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62の舟券  作者: 広瀬修一
8/22

決意


その日も広瀬は朝おきるといつもと同じようにいきつけの喫茶店で

300円のモーニングコーヒーセットを注文した。


眠い目をこすりながらコーヒーを飲み、スポーツ新聞を読むのが

1日のうちで一番落ち着く時間であり、前日の夜にたてた予想を

朝ここで人気などをチェックするのである。


そんな時、読んでいたスポーツ新聞の芸能欄に目が止まった。

そこには失そうした人気女優の有紗純子が遍路姿で写っていた。


人気俳優の栖藤大和との恋にやぶれ、仕事にもいきづまり

なにもかもいやになってしまい事務所には内緒で、四国八十八箇所巡礼の

旅にでていたとその記事はつたえていた。


そのとき広瀬の脳裏に畑井老人の


「死ぬまでに一度は四国八十八箇所を巡りたい」


と言ったことばが鮮烈によみがえった。


「四国へ行けば畑井老人に会えるかもしれない」


「それに八十八箇所巡りをすれば今の自分を変えることが出きるかもしれない」


という思いがかさなって


「よし四国に行こう」


と広瀬を決意させた。


さっそく広瀬は西京極のアパートに戻ると、 大きな荷物はリサイクルの店に

売り払い、小さな荷物はあずかってもらおうと伏見の榊原のアパートをたずねた。


四国行きを告げると榊原はあきれて


「お前、正気かほかになんか大きな目的でも持ったほうがええんやないか」


「いやもうわいにはこれしかない思うんや」


榊原はアパートの近くにある行きつけの焼肉屋に広瀬をさそった。


6.7人がけのカウンターと座敷が2席だけのこじんまりした店だが

店主が朝鮮系の人で、焼肉のタレがとてもおいしくサービスで出してくれる

キムチがこれまた絶品だった。


「まぁなんにしろ焼肉食ってスタミナつけんとなぁ」


ビールをつぎながら榊原がいった。


「しかしお前が四国巡礼ゆうんわようわからんわ、いったいどこから

出てきたんや」


榊原とはあの日以来、一度も琵琶湖競艇場には行っていないので、

広瀬が畑井老人と会っていたことを榊原は知らなかった。


そのいきさつをすべて話すと


「そうかいな俺には100%無駄なことみたいにおもうんやけどお前が

きめたんならしゃあない、いってきいな」


「そやけどお前、四国は歩いて回るんやろ、すぐそこまでタバコ買いに

行くんも車で行くお前がだいじょうぶかいな」


自分はまだ23歳だと広瀬は若さを過信していた


「だいじょうぶやゆっくり2ヵ月ぐらいかけて回ってくるわ」


「それじゃ元気でいってこいや、かんぱいや」


二人はビールジョッキをあわせた。


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