート仮(匿名投票、票数非開示)


一位 藤宮・フォースター・沙也加

二位 透乃玲奈

三位 轟姫花

四位…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


がっつり三位である。ランキング上位に入ることは予想通りだが、ここまで上位となると…己龍君が不憫に感じた。これはライバルが多いだろうな…。誰も知らない花火見学スポットで二人きり…は難しそうだ。


まあ正直、ザマァー。である。

リア充はいてもいいけど、増えないに限る。あくまで個人の見解です。


ちなみに仮となっているのは、このアンケート結果を元に、ランキング入りした生徒のプロフィールを作成し、開示した上で文化祭当日に本投票を行うためである。

当然プライバシーに配慮して、開示するプロフィールは本人の許可が必要になり、そもそもプロフィールを作るのも我々裏方の仕事である。

周囲の人間への聞き込みだの、本人インタビューだの…そんなに頑張らなくてもいいと思うのだが。


とりあえず、このプロフィール作成に斎藤は光明を見た。趣味が分かれば会話の糸口になる。本人インタビューという大義名分も得た。そこから仲良くなれば良い。という作戦だ。


作戦第一段階、轟さんのアンケート上位入りは見事成功。作戦は第二段階、プロフィール作成に移行する。


「そういえば、プロフィール作るのって俺らが勝手にやっても良いのか?まず本人に許可とか…?」


ふと疑問に思った。

情報に厳しい現代社会。これ下手したら通報ものなのでは?


「あ、それなら小鳥遊がみんなに聞いてくれるって。ほとんど全員の連絡先知ってるっぽいし。」


サクッとすごいことを聞いた気がする。


「流石小鳥遊…。もはやそれは超能力だろ…。」


「確かに。」


新聞部って大変だなぁ…。

と思いつつ、シリアルを頬張る。


「あー、えっと、今回のアンケートは僕ら、轟さんに入れたけど…。そういうのが無かった時、晴人は誰に投票するつもりだったの?」


牛乳をかけてないシリアルをかき込みながら、ふと斎藤が聞いてきた。


ちなみに俺たちが轟さんに投票したのは、当然アンケート上位に名前を載せるためである。


そういうの無かった場合ね…


ちょっとドキッとしながらも、俺は何食わぬ顔で即答した。


「無投票だな。俺には何の関係も無い話だし。」


嘘である。

多分…目の前のこやつの名前を書いていたやもしれぬ…。

そんなん本人の前で言えるわけもない。墓場まで持って行こう…。

ちなみに、斎藤はとびきりの美少女であるというのに圏外であった。

まあ、ちょっと変わってるからな…。あと、メガネあんまり似合ってないし…。


俺の返答につまらなそうな顔をする斎藤。

悪かったな。面白くない回答で。


「なんだよー。でも僕らの周りって、綺麗な女の子結構いると思うけどな。ほら、生徒会長とかさ」


おま、それはあれだろ。


「なら斎藤は白縫会長に投票するのか?」


「…それは、まあ、確かに。」


言い出したのは斎藤のはずだが、微妙な苦笑いを見せた。


確かに顔は良いけどな…ほら、性格があれだから。顔はいいけどなぁ…。人使いも荒いし。


「ちなみに斎藤なら誰に投票するんだよ?」


「あー。それ聞く?…実は結構悩んでるんだけどさ…」


「悩むほどのことか、それ?」


それこそ知り合いである小鳥遊とかに入れそうだったので、悩むといわれて意外に思った。

斎藤から見てどういった子に投票するのか、すごく気になる。

…まあ、人の名前を言われても分からない可能性の方が高いが。


食べ終わったシリアルの盛られていた皿を脇にどけ、丁寧に両手を合わせた斎藤は、真剣な顔でこう尋ねてきた。



「晴人ならさ、推しか好きか。どっちに票をいれる?」


「は?」



推しか、好きか、だって?



質問に質問で返答され、困惑している俺をよそに斎藤は口を開く。


「そうそう。今回は一応、一人一票って話じゃん?晴人の中で推しと好きならどっちの方がウエイト高いのかなぁって。」


「推しと好き…かぁ…」


んんんんんん?

それは並べられる言葉なのか…?


腕を組んで少し考える。


推しはこう、なんか尊い…!って感じかなぁ…。

好きは…うーん。キュンっ!って感じかぁ??


