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62の舟券  作者: 広瀬修一
6/22

畑井老人


畑井と名のったその初老の男にさそわれるままに二人は

競艇場内にある食堂へ向かった。


畑井老人は焼酎とモツをたのむと二人にも好きなものを

注文するように進めた。


広瀬は自分が2レースの舟券を的中させたいきさつを話してから


「畑井さんは7レースの6-2はどんなふうに予想して買ったんですか」


と聞いてみた、すると畑井老人は広瀬の話に興味をもったようすで


「少し話がなごうなるが聞いてみる気ぃあるか」


「ええぜひ」


広瀬は即答した。


「あんたらも知っとるかなぁ念力で護摩木に火ぃつけるんで有名な菊山ゆう男」


「わいは若いころ京都の仁信寺ゆう真言宗の寺で菊山といっしょに修行を

しとった、そんな修行の一つにお砂踏みゆうて四国八十八ヵ所の砂をもってきて

その上に八十八体の仏像を並べた場所を、毎日般若心経を唱えて回ったンや」


「ほかにもいろいろ修行をやっとったんやけど、古代インドの

バラモン教の修行に阿法あほうとゆうのがあってなぁ、ふつう座禅を

くんどると雑念が次から次にでてくるわなぁ、雑念いうんは言葉で出てくるから

その言葉を頭ん中で消すンや、次から次に消してくと頭がからっぽになる、

そんで最高の境地を得るゆう修行やった、そんなある日、わいは

庭のえんがわにすわっとったら見なれとった景色がきらめいたと

思った瞬間ふだん聞こえんかったいろんな音を聞き分けられるようになったんや」


「そやからさっきの7Rも6号艇の関口のエンジンが1走目とは

変わっとったんや、わいにはそれがわかったから6号艇から流して買うた、

そんなことは、ほとんどだれも気ぃつかんから本命の2号艇が2着にきても

100倍ついたんや他のがきたらぜんぶ200倍以上やったはずや」。


「すごい能力ですねそんなのがあったら大金持ちになれますね」


広瀬が口をはさんだ。


それを聞いて畑井老人はさとすようなかたり口調になった。


「人間ゆうんは欲があってあたりまえやけど身のほど以上の欲をもつと

一番だいじなもんをなくすんや」


「それはどういう意味ですか」


「ギャンブルにのめりこむやつは自分だけが大金をつかもうとするもんや

から、家庭や自分のからだや社会までも破滅させるんや。」


「人間はおぎゃぁと生まれたときから一人やったら生きてゆけん

とゆうことを知らんといかんゆうことや」


畑井老人のいうことはよく理解できなかったが身体の小さな畑井老人が

広瀬にはおおきく見えた。


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