ちょっと悩む俺の前で、ふと斎藤が目を逸らし時計を見た。

釣られて時計を見る。うわ、結構経ってる。


斎藤は器を持ちつつ立ち上がった。


「まあ、とりあえずそんな感じ。今日は早めに行って人間観察しないと。じゃあ準備してくるー。」


そういうと、ささっと器を流しへ置いて斎藤は、窓を開けベランダから隣の部屋へ戻っていった。


斎藤を軽く見届けた俺は、推しか好きか問題について考察を深めようと…。


「…。推しか…好きか…か…ん?」


ふと思う。


俺にとって推しと好きの概念が並列になるのって、次元の向こう側だけの話なのだが?


近くて遠い、触れられない輝き、のはず。


「斎藤にとってランキング投票は二次元の人気キャラ投票と同じ…?」


同じ学校の生徒に?まあ現実的に考えて、同じ学校の美少女=画面の向こう側、なのはわかるけど…。


そう考えれば、まあ納得はできるな…。


で、誰に投票するつもりだったのだろう。


答えをはぐらかされたことで、心に少しのシコリを残したまま、俺はべちゃべちゃになったシリアルをかき込んだ。


今日は始業式。一年の始まりである。

ーーーーーーーーーーーーーーー


「見ろよ。晴人。人が塵のようだぞ。」


「グミぐらいの大きさはあるだろ。ここ三階だからな?」


始業式より結構早めに来た俺たちは、校門がよく見える、ここ、生徒会補佐用の部屋から轟さんを探していた。


理由は言わずもがな。俺が知らないためである。名前と顔を一致させる。これ人間関係構築の基本だから。俺は超苦手だけど。


「…正直暇になってきたな…。晴人、僕眠くなってきた…。って、おい!ずるいぞ!!」


「まだ五分も待ってないだろ。」


「すでにラノベ開いてる晴人には言われたくない!ってか、一緒に探せよ!このままじゃ、僕だけ虚無の時間を過ごす羽目になるじゃん!」


「いやぁ。でもボク轟さんの顔知りませんし。おすし。」


「本から顔を一切上げずに正論かますのマジでムカつく!!…しゃーない。僕もソシャゲにログインだけしとこ…。」


「校内でソシャゲは規則違反だぞ。」


「勤務時間外だからセーフ!」


「学校に来ることを勤務って言うなよ…。」


雑談で誤魔化しつつ、なんだかんだ時間が経っていく。ちらほらと校門から入ってくる生徒の影が増え始めた。


「お!会長じゃん。晴人!会長来たぞー。」


ゲームをしつつも律儀に見ていた斎藤が声をだす。


のそりと本を閉じ、俺は窓へ身を乗り出した。


まだまだ朝は早い。まばらな人波の中、我が高校の生徒会長、白縫会長はすぐに見つかった。


肩まである紫がかった黒髪に何故か前髪が一房だけ銀色に染め抜かれた特徴的な外見と、持ち前の美貌で周囲から浮いている…いや、ちょっと距離をとられているのだ。上から見ると分かりやすい。ちなみに、美少女アンケートでも8位にランクインしている。多分身内の票が一切入らないから8位に止まっているのだろう。これは身から出た錆。


「…朝早く登校するとかそういう真面目な姿を見ると凄い違和感あるな。」


「僕らが白縫会長と話す時は大体パワハラしてる時だから…あれが普通なんじゃないかな。多分。」


俺たちが愚痴っていると…


あっ。


「…今こっち見たよな?」


「…僕ガッツリ目があったんだけど。ニヤッてされたんだけど!」


三階から見られていると気付くものなのだろうか。見られていた経験がないから分からん。それとも女の勘というやつなのだろうか。もはや超能力なんですがそれは。

まあ、ここにいるのがバレても特に何もないが。後で根掘り葉掘り聞かれるくらいだろう。それが一番面倒ではある。おつです。


ーーーーーーーーー


それから少し経ち…

続いてやってきたのは…


「お。来たよ。ランキング1位。」


「藤宮さんか。」


おお。彼女の周りだけやたら人が溢れかえっている…。な、なんだあの陽キャ力の数値は…!!圧倒的すぎる…。

…あそこまでくると全く羨ましくないな…。寧ろ毎朝、人に囲まれて病まないのだろうか。俺なら不登校になる自信がある。


そんな俺の考えをよそに、本人は満面の笑顔で友達であろう周りの女子と話している様子がうかがえた。見ているこっちまで少し嬉しくなる。やっぱ美少女はズルいな…。


「てか晴人知ってたんだ。」


「藤宮さんだろ?この学校の関係者なら全員知ってるだろ。ここまで有名だと流石に。」



藤宮・フォースター・沙也加



我が国が誇る四大財閥。その一角を占める藤宮家の御令嬢である。我が高校は一応進学校ではあるのだが、別に全国に知れ渡るほど有名ではない。何故こんな普通寄りの学校に、トップオブお嬢様である彼女がわざわざ通っているのか、甚だ疑問に思う。というか雲の上の存在すぎて普通なら腫れ物扱いされるだろうに、あれだけ人気があるのは本人の人徳だろうか。会長にも分けてあげてほしい。


ハーフらしくその容姿はマジもんの金髪碧眼。背中を隠す長さの金髪が朝日にキラキラと反射している。後光かよ。遠目でも分かるくらい整った顔立ちを持つ上、コロコロと表情が変わっているのもちょっとコミカルで可愛い。綺麗で美人でしかも可愛いとか。寧ろ恐怖すら感じるレベル。どこまで本心でどこまでが嘘なのか。完璧すぎて関わりたくない人種である。話したこともないけど。


「てか、インタビューってあの人に話しかけないといけないのか…。正直あまり関わりたくないんだが。」


「珍しく正直だね、晴人。いつもバッチ持ちがうんぬんって言ってるのに。」


「ああいうタイプ、マジで苦手なんだよなぁ。」


どうしても他人と比べがちなことを自覚している俺としては、ああいう、生まれながらに完璧な人間と関わると劣等感で死にたくなる気がするのだ。何を話していても見下されている気がするし…やっぱ関わらないのがwin-winだな。…あ。



今、藤宮さんがこちらを見て、いたずらっぽい笑顔でウインクした気がした。



「今、藤宮さん、こっち見てウインクしなかったか?」


「んえ?マジで?晴人の妄想で無く?」


「…冷静に考えると、そんなファンサする意味も理由も無いよな…。屋上に知り合いでもいたのか?」


「寝不足だからね。妄想と現実が有耶無耶になっても仕方ないよ。」


「それは仕方なくないだろ。そこ有耶無耶になったら毎日がパラダイスじゃねーか。」


「まさかの肯定意見。」


うーん。完全に狙った感じでウインクをしていた気がしたんだが…。疲れてるのだろうか。確かに疲れてるけどな。春休み最終日だってのに、昨日も学校にいたし。夜は夜で深夜アニメに全裸待機だったし。


すこしあくびをして、空を見上げ…人間観察を再開した俺の目に、その姿が飛び込んできた。


陽キャ集団が通った後。人がまばらな校庭に、凛と1人、颯爽と歩く少女の姿が。


その長い黒髪を風に任せ、赤みがかった瞳をまっすぐ前に向け。ただ淡々と歩く姿に何故か目が離せない。


俺はこの時感じた己の心の機微が理解できなかった。もしかしたら一生理解するべきではないのかもしれない。それは感動とも憧れともどこか違う。よく分からない高揚感。


茫然としている俺に気づかないまま、斎藤は口を開く。そう、恐らくあの少女が。


「そうそうあの子、あの1人で歩いてる綺麗な子。彼女が轟姫花。僕らのターゲットだ。」


ーーーーーーーーー


「轟さんの印象?うーん。凄く綺麗な子、かなぁ。ごめんね。私あんまり関わりがなくて…」


「轟さん?えーっと、いっつも1人でいてー、ずっと本読んでるよねー。あの子が人と話してるとこ全然見たことないかも。あ、先生と話してるとこは見たことあるよ!」


「正直、近寄りづらいんだよね…。声かけても全然話してくれないっていうか…。ここだけの話だけど、最初話しかけた時、「用がないなら、本の続きを読みたいのだけれど、いいかしら?」とか言われたんだよ?確かに周りの友達とちょっと盛り上がってたけど…信じらんないよね。」


「轟さんに告白した奴?いや、いねーんじゃねえかな。付き合うとかそんなん無謀だと思うぞ。そもそも仲良いやつも見たことないし。ってか教室のグループラインにも入ってないっぽいし…。それより今のアンケート結果教えてくれよ。やっぱ一位藤宮?」


以上。轟さんに関する聞き込み調査の結果、そのまとめである。


みんなが口を揃えて言ったのは「凄く愛想が悪い、綺麗な人」ということだった。


ーーーーーーーーー


始業式も終わり、昼休み、放課後の部活など、色々と聞いて回った俺たちは、沈みそうな夕日を見ながら生徒会補佐室に集まっていた。


教室にあった適当な椅子に座る斎藤を見つつ、俺は机に浅く腰掛け、重く呟いた。


「…全滅だな。」


「これ詰んでね?」


全滅である。

轟さんと同じ教室の生徒、そのほとんどを含めかなりの数聞いて回ったのに、趣味どころか友達の情報すら得られなかった。


深刻な顔で斎藤が口を開く。


「…これって轟家が強すぎてビビるくらい秘密主義なのか、単に、轟さんは友達が少なくてボッチなのか…どっちだと思う?」


「圧倒的後者。」


「だよね。知ってた。」


俺は断言した。

これはボッチ。ただの孤高である。

しかも家柄が恐れ多い…とかではなく完全に轟さんの人柄である。コレは酷い。凄く親近感を感じる。最初見た時湧き上がってきた感情は同族へのシンパシーだったのだろうか。納得。


「コレもうどうあがいても己龍無理じゃね?フラれる未来しか見えないんだけど。賭けをするならフラれるに全部賭けるよ僕は。」


「人の色恋で賭けるなよ。ちょっと可哀想だろ。ってか、ここまで孤高だと己龍君が轟さんの何をどう好きになったのか分からないが…。」


依頼しに来た時に、己龍君が言っていた言葉を思い出す。


轟さんはさ、ほら、綺麗だし、賢いし、なんかいいじゃん。前からちょっと可愛いなって思っててさ…(己龍君ボイス)


あ、これ顔だわ。そういえば全然、これっぽっちも内面について触れてなかったわ。


「己龍のことだし、どうせ顔だろ。」


「…。」


図星っ!!!

本人の名誉のため俺は黙秘を貫いた。


「んな難しい顔するなよ…。口に出さなくても肯定してるのがバレバレだぞ…。あ、いい案思いついた。」


「ん?何がだよ。」


突然、目をキラキラさせる斎藤。何かくだらないアイデアが浮かんだらしい。自信満々に口を開いた。


「催眠術だ!己龍が催眠術を習得すれば万事解決だよ!」


「こいつもうダメだ。」


「スマホを出してこれ見よがしに119しようとするんじゃない!せめて精神科医か脳外科医の紹介にしてよ!」


「的確な自己診断。」


冗談で耳に当てていたスマホをポケットにしまう。さて、行き詰ってまいりました…。


「…それでどうしようか。己龍の依頼。」


雑談のテンションをほっぽり、真剣に考え出す斎藤。


「…どうしようかって言ってもなぁ。」


「そもそも己龍の依頼って轟さんの好きな人が誰かっていうのと、付き合う気があるか否かだろ?…もう轟さん本人にきく?正直コレしかないような気がする。」


「ここに来てか…。」


今度こそ『噓告白』が現実味を帯びてきていた。


「…嘘告白か…言葉にすると純粋に酷いよね…」


「…それは俺も分かってる。相手を巻き込む罪悪感もあるし…。」


それを分かっていて実行しようとする俺たちは、まあ自分勝手な人間だとしみじみ思う。

少し暗い空気のまま、斎藤が口を開いた。


「とにかく形だけでも己龍の納得を貰おう。あと何日かはランキングの調査にかこつけて、いちおう情報収集。そして轟さんに告白。上手くいってもいかなくても己龍に伝えて、この件を終わりにしよう。」


「…そうだな。」


これまでになく厄介な依頼がひと段落着きそうな事にほっとした空気が流れる。


そんな雰囲気の中、俺はある大切なことに気づき…、焦燥感に駆られながらも努めて冷静に、落ち着いて口を開く。


「じゃあ一番大切なことをここで決めようじゃないか。」


「一番大切なこと?」


夕日が沈み、残光が薄暗く照らす教室の中で、俺と斎藤の視線が交差する。何でもないような口調で放った言葉の弾丸、俺は知らずに手を握り込む。



「どっちが告白するか、に決まってるだろ。」



「え、晴人じゃないの?僕、女の子だよ?」


一瞬慌てたように、斎藤は席から立ち上がって…さも当然のように言い放った。

…甘い…甘いな、斎藤!!


「それこそ男女差別なんじゃないのか?今は男女平等の時代…別に女の子どうしが恋愛しても全然、全く、これっぽっちも不思議じゃない!しかも、今なら斎藤の方が有利かもしれない!顔がいいから!」


俺は自信満々に言い放つ。顔の良さは天下無双の武器だ。特にこの場合は利点しかない。

かわいいは性差なんぞ関係無く効くのだ。これなら勝てる。


俺の言葉に、慌てて斎藤が反論する。


「た、確かに女の子どうしの恋愛はスタンダードといっても過言じゃないけど…。でも、今の情報的に、轟さんは顔で人を判断するタイプじゃないでしょ。それに僕、嘘でも轟さんに告白できる気がしないよ。あと例の回想の流れだと、『私、男の人が好きなの。』って言われて終わりそうだし…。」


「いや、もうあの回想意味ないだろ。轟さん絶対あんな感じじゃないし。少なくとも見知らぬ他人に近づくって話なら、俺たちは対等な関係のはずだろ!」


「ぐぅ。」


クリティカルヒット!!

斎藤はぐぅの音も出てるが、図星を突かれて顔が盛大に引き攣っている。酸っぱいものを食べたリスのようだ。これはとどめの一撃放ってしまったのでは?


「…お互いに言い分は分かった。」


形勢不利とみたか、真剣な表情で斎藤は呟き、切り札を叩きつける。


「…なら、じゃんけんで決めよう。勝ったほうが告白する形式で。」


これ以上は無意味。

目で語る斎藤に俺も腹を括った。


「…分かった。一発勝負な。」


互いに無言で立ち上がり、斎藤は拳を鳴らしながら、俺は肩を回しながら、相対距離歩幅二歩分。正面に向き合う。



深呼吸しながら謎儀式。

俺は腕をクロスさせながら、己の両手で恋人繋ぎを作り、手首と手首の間の隙間から負け筋を見通す。

斎藤は左手の中指で眉間を強く指圧し、瞬きを一切せずに何もない中空を凝視していた。怖いよ。



準備は整った。

互いに無言のまま、示し合わせたかのように構える。



目を合わせる。



一拍。無限にも思える静寂。



叫べ!!


「「じゃーんけん、ポン!!」」



この日。

世界にまた一組、勝者と敗者が生まれた。


ーーーーーーーーー


次の日から俺たちは、本格的にコンテストのための情報収集を始めた。


事前アンケートで分かった上位10人について、時にSNSを利用し、時に周囲の人に聞き込み、時にソシャゲのイベントを走り、時にインタビュー…はしなかった。流石に新聞部でもない俺たちが、あるかどうかも分からないコンテストのために本人達を巻き込むのは気が引けたからだ。ちなみに、ソシャゲは何とかイベ限のアイテムを得ることができた。労力の八割を注いだ甲斐があったぜ…。


「皆の情報、結構集まってきたのでは?」


「そうだな。これなら仮にコンテストが開催されるってなっても、スムーズに動き出せる最低限の情報は集まってるだろ。…一部の人以外は。」


「やっぱなんの情報も集まんないかぁー。轟さーん。」


「まあ、俺ら頑張っただろ。」


棒読みの慰めも宙に溶けて消える。

ぼうっとしていた斎藤は真剣な目をして口を開いた。


「…そろそろ、勝負、かけようか?」


「…潮時ってやつか…。」


新聞部の依頼に関しては、彼らに怒られない位の情報が集まった…はずだ。これなら大丈夫だろ多分。


集まらない一番欲しい情報だったはずのものも、頑張った過程があるなら、大丈夫だ、問題ない。とタカを括っていた。


問題を解くことを半ば諦め、試験終了を待つばかりだった俺たちに、更なる問題が叩きつけられるとこの時は夢にも思わなかった。


白縫会長

現在高校三年生。二年連続生徒会長の座を務めるエリート。己に厳しく他人に厳しい、仕事ができるすごい近づきがたい人。…なのだが、実は非常に背がひく…おっと、誰か来たようだ。


藤宮・フォースター・沙也加

超高校級のお嬢様。斎藤曰く、原作には出てこない。攻略キャラの一人である透乃玲奈が持っていた構内一の美少女という属性を見事に搔っ攫っていった魔性の女。


透乃玲奈

学内一の美少女という属性を奪われた女。原作ではプライドの高いポンコツお嬢様キャラだったのだが、顔、金、権力の全てで藤宮に上をいかれ、現在はただのポンコツになってしまったとかなんとか。一位じゃ…一位じゃなきゃダメなんですのっ?


轟姫花

メインヒロイン。いったいいつになったら出てくるんですか?作者はもっとこう、ボーイミーツガールのキャッキャウフフが書きたいんですけど。まだ?そんなぁー。


斎藤優

実は17位だったらしい。

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